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零式艦上戦闘機23型  作者: 通りすがりの野良猫
7/25

日本本土空襲始まる

さてとうとう、本土空襲が始まりましたが、、、、

フィリピン進攻が進んでいるあいだ、サイパン、テニアンなどのマリアナ諸島では

占領した飛行場を大拡張する工事などが進んでいた。

そう、この飛行場を拠点に日本本土を爆撃するためである。


そして少数ずつであるが、ここにボーイングB29が飛来して訓練にいそしむよう

になってきた。

このB29の詳細は改めて紹介するまでもなく、第二次世界大戦で最高の爆撃機と

言えるものである。

アメリカだけが量産できたターボチャージャーをつけた大馬力のエンジン。

量産され実用される爆撃機としては初の与圧されたキャビンをもち、

遠隔制御できる機関銃塔で守られた4発の長距離爆撃機である。


筆者の先輩で戦争中、この機体を見た川西航空機の技術者であった方が、「綺麗

な機体で惚れ惚れした」と感想を教えてくれたことがある。

敵国の技術者にすら、圧倒的な印象を与えたのがこのB29である。

自分も出張でアメリカに行ったとき、博物館のB29を見たが、今の目ではYS11

より一回り大きい機体という程度のものであった。

これがはるばるサイパンから本土空襲に来たのかとおもうと感慨深いものがある。


さてこのB29については海外情報や、中国奥地から北九州地区を襲った際に撃墜し

た機体を調査したことなどから、恐るべきその実態が日本軍にも伝わっていた。

撃墜機を調査したら、日本では考えられないような贅沢な材料や、複雑なシステム

を持っていることなども判明した。

攻撃するにも防御火力は高く、飛行性能も高い、さらに防弾装備なども充実している

のである。

以前から撃墜するのに苦労しているB17の比ではない、と判明した。


このB29対策は主として本土防空を担当する陸軍が中心に検討した内容は以下の

とおりであった。


①既存の戦闘機の強化

②成層圏を飛んでくるB29に対抗しうる新型戦闘機の開発、生産

③B29に対応できる高射砲の生産と開発

④早期警戒網の強化

⑤空襲の被害を局限するための工場などの疎開


①項目であるが艦隊防空に活躍した、零式艦上戦闘機23型は速度、上昇力を評価

され火力を強化することになった。

この武装強化型については、試製4式30mm機銃がモーターカノンとして採用された。

墜落した機体(そう撃墜以前にエンジン不調で不時着するところ果たせず墜落した)

の胴体などを実際に射撃試験してみたら、20mmですら角度や距離で十分な効果が

ない場合があることが判明したのだ。

また、彩雲、100式司偵などの武装化も進められたり、もっとも大胆な計画は4式

重爆飛竜に75mm高射砲を搭載したものであった。

このあたり、中口径機銃で高初速のものがあればより実効のあるものになったであろ

うが、結局停戦までわが国では40mmボフォースのコピーもできなかったのであり

無い物ねだりではあろう。

ただ、コピーがうまくいかない事例は、戦争中、アメリカがドイツのMG42をコピーに

失敗したり、ソ連がB29のコピーで多大な労力を使ったことからも示されているから

なんとも言えないが。

ちなみにMG42のコピーの場合、製図段階でのミスで寸法間違い(メートル単位の国

の図面をインチ単位の図面に書き換えたことから発生したそうな)が原因だと言われ

ている。

単に技術があればいいという問題でもないのが、コピーの難しいところだろう。

②新型機については、各メーカーが督促されていろいろ取り組んだが、結局、ものに

なった局地戦闘機は紫電を経て、水上戦闘機強風から進化した紫電改のみである、と

言い切れるであろう。

新型機ができて活躍するまで、いくつもの段階がありその過程を一つ一つ片づけて初

めて活躍が期待できるのである。

ところが戦時だからと無理な計画を立ててしまえば、極光や天雷といった失敗に繋が

るのが怖いところである。


ところで、紫電改が生まれた過程で紫電を経て紫電改に至った過程が時間を浪費した

という論調も戦後に見られたが、水上での運用を前提にして作った中翼の機体をいき

なり低翼の陸上機に改造した例はほとんど聞いたことがない。

それも戦時には無かろうと思う。

紫電を経たことでより問題点が絞られて、短期間に紫電改に結実できたと思われる。

例をあげれば強風で問題になった空戦性能の改善に発案された自動空戦フラップは

紫電でのトラブル解決なければ、紫電改で問題続出し使われなかった可能性もある。

やはり紫電あっての紫電改であると考える次第である。


③B29は実用上昇限度10000mを超える機体である。

実際は爆装してくるから8000~9000m程度としても、戦闘機で迎え撃つほ

うもぎりぎりの高度まで上がらないと追いつけない機体である。

では高射砲ではどうか?となるが、高射砲も最大射高では、継続しての戦闘ができる

ものではない。おおむね最大射高の7割くらいの実用最大射高での戦闘となる。

そうなると、B29の侵入する高度を撃つには1.5倍程度の最大射高を持つ火砲が必

要になる。

ところが、陸軍の高射砲については、そこまで届くものは従来装備されてなかった

のである。

88式野戦高射砲の実用射高は米軍の観測した例で約7000m程度と見積もられて

いてこれではまったく効果が期待できないのである。

また米軍はドイツの高射砲のコピーである99式には警戒し、さらにより大口径の

12センチ(3式12センチ高射砲)にも注目しているがこれらのB29に有効とされる

高射砲はごく少ない門数しか展開しておらないのであった。

後世でときおり日本軍の切り札のように扱われている5式5cm高射砲も実態と

しては12cm高射砲の砲架に15cm砲を搭載したものであり、過大な重量から

操作性など問題を残していたこと、これだけの砲を製造するのが非常に困難だった

ことが記録されているから、仮にもっと量産されていても、敵機はじきにその

装備地域を避けることで容易に回避できたのではないかと思われる。

大戦中、イギリス、アメリカの重爆を苦しめたドイツの高射砲部隊よりも劣る器材

でより高性能の敵と戦った我国の高射砲兵を称えるしかないかもしれない。

⓸早期警戒もドイツより劣る器材に、不利な地形(占領地を長く飛んでくるヨーロ

っパとほとんど洋上を飛んでくるわが国ではまったく条件が違う)からこれまた

我国は不利なのであった。


⑤工場の疎開は後世の目からしたら、泥縄式であり疎開して工場を分散したことか

ら部品の輸送などの問題が発生した記録がある。

このあたりも日ごろの準備が不十分だったように思える。


空襲される側はこのような対応をしていたが、爆弾を落とすほうも実は苦労があっ

たとされている。

次の項ではアメリカ側の苦労とその対策を見てみたい。




















さてB29の攻撃に対抗できるのでしょうか?

一昨日の3月10日は例の東京大空襲でしたが、、、

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