表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零式艦上戦闘機23型  作者: 通りすがりの野良猫
6/25

本土防衛の前哨戦開始!

フィリピン放棄した、後の取り残された外地の部隊について

フィリピンから日本軍が撤退したのを知った米軍は、拍子抜けした。

大規模な抗戦に備えての準備が必要とされていたからこそ、準備に時間を

かけてきたし、その過程で台風にも巻き込まれてしまったのだ。


ハワイにある太平洋艦隊司令部では、地団駄踏んでいた。

奴らが撤退するとわかっていたら、、、取り急ぎ少数の機動部隊でも急行

させて退路を塞ぐとか、潜水艦をフィリピン方面に集中するのではなく、

逆に本土近海に展開するとか手はいくらでもあったのだ。


また、現地に潜入していたゲリラやそこに派遣された連絡員も「日本軍の

移動」は把握していたが、「他の島への増援だろう」と捉えていたので

まさか撤退とは思っていなかったのである。


とは言え、残置されている部隊もあるだろうし、わからないことも

多かったので、たとえほぼ撤退しているとわかっていてもフィリピンの

各島への上陸は慎重に行わなければならなかった。


特に港湾については、巧みに機雷が敷設されているうえ、陸上でも地雷

などが滑走路などに埋設されており、すぐ使える状態ではなく、やむを

得ず、せっかく上陸してもまずは自らエアストリップを開設、穴あき

鉄板を敷設して滑走路を造るなど手間がかかってしまう。


同様なことはサイパン島でもあったが、ここでは従来の飛行場をさらに

拡張する工事も同時に必要となるうえ、ここの展開するべき機体の

飛来が遅れているのも原因だった。


そう、日本の陸軍にも、海外情報から脅威としてとらえられていた、B29

がいよいよ太平洋戦域に投入されるのである。


今まで大陸の奥深いところから、日本軍の占領地域を超えての本土空襲が

行われたが、北九州が精いっぱいのところであり、効果が低いと考えられ

ていた。

しかし今度からは違う。

補給面は一気に輸送船で送り込める。

中国の奥地のように、ハンプ(ヒマラヤ越えの補給ルート)を越えなくて

も良いから効率がいい。

ここからなら、東北南部くらいまで届くから、帝都東京はおろか、日本の

主要都市、主な航空機産業,艦艇の建造所などが攻撃圏内に入れられる。

その機体が、サイパン島の飛行場拡張に合わせて配備されていくので

あった。


さて、米陸軍が最新の爆撃機を日本本土空襲に本格投入の用意をする頃、

米海軍も新型機、新型空母をさらに投入しようとしていた。

今のところ、グラマンF6Fは太平洋では圧倒的な強さを発揮しているが、

マリアナ沖海戦で戦った、新型ジーク(零戦23型)は急降下では逃げ切れ

なかったりして、絶対的な優位というのが怪しくなってきたと評価される

ようになったのもある。


また、ここではあまり触れていない日本陸軍航空隊のフランク(4式戦)

