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零式艦上戦闘機23型  作者: 通りすがりの野良猫
15/25

北海にて

最近、太平洋方面ばかり書いていましたが、バルト海から北海にかけてのエピソード

もあります

さてさて、太平洋での戦いについては大戦後の第二次日露戦争まで述べてきたが

零式艦上戦闘機23型の従妹であるHe200とその母艦グラーフツエッペリン

についての話しも進めておかないといけない。

チャンネルダッシュ、ドイツ戦艦の英仏海峡突破作戦を支援したのちの

グラーフツエッペリンは北海で活動することになった。


遥か昔よりこの海は多くの船を飲み込み、多数の乗組員の命を通行税として取り立

てていた。

真冬の荒れるころには、海に投げ出されただけで命を落とすこともあるそうな。


ところで、筆者は2000年の7月、イギリスのファンボロー航空ショーにいったがその

時機上から眺めた北海はいかにも寒々として冷たく光る海面を見せていた

静かに光る海面が実は50年以上も前は戦場であったことをふと思い起し感慨深い

ものであった。


ファンボローの航空ショーは私には最高の思い出の一つだ。

最新鋭のF18Fが目の前にあり、B767-400などはぴかぴかで展示されている。

各社のブースには開発中の器材のパンフレットが並んでいる。


そして空では最新鋭の機体に混じって複葉機が飛んだりしている。

このあたり、なかなか国内のショーではお目にかかれないものだ。

P47が勢いよく上昇していったり、ランカスターが悠然と飛んだり。


その中でやたら遅く、飛んでいる、というより浮かんでいるようなのが

ソードフィッシュ雷撃機であった。

この機体が北海で戦っていた時代に話しを戻そう。



そのころの北海は狩人たちが集うおっかない場所だった


ドイツ海軍のUボートは、ソ連のムルマンスクに運ぶ援助物資を搭載したPQ船団の

エンパイア型貨物船に狙いをつけて、G7e魚雷を放つ。


一方の船団の護衛にあたるコルベットや駆逐艦はアスディックでUボートを探知し

たり、HF・DFでUボートの交信をとらえては方位を探り、レーダーで周囲を警戒

し水面上の潜望鏡などを見張る。


発見したらこっちのものとばかり、爆雷を投射し、後には前投兵器のヘッジホッグ

などで攻撃する。


また、空から魚を狙うカモメのように、上空からUボートを探す連合軍の哨戒機

もあれば、逆に船団を探しに来るドイツの洋上哨戒機もいる。


でも哨戒機も、護衛空母やCAMシップに積まれた戦闘機の獲物として追い回される

のであった。


この誰が狩人で誰が獲物かわからない(船団の貨物船でもMACシップやCAMシップ

のように航空機搭載もしていたから獲物にされているばかりではない)

戦場に、新たな、参加者が増えたのである。


「いたいた、、、あんな速度でよく飛んでるな、ハンス。」

「大尉、食ってよろしいですか?」

「よし、いけ」


船団捜索のコンドル哨戒機からの情報で、船団に護衛空母がいるのを確認した

グラーフツエッペリンは北海のうねりの中、戦闘機を発進させて、まず目障りな

哨戒機の排除にかかった。

このソードフィッシュ雷撃機は旧式な機体に見えて、ASVレーダーと爆雷などを

積んで侮れない力を持っている。

ドイツ海軍唯一の空母が(重巡ヒッパーなどに護衛されているが)いることを

気づかれたら連合軍も目の色を変えて攻撃してくるだろうからだ。

まして空母による初の船団攻撃であるから、慎重に行っても悪くはない。


はっきりと飛行機の形が見えてきたのは北海の空になじみやすい、白っぽい

幽霊のような塗装をしたソードフィッシュだが先にも述べたように、新型

レーダーまで搭載している機体なので、下手に母艦に近寄らせたくない代物だ

以前聞いた話では、あまりに遅い機体なので、うっかりするとこちらが失速す

る恐れもあるとか。

また敵もさるもの、その小さな旋回半径を生かすことのできる手練れの操縦士

が相手なら攻撃すら難しいという。


とりあえず母艦に近づけないように、痛めつけておかないといけない。

まずはハンスに一撃かけさせてみよう。

こちらは万が一敵戦闘機がいた場合に備えて、監視をしないとな。

敵の搭載機はF4Fらしいが、最近は新型のグラマンとかも配置されてきたとか

情報が入っているからよけいだ。


わが僚機のハンスは目標の下方から突き上げるように接敵、一撃を加え上昇。

見るまに曳光弾に包まれたソードフィッシュはエンジンから火を噴きながら

ゆっくり降下していく。

撃墜できたか微妙だが、あれなら哨戒の継続は無理だ。

深追いするまでもないだろう。

「ハンス、食えたようだな。 これで何機めだ?」

「やっと二けたですね。」

「口説いて振られた数を超えたな」

「どちらも落とした数だけ、覚えていてくださいよ大尉」

「了解、そうしよう。」

「哨戒1番よりアドラーへ。2番機が1機、哨戒機を食った、レーダーに他の

目標はでてないか?」

「君たち以外にはいないようだ。よくやった。警戒を続行せよ。

 まもなく船団に対して攻撃隊を発艦させる」

「了解」


ドイツ海軍の空母搭載機が北海での通商破壊戦に参加した初日のことであった。




北海で、ドイツ空母までいたならば、PQ船団なんてボロカスにされて

いたかもしれません

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