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おさらいHowling Moon(ばーじょん1.2)  作者: 椿屋 ひろみ
16/17

瞬とめい

 朝早くからめいはお弁当を作っていた。

それを不審に思っていつもより早く目が覚めたヨミは台所に潜入しその様子を監視していた。


おかずを目の前にしてお腹が空いたのでこっそり卵焼きをひょいっと一口つまみ食いした。

「うっ・・うぐっ」

あまりの不味さにその場で吐き出した。


「なんだよこれ、食いものじゃねぇのかよ」

怒りを覚えるくらいの味にフォークを床に投げつけた。


それに気付いためいは青筋を立ててフライパンでヨミの頭を殴った。

「勝手に食べないでよ。しかもその場に吐き出して失礼ね」

失神しているヨミを無視してテルはめいに話しかけた。

「わぁ、たくさん作ったね。ピクニックに行くの?」

めいは照れながら応えた。


 気を取り戻したヨミはソファーから飛び起き、辺りを見回した。

「めいはどこ行った?」

テルはヨミの隣でお茶を飲んでいた。

「あら、起きたの。黒羽君と動物園デートだって。あの子もやるね」

ヨミは顔を真っ青にして怒った。

「あのバカ、あれほど黒羽とつるむなって言ったのに・・テル、行くぞ!」

「行くってどこに?」

「動物園に決まってるだろ。今度こそ黒羽を始末するぞ」


テルは生あくびをして横になった。

「なんでだよ」

「だって、乙女の恋の邪魔なんてしたくないもん」


呆れ顔のヨミはルルララ姉弟を呼んだ。

「おまえらは動物園行きたいよな」

「当たり前でしょ。連れて行ってくださるの?」

「行きましょ。僕、コアラ観たい」

無邪気に喜ぶ双子を前にヨミはテルに向かってにやりと笑った。

「い・・行くわよ。でもデートの邪魔はしないでよ」


 桜田町にある動物園は平日だからなのか人通りが少なかった。

めいと瞬ははにかんでぎこちないながらも園内にいる動物を見て回った。

「キリンさん、かわいかったね」

「そっ・・そうですね」

二人とも肩を並べて歩いているが恥ずかしくて顔を合わせることができない。

(うわぁ、いざ瞬君と一緒だと緊張するな)


瞬のお腹の虫が鳴った。少しの沈黙が訪れた。

めいはにっこり笑ってお弁当が入ったカバンを見せた。

「お昼だしお弁当食べよっ、私作ってきたんだ」

二人はベンチに座ってお弁当を広げた。

瞬は目を輝かせて言った。

「わぁ、おいしそうですね。食べていいんですか?」

「もちろんっ朝早くから作ったんだよ」


 ヨミは茂みに隠れて望遠鏡で二人の様子を監視していた。

「なんでこいつまともに飯食ってんだよ。腹壊すぞ」

おいしそうに灰色の卵焼きを食べる瞬に辟易していた。

「そんなに不味いのですか?」

ヨミの隣でララが卵焼きを見つめた。

「ああ、一週間くらい放置した雑巾の味だな」

「えっヨミったら雑巾食べたことあるの?」

ルルは驚きながら引いた。

「そっちじゃねぇ!とにかくまずいんだよ」

ルルに拳骨をおみまいした。


 その様子を鼻をほじりながらテルは言った。

「ルルララ、人の恋路を邪魔するような趣味は持っちゃいけないぞ」

ルルは口をとがらせた。

「え~めいおねぇちゃんのキスするところみたかったのに」

テルはルルを一発殴った。

「十年早いわ。おいコアラ観るぞ」

ルルララ姉弟を両脇に抱きかかえてどこかに行った。


ひとりになったヨミはまだ茂みに隠れていた。

(早く正体あらわさねぇかな・・)


相変わらず弁当を食べる瞬をめいはときめきながら眺めていた。

「春野さん・・」

瞬は箸を置き、急にめいに顔を近づけた。

その眼はまっすぐで哀しげだった。

「言っていいかな?僕の秘密」

「・・え?なんで急におかしいよ」

「この前君が気にしてた夜宮さんと僕の関係も全部教えてあげる」

鴉の群れが飛び立つ中、瞬はめいにキスをした。


すると、めいは絶望的な闇色の槍に変化し、瞬はすぐそれを握り、矛先をヨミに向けた。

「忌まわしき十字架族。我が一族の恨みを晴らしてくれる」

バトルスーツに着替えたヨミは立ち上がり鼻で笑った。

「とうとう正体を現したな、黒天狗。俺の武器をパクってんじゃねぇよ」

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