などの存在もある。

現実は零戦23型はごく少数が運用されているだけで、液冷発動機のアツタ

の取り扱いに難渋している現実からも、この機体が主力を担うことなども

ないのであるが、米海軍には、これへの「回答」が必要と考えられたので

ある。

その「回答」が以下の項目である。


①以前から開発していたF4Uの早期の艦隊への配置

②エセックス級を超える大型空母、CVB の早期実戦配備

③同級から運用できる大型艦上戦闘機F8BやF7Fなど大型で長距離攻撃可能な

 艦上機でのアウトレンジ攻撃(これらは戦闘機でありながら大きな搭載

 力で艦爆や艦攻を不要とするといわれていたもの)の実施

④捕獲した零戦のテスト結果をもとに「軽量化した機体にパワーアップした

R2800を搭載」したF8Fの早期配備


資源の不足、基礎的な工業力の不足など、ないない尽くしで苦労している

日本海軍にしたら、まさに藪をつついて蛇どころか大蛇まで呼び込んだよ

うなものである。

それぞれの新鋭機は、大戦後期に出てきた強力な機体ばかりである。


また、CVB構想は生産力の限界にある日本海軍には逆立ちしても逆らえ

ないものである。

昭和20年初頭まだ日本には正規空母が蒼竜、飛竜、瑞鶴、翔鶴、大鳳、さら

に雲竜型5隻が就役、建造、そのうえ改大和型の信濃があった。

また隼鷹、飛鷹の改造空母まではなんとか現時点での新鋭機を使うことがで

きている。

この数だけ見たら、開戦前と遜色ないのであるが、相手が悪い。


正規空母の数でエセックス級に圧倒されてるし、日本側ではアメリカのCVL、

CVEつまり軽空母、護衛空母では第1線機を運用できないのであるのに、相手

は護衛空母でもF6Fなどカタパルトで飛ばしてくるのである。

そこへ、このCVB(のちのミッドウエー級)は前級のエセックスよりも強靭な

飛行甲板の装甲を備え、対空火器は強化したうえで搭載機もより大きな機体

も運用可能な大型空母であり合計5隻でてくる計画である。


現状のエセックス級ですら、結局日本海軍は撃沈できずに停戦を迎えるので

あったが、(戦後2隻は戦時中の損傷が大きく早期退役したが)それより

強いのが出てきてはどうにも。


搭載機も、まだ現段階では艦上戦闘機は零式艦上戦闘機52型が主力であり

それに次いで、23型、そして局戦の紫電、であり、期待の新鋭紫電改はよう

やく艦上機型が配備されつつある程度である。

彗星、天山は先の海戦で大損害を受けたこともあり、次期艦攻(艦爆兼用)

流星にバトンタッチする予定であり、偵察任務には待望の高速艦偵の彩雲が

搭載されようとしている。


しかし、期待される新型は性能はともかく、機体規模が大きくなり、在来の

空母で使うには先に挙げた隼鷹、飛鷹以上の母艦でないと使えないのである。

先にも述べたようにカタパルトのない、日本の小型空母は低速なことから、

大型化した重量もある搭載機の発艦に必要な合成風速を作り出せないので

正規空母の補助には使えない。


このように、それなりに強力なわが海軍の機動部隊すら遥かに凌駕する、米

海軍の機動部隊は、昭和20年 6月に満を持して強力な水陸両用部隊とともに

日本の南西諸島に襲来。

一方で、マリアナ諸島から本土の要地への空襲も始まった。



また南方で残置される形になった諸部隊もそれなりに生存をかけて継戦して

いる。

ビルマ方面では、当初計画されたインパール作戦という進攻作戦が、準備段階

でイギリス軍の小規模な機動作戦に翻弄され中止になるなど、こちらも積極的

な攻撃よりも、いかに戦域を安定して保持するかになっている。

なんせ、グライダーなど空挺作戦も活用して日本軍の支配地域をかく乱する、

ウィンゲート准将率いる機動部隊は、なんと日本軍司令部を奇襲、多大な

損害を与えたのだ。

軍司令官までもが小銃を持たざるを得ないような乱戦で、司令官以下、幕僚

多数が死傷しては、大規模な侵攻作戦など不可能となってしまったのだ

(ただし当時のビルマに展開していた各隊の補給能力など勘案したら、遠路

はるばる補給も困難なインパールへの作戦など非現実的と考える指揮官も

大勢いたので、内心は胸をなでおろした者もいたと聞く)


このような状況は本来、攻勢一本主義できていた日本軍には苦手とされていた

ことであったが、本土からの補給が絶たれ(大陸沿岸沿いにわずかな補給線は

維持されていたが、大型船舶での補給は米潜水艦や哨戒機により途絶している)

