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俺なりな言葉

 叩かれた鼻が痛いと押さえながら、俺はマルファに情けなくも言い募っていた。


「――どうして?君は俺を愛していると言ってくれたじゃないか。」


「――結婚する気なんか無いくせに!」


 俺は再び腕の中にマルファを閉じ込めた。


「あるよ!バリバリにあります!君の糞ジジイと糞ババア、そして、君のパパと保母さんな怖いママにリンチされる事になっても君を諦めたくありません。」


 俺の腕の中でマルファがぴくっと抵抗することを止めた。

 うわあ、彼女は完全に泣いているじゃないか。

 子供のようにうわあんと泣き出しそうな顔だ。


「どうしたの!お願いだ、その悲しい気持ちを俺に教えてくれ!俺はね、鈍感な筋肉馬鹿なんだよ。可愛い君が辛かったり悲しかったりしたら、お願いだ、言葉で教えて欲しい。」


「ど、どうして、そんな優しい嘘を言うの!あなたは私に自分の真実を一つも教えてくれないじゃ無いの!あ、あなたが犯罪者だって、おも、思っている私に、違うって教えてくれないじゃ無いの!」


 マルファの中で俺がキマイラから卒業していた事に心の中で喝采の声をあげ、今こそ落とし時だと彼女をさらに自分に引き寄せた。

 柔らかなマルファの頬だって撫でてしまうが、指先を必要以上に繊細に動かして彼女に性的刺激を与えることだってして見せた。

 マルファは俺の腕の中で頬を赤らめ、この刺激はぞくっとしたという答えのように甘い吐息をほわっと吐いた。


 よっし!


「俺は仕事上君に正体を言えなかった。そしてね、君が可愛らしすぎて、そうだ、言ったでしょう。君こそ俺を騙しに来たスパイだと思ったって。」


「でも、違うって。」


「うん、わかったよ。でもね、俺が政府の組織に属しているのは嘘偽りない真実なんだけどね、君にその組織の全貌を語ることは許されていないんだ。そして馬鹿な俺はね、上手に説明できないから、君が誤解しているままにしてしまった。ごめんね。」


 俺は彼女に口づけた。

 彼女が俺の口づけを許したのであれば、俺の気持ちは彼女に通じた筈だ。


「か、カイル。キマイラの逃亡犯を捕まえるためにあなたが囮になっているってことはわかったわ。でも、これが終わったら、あなたと私はお終いじゃなくて?映画のヒーローは次の仕事があるって言って、ヒロインから去っていくものじゃ無いの。」


 俺はマルファが大人の恋愛をしたく無いと言った本当の理由を知り、俺の胸は彼女の腰よりも細くなって肋骨が全部粉々になってしまうだろうぐらいに、きゅん、とした。


 俺はもう強く願った。


 死地から生きて帰らせてくださいと願った時よりも強く、マルファとハッピーエンドにして下さいと、あのベルヴァイラ様とリック様と崇めてあの糞野郎たちに祈りをささげてしまったほどだ。


「カイル?」


「俺は君に出会った時から君しかいない。君を手放したくないから既成事実を作ろうと、俺は君に犯罪者並みの行動しかしていないじゃないか。お願いだから、俺が君のストーカーに成り下がる前に、俺を君の恋人や婚約者、いや、そんなものすっ飛ばして、今すぐ配偶者にして欲しい。」


 マルファは俺のろくでもないプロポーズに何も言葉を返してくれなかった。

 俺が落ち込んだその時、彼女は俺の顔を両手で包むと自分の唇を俺の唇に近づけた。


 彼女からのキス!


 これはイエスだと俺の頭の中で教会の鐘が鳴り響いたが、ここは魔の家、糞ジジイと糞ババアの監視の目があるろくでもない場所だった。

 俺は後頭部に衝撃を受けて、そしてそのまま気を失った。


 パパ!


 そんなマルファの声がしたが、それは幻聴に違いない、はず。

 奴は連続強盗殺人グループの逃亡を阻止するために、対戦車ライフルを一般乗用車に向けて撃ち込んだ男なのである。

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