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目が覚めたような


夕日が空を滲ませる頃。

自分以外は誰もいない公園に、きいきいと軋む音を響かせる。

友達はもう帰ってしまった。


ぼんやりと時間が経つのを待っていた私は、ぱちりと不意に目が覚めた様な感覚に包まれた。

何だろう、この違和感は。

色褪せたブランコの鎖を握りしめた。


『ああ。ブランコ、懐かしいなあ』


そんな思いが浮かび上がる。

昔から、たまにあるのだ。こんな感覚が。

初めて知るものやことに慣れたような感情や知識を持っていることが、偶然で収まらないくらいにあったのだ。そういうものだと思っていた。


どうしてか、と疑問に思うのは遅すぎるくらいだ。


不意に、きらりと光る何かが視界に入った。

その瞬間に疑問がより強く現れた。


ブランコで遊ぶことを懐かしむのはおかしい。

だって、この公園でいつも来た時に遊んでいる。


では何故か?それは自分の中の『誰か』が、今まさに目を開けて懐かしんでいたからだ。


きっと今までは微睡の中、うっすらと『誰か』が目を開けた時にこぼれ落ちた知識を私が手にしていたのだ。


その『誰か』はきっと、つまり、私の前世だ。

自分のことながらよくわからないけれど、前世の自分はつい先ほど目を覚ました。

それは私と前世の自分が重なる事を意味していた。

前世で持っていた知識、記憶。

それらはまだ小さな私の中で広がっていく。

もしかしたら覆い尽くされるかもしれない。

そう思ったけれど『ちまちま前世の影響を受けた私』から、『前世を知って知識を得た私』となり、むしろ安定した気さえする。


ごちゃごちゃになったものがまとまって、すっきりとした私は光る何かを確認しにブランコを降りた。


「これ……」


小さいサイズの手鏡だった。

公園、手鏡。このキーワードに前世の部分で反応した。

気になって思い出したのは、とあるホラーゲームだった。

前世と重なってからの幸先の悪すぎる記憶にげんなりとしながら、どんなものだったかを手繰り寄せる。


そこそこの人気のホラーゲーム。

選択肢を選んで進めていくタイプのものだ。

ルート、エンディングの数が多く、やりがいがあるという話題で前世の私がプレイしていた。

死亡フラグの多さにも定評があったな、と呑気に思い出していた所で一つ、引っかかった。


主人公は、私ではないかと。


その可能性に震えた瞬間、私を呼ぶ声がした。

母親が迎えにきた。



「はあい! ここだよー! 」


桃瀬……みどり。

私は前世で遊んだホラーゲームの、女主人公そのままに生まれていた。



自宅に帰り部屋へ走る。

勢いよく扉を開け、閉める。

そして深呼吸。


私は現在小学四年生。

物語開始の怖れに取り憑かれた女の子だ。


私が前世プレイしていたホラーゲームは男主人公と女主人公を選べ、選んだ後のストーリーは全く違う展開になっていくというそこから既に凄いゲームだ。

因みに男主人公を選ぶと恋愛要素をちょいちょい挟んだ青春をほのかに感じるーーだがしかしホラー、なストーリー。

反対に女主人公を選ぶと恋愛要素のかわりに死亡フラグをちょいちょい増量した甘さ控えめむしろ塩なストーリーだ。

女主人公が何をした。

プレイヤー達からは女主人公サイドは主人公ちゃんだけが癒しだと言うコメントすらある。

女主人公は主人公だけありとても可愛い見た目をしている。

私にとってはそれしか得がないということになる。


名前や見た目、私の周囲のことだけではここがホラーゲームの世界だと判断するのは早い、と思う。

けれど、公園に落ちていた手鏡。

あれはホラーゲームにおいてラスボスが使ったものだった。

この年齢、時期、公園、手鏡。

警戒をして損はないと判断した。

もしかしたらただの落とし物かもしれない手鏡は拾わなかった。

万が一を考えると危険だ。持ち主が無事見つけることを願う。

そしてラスボスに遭遇する可能性のあるあの公園には二度と行かないと誓った。


それよりも、他に気を付けることだ。

物語開始は中学生になってから。

私自身は特に何もない。ラスボスが今していることを阻止しに行くのは蛇を突くレベルに危険。

おとなしく、控えめにしていよう。

これはただのゲームではない。ホラーのつくゲームだ。


死亡フラグがバリバリに存在する内容もノートに書いて絶対に書き漏らしなく忘れないようにしておこう。

せめて覚えている分だけでも……!


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