兵法は早い判断と早い行動こそ推奨される
敵の襲撃の後始末を終えてみたが、警察組織にキマイラの残党が残っているという答えであるのならば、今日の襲撃の現場検証などさせられる訳もない。
また、この襲撃を事件として報告すれば、マルファが被害者として法廷に出ざるを得ず、そのことによってマルファに彼女のろくでもない家族の秘密が知られるという弊害が大きい。
よって、壊れた壁や玄関を俺とヨハネスが塹壕を掘らされた新兵時代の訓練を思い出しながら応急処置を施し、俺とマルファは監視カメラ付きの悪魔の館での観察飼育続行という身の上に戻った。
こんな風に大きな襲撃の合った現場など、キマイラという逃亡犯だったならばさっさと見切りをつけて逃げ出してしまうことであろう。
それでも俺が逃げないのであれば、マルファは俺がキマイラでは無いと考えてくれるのではないか?
女の子の扱いなど知らない俺は袋小路でウロウロしている発情期の野良犬同然で、自分で自分への誤解を打開するよりもそんな甘い考えを抱いてしまっていたのである。
そんな俺がリビングに戻ったのだが、そこでは俺の今までの悩みなど小さいと思える光景が展開していた。
ソファにマルファが座っていたが、あの明るくて可愛い彼女が、ぼんやりとして幽霊のように暗く寂しそうな佇まいであったのである!
「どうしたの、マルファ。」
俺の声はかなり慌てて上ずっていただろう。
「何でもない。」
マルファの返答は捨て鉢にも聞こえる低い声のもので、俺の不安をさらに掻き立てた。
「何でもないって事は無いだろう!さあ、こっちを向いて。そしてその可愛い事この上ない俺好みのワンピース姿の君を堪能させてくれ!」
俺は無理矢理にマルファの隣に座り彼女の手を握ったが、彼女は俺を払いのけて逃げ出そうとした。
逃がすわけは無い。
グリフォンに入っていなければ犯罪者の道一直線の俺としては、やっぱり行動が犯罪者めいていたが、この俺好みの愛すべき女性を手放してはなるものかと俺は必死なのである。
「離して!」
「嫌だ!」
「わ、私はまだ十八なの!」
「知っている。」
「じゃ、じゃあ、大人の恋愛はしたくないって言えばわかるかしら。」
俺の頭の中は勝手に数を数えだした。
大人の恋愛という肉体関係を許されるのは何年後なのだろうと。
下半身の反乱がそこで起こり、俺の脳は簡単な解決策を俺の感情と下半身に提示した。
結婚すりゃいいじゃないか。
よし、問題なし!
「マルファ!俺は君を愛しているんだ。君が大人だって俺が考えていた前提で聞いて欲しい。俺は君と結婚したい。俺をいつまでも待つと言ってくれた君と結婚したい。俺と結婚してくれるか?」
マルファはじわっと両目に涙をためるなんて可愛い顔をして見せたが、俺の拘束から引き出した右手で俺の顔の正面をバシンと叩いた。




