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キマイラ案件はどこいった!

 俺はシェルターのモニターを見つめながら、事態の急変に頭を抱えていた。


 マルファ、そのお洋服の君はなんて可愛いんだ!


 だけどマルファ、そんな服を着て俺以外の男の前に出てどうするんだ!


 という叫びは勿論あるが、その叫びを打ち消すような事実の発覚があったのだ。


 ヨハネスがお祖母ちゃんの推薦男、だと?

 ベルヴァイラ隊長!あんたはまた勘違いしています!


「ねえ、ベルヴァイラ、あのヨハネスがあなたのご推薦なの?外見はいいけど、ちょっと色々と頼りない子よ。まあ、こっちの子も色々と足りない子だけど。」


 コンソールに座るJJが別モニターに呼びかけており、俺もそのモニターに身を乗り出せば、豪華客船内を背景にして悠然と微笑む老齢の美女がそこで微笑んでいた。

 マルファと同じ色合いだった髪は色が抜けてプラチナブロンドのようになっており、そしてマルファと同じく可愛らしいが先に立つ顔にはマルファと違って皺があるが、その皺こそ品を感じる美しさを醸し出しているという女王様だ。

 彼女はJJの質問に嫣然と笑みを返すと、俺の死刑執行も考えているようなセリフを口にした。


「あらだって、あんなネンネなお子さまに恋も語らず襲う男なんて駄目でしょう。恋に破れたばかりの可愛い孫には、元婚約者の仕打ちなんて忘れるぐらいの恋人が必要でしょう。ヨハネスはちゃんとした手順を踏まえてのデートぐらいはできる子じゃないの。」


「――すいませんでした。ですが!俺も本気です!絶対にマルファを幸せにしますから!」


 モニターの中の死神は俺の声が聞こえたという風に俺をチラリとみてはくれたが、言葉を返すどころか完全に無視を決め込んだ。

 あ、畜生!


「ねぇ、JJ。昨夜のあなたの判断は素晴らしいわ。リックの計画を知ってあなたに頼んでいてよかった。まだ若いマルファにはこれから友達と遊んだりおしゃれしたりと青春を謳歌する時間が必要なのに、あれじゃあそれを体験する前にお腹が膨らんじゃうわ!全く、判らずやの男ばかりで本当にうんざりよ!」


「お褒め戴きありがとうございます!ヨハネスも馬鹿をしたら睡眠ガスで眠らせますからご心配なく!」


「俺が昨日寝落ちしたのはガスか!本気で俺をケダモノ扱いだな!あんたらは!」


「まあ。服を着ないでぷらぷらぷらぷらと我が家を歩き回るケダモノが何かを言っているわ。」


「お耳汚しをすいません。ほら、カイル、座れ。」


 JJは俺に下がって床に座れと指を使って示し、俺は悪魔のような女二人には勝てないと言われた通りに床に腰を下ろして胡坐をかいた。


 ちくしょう!


 俺は過去にベルヴァイラから受けた作戦指示について思い出していた。

 お嬢様育ちのベルヴァイラは、お嬢様だからこそ士官学校を出た後はエリートとしてリック・ハーヴェイの上司となり、しかし、頭の良さとお嬢様育ちの容赦のなさで戦功をあげて来た人である。


――リック、あなたの上に空爆をしていいかしら?


――リック、あなたの乗っているお船、燃料は満タンでしょう。それを敵船にぶつけちゃって。


 リックと一蓮托生組の実戦部隊の俺達は、ベルヴァイラのそんな無線が入る度に頭を抱えて叫び声をあげ、生還できることを神に祈ったとも思い出した。

 いや、あの頑張って生きて帰っていらっしゃい状況は、全て彼女にぞっこんなリックがゴーサインを出さなければ実現しなかったと考えれば、俺達地獄を見せられた隊員はリック副隊長こそ恨むべきだろう。


「これから三十分後にキマイラの部隊が我が家を強襲します。あなた方三名で大丈夫かしら?」


「敵の人数はわかりますか?」


「脱獄犯三名を含む十二って所ね。」


「了解しました。迎撃準備にこれから入ります。」


 俺は勝手に戦闘計画が立てられていく事に不貞腐れながら、自分は怪我をしているなと思い出しながら肩を回し、退役してしまって本当は上司ではない美女に皮肉な口調で言い返していた。


「負傷した男と連絡員の男と、一人で男十人の戦力があるお姉さんの三人だけで?あ、俺とヨハネスが一人でも倒せれば勘定が合いますかね?」


 モニターは何も答えなかったが、JJという俺の先輩が男よりも低くて冷たい声を出した。


「裸エプロンでマルファの前で尻踊りさせるぞ。」


 俺は座り直すや、コンソールのお二方にごめんなさいと土下座した。

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