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敵(バグ)はどこにでもいる

 ハーヴェイは映像関係には拘っていた。

 好きな時に映画にも行けない暮らしのせいなのか、好きな時に好きな映画が見たいとホームシアターに金をかけているのである。


 表向きは。


 大型モニターには敷地の内外に仕掛けられたカメラ映像を確認でき、その映像は常時録画もされている。

 異常があればすぐさまあのハーヴェイ夫妻のもとに届くという寸法だ。


 ありがたいことにその糞カメラは、風呂場とトイレには仕掛けられていなかった。


 だが、このリビングルームと中庭と玄関までの廊下にはばっちりだ。

 俺が彼等の最愛の孫娘にした事は、しっかりと記録されているのである。

 俺はマルファを寝室に送り込むと、手遅れかもしれないが映像を呼び出して消去できないか頭を悩ませた。


――消去にはIDとパスワードを入力してください。


 彼らは自分が老人だと考えていないのか?

 物忘れという危険な事象に対してのリスク管理はどうしているんだ!

 しかし、カメラの録画映像は消す方法は見つけられなかったが、録画内容を確認するということはできた。

 マルファがこの家に入ったのは俺がこの家に辿り着くほんの数時間前だった。

 彼女はコロコロ鞄をいつもの彼女の部屋らしいところに運んで姿を消した後、ほとんど下着にしか見えないスポーツウェア姿でリビングルームに戻ってきた。


「わぉ!」


 彼女の全裸姿を知っていても、知っているからか、俺の鼻の下はぐんと伸びた。

 彼女は映像媒体をモニターにセットすると、その姿が意味するように可愛らしく踊り出した。

 その俺好みの若い魅力的な身体を惜しげもなく晒し、可愛らしく躍動させているのだ。

 けれど、彼女の動きを見ているうちに、俺の伸びきった鼻の下は元に戻った。

 元に戻ったどころかかなり歪めてしまった表情のせいで、俺の鼻の下は普通よりも短くなっていただろう。


「なんてこと!新兵訓練のエクササイズじゃないか!腹筋が割れるわけだよ!」


 俺はビールを飲んでいた。

 それがいけなかった。

 俺は彼女が見ていた映像を呼び出し直し、それをモニターに映してしまったのだ。

 これから籠城していかねばならない身の上になった事で、俺には自分が理解できなかったほどの負荷というストレスを受けていたのであろう。

 自分も踊りたいという欲求が生まれてしまったのである。


 しかし、最近の神は俺には嫌がらせしかしない。


「ちくしょう!トレーナーはジュリアン・ジュリアン(JJ)かよ!」


 俺と同じぐらいの身長のくせに、ダンサーのような美しい肉体美を誇る美女であり、俺の先輩だから俺が物凄く扱かれたという恨みのある相手でもある。


――このヘタレ。あたしの持っているディルドを後ろから突っ込んでやろうか?お嬢ちゃん!


「ちくしょう!俺はお前には負けないからな!全裸にスケベエプロン姿でストレッチさせたお前を俺は絶対に許さない!」


 俺はJJのプログラムなんざ屁でも無いと次に会った時に揶揄ってやろうと思い立ち、JJの掛け声にイラっとしながらもJJと同じ動きをし始めた。

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