1話
はじめは、こんなにも君の存在が大きくなるとは思っていなかったんだ。後悔したり、喧嘩したり、いろいろなことがあったけどそれがあって今の僕がいるんだ。君がいなかったら今頃、僕は何にも考えずに淡々とした変わらない毎日を送っていたんだろう。でも今じゃ毎日毎日が物語みたいでありえないことの連続なんだ。僕にとって君は大切なんて言葉じゃ足りないくらいの存在なんだ。
5年、6年前くらいのことかな?覚えてる?僕は都会でもなく田舎でもない、そんな街で仕事をしながら暮らしてたんだ。その時の僕の仕事は布を売る仕事をしてたんだ。馴染みのお客さんが来て布を買って行ったり、子供の破いた上着を直すために布を買いに来たお母さんが来たり、まぁやりがいのある仕事だったと今になったら思う。でも、あの時は毎日同じような繰り返しが嫌でうんざりしてたんだ。最初は楽しかった仕事もだんだんつまらなくなってきて、飽き飽きしてたのかもしれない。そんな時に1人のお客さんが来たんだ。それが、君だったんだ。君は他のお客さんとは違って、店にある全部の布を買い占めようとしていたね。今では笑える話だけど、あの時はビックリしたよ。
「ここにある、布全てください!」
「はい。かしこまり…。って、え?全部ですか?」
「はい、そうですよ?言葉通じてます?」
「いや、通じてるんですけど…。何に使うんですか?そんな大量の布一気に使うなんてありえないですよ?買いに来るのが面倒ってことなら売れませんけど?」
僕は君の言葉通じてます?に少し怒ってたんだ。気づいてただろうけどね。
「もう!そんな嫌味ったらしく言わなくてもいいじゃないですか!」
「はぁ?嫌味ったらしいってそっちじゃないか!」
「どこがですか?意味わかんないですよ!」
「初対面の相手に言葉通じてます?ってありえないから!常識ないのか?」
「そこですか?そんなことにこだわるなんて小さいですね!」
「もう、いい…。で、何に使うんだ?」
今も思うけど、君は初対面の相手でもかなり失礼なことができる人だよね。度胸があっていいかもね…。
「これから、私旅…というか冒険に出るんです!」
「はぁ?なに言ってんの?」
「だから冒険ですよ!それで服とか、テントとか用意しないといけないんですけどお金ないんですよー!」
「それくらいの金は用意しろよ…」
「だから服は作れる人を連れて旅先で作ってもらおうかと…」
「へぇ。そいつは付いて行ってくれる人が可哀想だな。」
「でですね!私の周りには服作れる人いないんですよー。」
「それは、残念だったね。」
「だから!嫌ですけど!あなたについて行って欲しいんです!」
「へぇ。そいつは…ってはぁ?!なに言ってんの?」
「私も不本意ですよー!でもあなた、手器用そうだからいいかなみたいな?」
本当にわけわかんなかったよ。初めて、会った人に一緒に冒険しましょう!なんて頭おかしいのかな?としか考えてなかった。ごめんね。
「俺はいかないからな。」
「なんでですかー?!」
「冒険なんて言って、命の保証はないし。それに店だってある。行けないに決まってんだろ?」
「大丈夫です!店は私の知り合いに頼みましょう!命の保証は…私がお約束します!」
とにかく胡散臭かった。命の保証なんてただではできない。だから何するのか…あの時は考えただけでも怖かったよ。
「知り合いって誰だよ!それに怪しい奴についていくことはできない。」
「怪しくないですよ!私はユノ。16歳です!」
そうやって君の事を知ったんだ。
読んでいただきありがとうございます。
二話も読んでくだされば嬉しいです。