同居するにあたっての弊害
キマイラ、いいえ改めカイルは犯罪者であっても紳士だった。
祖父母の寝室を私に譲り、彼はリビングのソファに転がるからと言い張ったのである。
「え、私がいつも使う客間を私は使うし、使っていない客間はもう一つ残っているわよ。」
「柔らかいベッドは落ち着かないんだ。」
「そう?」
私は首を傾げながらも素直に部屋に追い立てられもしたが、もしかしたらと、私が彼を通報すると考えてのその場所?と勘ぐっていた自分がいた。
信用してくれないのねと、溜息をつきながらベッドに横になったが、そういえば彼は犯罪者なんだ。
でも、私が通報して彼を司法の手に渡し、刑務所という矯正施設に送った方が彼の為になるのではなくて?
犯罪者として生き続けるなんて、それこそ不幸じゃなくて?
そう考えていたのに、私の手が外への連絡機器に伸びなかったのは、結婚前は保母をしていたという母から聞いた話が思い出されたからである。
――子供は生まれた時はみな同じなのよ。環境によって歪んでしまうの。
私は思い出した母の言葉で、カイルが可哀想だと涙も一粒零れたが、目の前だってぱあっと開けた。
そうよ!
カイルが犯罪者になったのは、きっと環境が悪かったからよ!
あんなにも気立てが良い男性なのだもの。
愛情たっぷりの環境を与えたら、きっと彼は真人間に更生するかもしれないわ!
彼が刑務所に入っている間、私は彼の為に資格も取って、私一人でも彼との暮らしを支えられるぐらいの職につけばいいんだわ!
目標が出来た私は、がてんやる気が溢れ出した。
「あ、いけない!今日の寝る前の軽いノルマのセットをこなしていない!」
私はベッドから飛び降りると、軽くストレッチを始めた。
眠る前だから、汗をかかない程度の軽いセットを一回だけ。
腹筋三十回、背筋三十回、腕立ては胸の前に両手を揃える様な乙女なポーズでほんの少しだけ。
二の腕が締まるのは素敵だけど、二の腕が太く醜くなるのは望んでいないもの。
あ!リビングにこれからカイルが寝泊まりするならば、リビングでダンスプログラムが出来ないじゃないの!
嘘!明日から私はダンストレーニングが出来なくなるの?
お祖母ちゃんが専門のトレーナーに頼んで作ってくれたという、私専用のプログラムダンスだ。
これで私は三か月で念願のマーメイドドレスが入ったのよ!
恋が破れたとしても、次の恋の為にはこの体を維持していかなければ!
恐慌に陥った私は、祖父母の寝室を飛び出してリビングに向かっていた。
そこで私が目にしたものは、私のダンスプログラム映像を再生して踊っていたカイルだった。