た以上、「負けない」ことに力を入れるしかなくなったのである。

そして緒戦で手に入った、イギリス軍の装備などを活用するなど現地での

創意工夫で凌いでいく戦いが小規模な形で続くようになった。


幸いこの方面ではイギリス軍も現時点で反撃作戦をおこなうよりも、日本軍が

補給途絶からさらに弱体化した段階での反撃を意図したことから、大きな動きも

ないまま、停戦まで主要な拠点を維持できることになったのは、ある意味奇跡

であった、と戦後の戦史研究で述べられている。


南太平洋ではまだ、地道な戦いが続いている。

というのは、米軍の「蛙飛び」作戦、は要するに必要な島嶼は何が何でも水陸両用

作戦で奪取するが、防備に固いところは迂回して前進することになっていた。

そのため、有名なラバウルなども未だに確保されているのである。

とはいえ、かってのように大規模な航空隊が展開して、米軍と激闘する段階は既に

なく、散発的な米軍の空襲に耐えて、戦力を温存し想定される、米軍の上陸に備え

るしかないのであった。


ただ、このラバウルはそれなりの航空機整備能力があったおかげで破損した機体を

回収しては修理して戦力を維持することが可能であったから、後世からみると興味

深い機体を見ることができる。

ここではもう陸だ海だとセクショナリズムにとらわれている状態ではない、という

認識が双方に生まれており、陸海の垣根を越えて、航空戦力の維持に取り組む、

ことになった。

これには器材などの面で協働するほか、陸軍に応召されていた航空機工場の工員が

臨時に海軍機の修理にあたったり、海軍のアツタの取り扱いに長けた整備兵が、

陸軍のハ40の整備をするなど、後世で言うところの統合運用が日常的に行われ

たりしていたのである。


そのような現地自活の成果の一つが「零式艦上戦闘機改」である。

2機の機体から複座機を作ってしまった。

これは今でも日本で見られる機体であり、当時の苦労をしのばせるものである。


実は他にもいろいろな機体が空襲にさらされるラバウルで修理改修さらに「魔

改造」されていたのである。


それはラバウルから哨戒に発進した2式大艇と遭遇した米軍のB-24が、九死に

一生を得てわかった話でもある。

たまたま哨戒中の2式大艇と遭遇したB-24であるが、「鈍足で大した武装もない

飛行艇」をカモにしようと、接近していくと、なんと2式大艇の火力に圧倒されて、

しまったのである。

このB24だって、後期の火力を強化されているJ型である。機首、機体上部、側面

胴体下面、そして尾部とそれぞれに動力式のM2機関銃などを装備しているのに、

正規の爆撃機が、たかが飛行艇に撃ち負けてしまった。

B24はのんびり飛んでいるように見える、2式大艇の下方から突き上げるように

攻撃をかけて、その後同航戦で撃墜しようとたくらんだ。

そりゃそうである。

相手が飛行艇なら艇体下面には銃座はないから、敵の射撃の死角から接近して、

いき、その後優勢な火力で一気に制圧できる、、、と踏んでいたのだ。

速度はどっこいだろうが、高空性能はB24のほうが優れているので有利だと。


2式大艇はエミリーというコードネームで知られていて、それなりの武装をしている

のもわかっていたが、、、これほどとは思えなかった。

さあ、攻撃開始、というときに飛行艇からの一撃で片側のエンジン2基ともやられて

しまったのである。

幸い、消火に成功したものの、撃ち合いなんてやってるゆとりはない。

とぼとぼと帰路につき、やっとこさ帰還して、損傷を調べて唖然とした。

なんと2式大艇は従来知られていた20mm機銃だけではなく、アメリカのM2機関銃

も装備していたのである。

右主翼、エンジンナセルの被弾個所から出てきたのは、わが機と同じ弾である。


そう、この哨戒に出ていた2式大艇は、米軍の哨戒機や飛行艇を撃破するため、特別

に武装強化していたのである。

というのも、哨戒にでた大艇に対して、米軍の爆撃機など今回のようにカモにしてや

ろうと攻撃してくる。

場合によっては軽爆のA20などからも攻撃されることもある。


単座の戦闘機相手は厳しいものがあるが、いくらなんでも爆撃機ごときにやられていて

