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早すぎる遭遇

頭が真っ白になるとはこんな感じなのだろう。

目の前に、まさにラスボスそのものが現れた。


その少年は記憶の彼より幼い。

私もそうなのだけれど、ついまじまじと見てしまう。

衝撃から回復しはじめた頭はだいぶ呑気だった。


こちらを同じ様に見つめる彼は、手を差し伸べてくる。


「ごめんね、大丈夫?」


「だ、大丈夫……です」


まだ小学生にも関わらず、可愛いというより美しい、綺麗という印象の強い少年は心配そうに優しく手を引き衝撃で固まる私を起こした。


「あの。僕……さとがみ、たまき。きみは?」


「も、桃瀬みどり!……です!」


名前が一致してしまった。

さとがみ、たまき。里上環。


彼と遅刻しそうで走っていたら曲がり角でぶつかってしまったのだ。ベタもベタすぎる。恋愛ゲームじゃないんだぞ!


中学から同じ学校のはずだから、小学生の間は公園に行かなければ大丈夫だと思って完全に油断してしまっていた。


ひと昔どころかふた昔以上昔のラブコメのような出会いをしてしまったホラーゲームの主人公とラスボスは恋愛に発展することはもちろん無く普通に殺意レベルが発展するのである。主にラスボスの。怖い。


触れるもの全て切り刻むようなヤバい奴ルートもあるラスボスにぶつかってしまったのだ。

これはただじゃ済まされない……。

心配してるように見せかけて裏で殺意を研いでるはずだ……。


「あの、本当に大丈夫?ボーっとしてるけど」


「ひえっ、大丈夫です!!」


話しかけられる度に頭が真っ白になる。

落ち着いて、落ち着いてこの場を切り抜けなければ。

今はまだかろうじて人間。のはず。たぶん……!


「あの、その。助けていただきありがとうございました!では!」


「いや、僕からぶつかったから全然……あっ!気をつけてね」


お礼を言い、風のように走る。

風そのものになれ、と走り、走り、学校についた。

遅刻の心配もなくなると同時に地面に座り込む。

小学生(ラスボス)こわい……!


教室。騒がしさは元気の証。

ホームルーム前の時間に一人、元気などない死んだような目で自分の席に座りラスボスの設定を思い出していた。


里上環。

ルートによってはただの人。殺人鬼。鬼。

性格も優しい。狂っている。ニンゲン、エサ。

というように大まかに分かれている。

その上で彼は選択肢によって主人公への態度も大きく変わる要注意な存在だ。ラスボスに力を入れすぎである。

出来れば設定もごちゃごちゃせずに統一してほしかった!

一番怖いのは通常ルートのラスボスとして出る鬼だ。

殺人鬼も当たり前に怖いけれどまだ辛うじて人間だ。

鬼。鬼だ。鬼なのだ。

どうしろと??

選択を間違えれば奴の手により死。

ゲームクリアではラスボスは主人公に何を思ったか、その地を離れる、というエンドなのだ。

つまり倒せない相手。

このゲームは操られた人間や人外的存在は選択肢により倒せるにも関わらず、ラスボスだけは倒せない仕様。

つまりラスボスは無敵。


そして彼の考えに影響を与えたであろう主人公は私。

私になってしまっている。


ああ……終わった。


だからゲーム開始は回避、いや出来なければ家族で引っ越そう。

この町に起こることはこの町の住人の問題なのである。

引っ越せば関係などない。

最低な主人公だけど命は惜しい。


思わぬラスボスとの遭遇に情緒も不安定になった。

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