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自首でもしようか

 俺はウザい上司であるJJの哄笑でインカムのある左耳は鼓膜が破れかけていて、そして、まともな説明も出来なかった身の上にした彼等を恨みながらも、マルファの健気さに胸がぎゅうんと音を立てて締め付けられていた。


――私は白髪になってもあなたを待っているわ。


 刑務所から出てきた俺はこの先が分からないと下げていた頭をあげる、すると、そんな絶望している俺の目に映るのは俺を待っていたマルファの姿。


 そんな映画の一場面のような情景を脳みそが描いてしまい、俺は本気で自首して刑務所に入ってしまいたいとまで思った程だ。


「ああもう、畜生!糞ババアと糞ジジイのせいで、俺の恋路がぐちゃぐちゃじゃねえか!」


 しかし、その恋路が成就したとして、その糞ジジイと糞ババアが俺の義理の糞祖父母となってしまうことを考えれば、俺は彼等の気分を害する行動をしてはいけないのである。


「もう!どうやってあいつらは無害な一般人を孫の前で装っていたんだよ。マルファのパパだって警察組織の機動隊の怖い人じゃないの。保母って仇名のママは巨悪犯罪者を言葉一つで廃人にできると評判の誘導尋問官だしさあ。どうしてそんな奴らの子供があんなにふわふわ純粋仔犬ちゃんなのよ。」


「にゅあああ。」


「いた!」


 俺の胸に爪が立てられた。


「ああ可愛いよ。ププル。君は可愛い。でもね、俺はマルファが一番なの。君には細くて締まった脂肪のない腰は無いでしょう。こんなにほわほわでふわふわのお腹じゃ無いの。」


 ププルのふわふわのお腹が顔に来るようにして持ち上げ直すと、彼女は俺の肩に後ろ脚を立てて前足で俺の頭を抱えるようにして納まってくれたが、それだけでなく彼女は肉球のある手で俺の後頭部どころか長い胴体が届く肩先までもポンポンと叩いてもくれるのである。


「やばい。首が折れそうなほどに君は重いしデカすぎだが、そのデカい優しさには俺は粉々だよ。俺の愛するミーちゃんに匹敵するぐらいの優しい子だ。」


「いい加減にしろ、カイル。」


「いい加減にしたらマルファの俺への誤解を解いてくれますか?隊長。」


「そんなの自分でやんなさいよ。大体最初の出会いが間違っているからそんな何でしょうが。」


 俺は猫をぎゅうと抱きしめ直し、子供のようにぴーと泣いて見せた。

 カメラで絶対に見ている筈だ。


「いい加減にしなさい!この映像が証拠として法廷に提出される事を知っていての嫌がらせだね。わかった、マルファには機会があったら訂正しておく。それでいいでしょう。」


 俺は猫を下ろし、カメラがある方向へと敬礼して見せた。


「あなたにどこまでもついていきますよ、JJ隊長。」


「あたしのダンスが最後まで踊れないくせに。」


 俺は猫を抱き直すと、猫の背中に顔をつけて本気でぴーと泣いた。

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