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指輪  作者:
1/1

プロローグ




小指と小指を結んで約束した覚えがあるのは、幼稚園の頃。

幼かった俺は、母親と約束をした。

約束の内容を事細かには覚えていないが、破られたことは覚えている。

幼稚園の卒園式にも小学校の入学式も、父兄の席には1つの空席があった。

空いていない方には、六十過ぎの祖母が座っていてくれた。


それから「約束」が嫌いになった。

「約束」は破られる物だと、そう思っていた。



「泣いたらだめ!」

そう言って藤岡 優希の手を握ったのは、髪の長い女の子

そして、泥だらけになった顔で笑顔を作る

「優希のたいせつな物が無くなったんでしょ?」

優希は泣きながら、こくんと頷いた

手をふるふると震わせている優希と女の子。

真冬の夜。大の大人でも「寒い」と愚痴を零すような夜に、優希と桜井 美月は立っていた。

川の土手で、どろどろになった姿で二人は手を握っている

「絶対見つけてあげるから泣かないで」

空いている手で、優希の頭を撫でてあげる美月。

「だから一緒に探そう?」

美月は笑顔でそう言って、草が覆い茂っている中を進んでいく。

優希もその背中について行き、草の中へと入って行った。


しかし、しばらくすると、心配した美月の母親と、優希の祖母が迎えに着た

母親に手を引かれながら美月は「優希!美月が絶対見つけるから!約束する!」と言う言葉を残して母親に連れられ家へと帰って行った。


それから数日後、コンコンと玄関の扉を叩かれて、優希は玄関へと走っていった。

まだまだ幼い優希。その友達も同様に幼く、玄関の所についているインターホンまで身長が届かない。

そのため、コンコンと叩かれる玄関の音は、優希からすれば友達の音だった。

「はーい」

と、声を出しながら、玄関の扉を開けると立っていたのは数日前に見た、どろどろの姿になっている美月だった。

「ほら!これ見つけたよ!」

身体同様、泥だらけになったちいさな手に握られていたのは、銀色に輝く指輪だった。

それは、優希が母親から貰った指輪で、数日前に失くした「たいせつな物」

「ママの指輪・・・・・・」

優希がそう呟くと美月は笑顔を作り、優希の頭を撫でた

「約束したから、絶対見つけるって!約束は絶対守るよ!」


優希の瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちる。

大切な物を見つけてくれた友達に感謝の涙。

「約束」は守る物だと言ってくれた美月。


この日は指輪と優希の心の中にも、大切な物が戻った日だった。



1曲の音楽をモチーフとして書いてます。


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