は哨戒任務にも差し支えるので、、ある時破損した大艇を修理するにあたり、武装強化

した機体をでっちあげ、こちらから積極的に戦闘できるようにしたのである。

それもラバウルに攻撃してきたB17,B24など撃墜した機体の残骸から、使える部品を頂き

それを使っての現地改造である。


このため、胴体中部から後部側面にかけて臨時に乗降扉付近などを改造(どのみちこの

あたりは敵機に撃たれて破損し修理が必要だった)して捕獲した機体のM2機銃をマウン

トごと取り付けてまさにハリネズミとなっていたのである。

また敵が飛行艇の弱点であう艇体下方からアプローチしてくるであろうと予測して

わざと入り込みやすいよう隙を見せて飛行するなど待ち構えていたのだ。


また、ある時はB25(または海軍、海兵隊のPBJ)に遭遇した時のこと。

後方から、襲い掛かるB25、こいつは機首に(型にもよるが)8丁ものM2機銃を装備し

ていることから恐るべき火力を持っている。

これに対しては、こちらも強力な火器を装備して反撃、撃破したのである。

そう、本来は軍艦の対空火器である、96式25ミリ単装機銃を引っ張ってきて通常の

20mmの代わりにつけていたのだ。

どうしてもかさばるし、旋回範囲も狭い、扱いずらさはあるが99式20mm機銃よ

りはるかに長い銃身で口径もでかいからわずかな連射でB25も退けられたのである。


このような重武装で、B24,B25など相手に気を吐いた魔改造の2式大艇だが、

確認撃墜2機、撃破3機の戦果を機首に描いたところで、夜間爆撃に来たB17の至近弾

の弾片を受け、飛行不能となったのは残念な話であった。


また、あるときはこれまた破損した機体から「1式夜間戦闘機」をでっち上げたこと

もある。

これはラバウルで試用されて、のち本土防空で活躍する第302航空隊でも使われた

「斜銃」を付けた1式陸攻である。

1式陸攻が作られたころ、重武装を施されて編隊の援護に任ずる機体もテストされた。

これはアメリカならYB40とか、B17の重武装バージョンに対応するものだが、重武装し

たおかげで、爆弾投下したあと軽くなった僚機についていけない(重武装して弾もた

くさん積んでれば当然)という情けない話があったり、自分を守るので大変だったり

して、早々と断念されてしまう。


そして1式陸攻の場合は輸送機として改造、使用されていたのだがその機体が破損して

いたのを、もとの銃座の取り付け部などを生かして、再び武装し「夜間戦闘機」に

したのである。

同様の改造は2式陸偵として使われていた後の「月光」もされたがこちらは大きな

胴体を生かして、より強力に武装できた。

20ミリ2丁、13ミリ4丁を胴体上部につけたのである。

13ミリというのは例により撃墜したB17などからの捕獲品である。

そして速度を出すために、燃料を減らしさらに夜間侵入するB17より少し高い高度を

とって緩降下する。

そして腹の下に潜り込み、斜銃をぶっぱなす計算である。

この機体は速度はともかく、夜間の航法なども有利であるし、機体のサイズもゆとり

があることから改造された。

そして、改造もでき準備完了したところで、皮肉にも昼間の空襲で掩体壕ごと爆砕さ

れ幻に終わったのは残念な話であった。


そしてまた、孤立したラバウルのような大きな根拠地以外の島々には地道な潜水艦で

の食料輸送が行われるようになった。

小さな島々では食料不足は生存にかかわる重大問題であったからだ。

当初の補給は命がけであったが、皮肉にも戦線がマリアナ、さらにフィリピンと本土

方面に移っていったことで、米軍の哨戒も緩やかになり、なんとかできるようになっ

たのである。


以上は南方などで孤立した部隊の苦労話の一例である。

これらの部隊はそれぞれに孤立しながらも健闘したわけだが、戦争全体でみると

古来戒められる、「遊兵」である。

兵力の少ない側に遊兵がいるのでは、勝てる戦も勝てないと、戦後の戦史研究でも

言われていることであった。










現実はさらに厳しいものになった可能性が高いのですが

そこは、、、大目にみてやってください


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