『龍殺し』・後
「「前半から続く~♪」」
「――何でだよ……何で、こうなっちまったんだよ……」
『龍』を倒してから数日後。フロイルはボロボロの姿で夜の森の中を歩いていた。
……『龍』を倒した時の、覇者の如く輝いていた姿は見る影もない。瞳は虚ろ・覇気は皆無・鎧は所々歪んでいる・盾は失っている・服もボロボロ・顔は腫れ上がり口から血が滲んでいる……何処からどう見ても、『負け犬』である。唯一変わっていない点を挙げれば、背負っている例のバスタードソードぐらいであろう。
――彼が何故こうなったのかを時系列順に説明していこう。
まずフロイルは『龍』を倒した三日後には王城へと招かれた。手近のギルドに『龍』の牙を証拠に持ち込み、半信半疑ながらも確認に行ったギルド職員が『龍』の亡骸を見て慌てて戻って来た後に上層部に報告し、そこから王城にまで話しが伝わった結果であった。
喜び勇んで訪れたフロイルは、謁見の間に案内されるまでに笑みが止まらなかった。『龍』を単独で倒したと言う偉業を成し遂げた自分に、どれ程の恩賞が与えられるのか想像もつかなかったからである。
騎士として取り立てられるか? それとも爵位と共に領地を賜るか?
……しかし、謁見の間で国王がフロイルに与えた物は、幾許かの金貨に過ぎなかった。確かに、普通の一般人ならば一生を暮らせる額だが、『龍』を倒した報酬にしては安すぎるとフロイルは呆然の後に食ってかかった。
されど国王は静かに諭す様にフロイルに告げた。
「お主に対してこれ以上の物を与える事は出来無い」
「お主を騎士にする、或いは爵位を与えると言う事は、我が国がお主を抱え込むと言う事」
「それは我が国が『龍殺し』と言う戦力を手に入れる事だ」
「そんな事をすれば、他国に要らぬ疑いを持たせる事になる」
「その力を良からぬ事に――戦争に使おうとしているのではないか? と」
「国同士の均衡を崩す事は出来無い――それ故に、お主にこれ以上の物は与えられぬ」
淡々と告げる内容に、フロイルは己の怒りを堪えるしかなかった。理解はすれど納得出来無い話しではあるが しかしそれ以上に国王を含め周囲の重臣達の視線に押し黙るしかなかった――扱いに困った眼に。
そもそも王国の上層部は、件の『龍』を然程驚異と見てはいなかった。普段は己の縄張りである岩山から出て来ず、数十年に一度、空腹になった時に人里を目指してやって来るが、そのタイミングで予め食料を用意して岩山に置いておけば、勝手に喰って満腹になって満足してしまうからである。討伐を試みて失敗した際の人的被害と言ったリスクよりも、数十年に一度に家畜百数十頭分の肉を用意すれば済む事の方が遥かに安全かつ安上がりなのである。
……対処が確率されている天災が無くなった代わりに、対処が確率されていない人災が降って沸いたのだから、皆の態度は仕方無いと言えよう。
――次に、フロイルが訪れたのは王都にあるギルド本部。
自分の拠点としている街のギルドよりも大きく、所属している人数も多いこのギルドにて彼はギルドマスターとの面会を果たした。王城での一件でかなり機嫌が悪かった彼も、老いたりと言えど衰えた訳ではないと全身で物語るギルドマスターを前にすればそんな事は頭の片隅に追いやっていた。心の中では期待で溢れていたからである。
BランクどころかAランク、いやSランクになっても可笑しくないだろ? むしろ何処かの街のギルドマスターに就任されるかも?
……しかしギルドマスターの言葉はそんなフロイルの予想に反し、ランクを与えないと言う事であった。。
当然フロイルは、テーブルを思いっきり両手で叩き身を乗り出して詰め寄ったが、ギルドマスターはそうなると予めわかっていたかの様に、落ち着いて話し始めた。
「お前をランクと言った枠組みにはめる事が出来んのじゃよ」
「既存のランクに当てはめた場合、元からそのランクに居る者達とお前が同一視されるのじゃよ? そんな事、迷惑以外の何物でもないじゃろ?」
「かと言って、新たなランクなど創っても意味が無いんじゃ」
「そのランクを手に出来るのはお前以外に誰が居る? この先にお前と同じ力量の者が何時現れる?」
「お前だけのランクなど創れんよ。ギルドは一人に肩入れして良い場所では無いのじゃから」
「しかし、お前の事は既に全てのギルドに伝えられているので、お前にはSランクよりも優遇処置が取られるじゃろう」
「代わりに、緊急な依頼が入った時は率先して受けて貰う事になるじゃろうがな」
「スマンが、儂等にはこれ以上の事は出来んのじゃ」
告げられた内容に、フロイルはテーブルをちゃぶ台返しして罵詈雑言を残しギルドを後にした。
後に残されたギルドマスターは、若いのぅ、と染み染み呟きつつも平然としていた。今回の件はギルドからして見れば、国から後よろとばかりにタライ回しに対処を任された様なものなのだから、準備も用意も何も出来ていないし、正直面倒事を押し付けるなと言いたい。
――だがそれ以上に国もギルドも、フロイルを優遇して『龍殺し』の力が自分達に向かない様にする、と言う事をしないのは、偏に力量は有れど驚異とは見なしていないからである。
経験と年月で鍛えられた人物眼によって国王以下重臣達もギルドマスターも、フロイルは自分達の敵とは成らない……いや、成る気がないと察している。いくら口では悪態を吐きながらも全身で不満を見せても、結局は従っている事実が国一つやギルド全体を敵に回す度胸が無い事を物語っている。
……それに『龍殺し』とは言え人である以上、殺す術はいくらでも有るのだから、そうなったらそうなったで対処する自信がどちらにも有る。
――そして拠点としている街まで帰って来たフロイルは、既に自分の偉業が街中に広まっており皆のヒソヒソ話しと視線に晒されながらも、そんな事は気にも止めず、緊張に引き締まった顔で目的の場所まで早足で歩いていた。
やって来たのは馴染みのパン屋。深呼吸を繰り返し自分に喝を入れてから店内へと入り、驚いた顔をしたサラの元へ駆け寄り手を取って勢いのままにプロポーズをした。
予想よりも酷い扱いではあるが、『龍殺し』と言う名声・力量を手に入れた今こそが告白の絶好の機会と思い、サラも自分の事を少なからず想ってくれている事を確信しているフロイルはプロポーズの成功を疑わなかった。。
……しかしサラはフロイルの手を振り払い距離を取ると、首を横に振った。まさか断られると思っていなかったフロイルは呆然とし、そこにサラの涙混じりの声が後押しした。
「貴方の功績はもう街中に――いえ、国中に知れ渡ってる」
「『龍殺し』と言う英雄として」
「そんな貴方に、ただの平民である私は相応しくないわ」
「貴方がどう言おうと! 周りの皆はそう見てしまうのよ!」
「英雄の妻は、私には重すぎるのよ!!」
「私は貴方にそんなもの望んでいなかった!」
「普通で良かったのに……すぐ調子に乗って怪我をして、子供っぽくて短気で、でも一生懸命な貴方が好きだったのに……」
「どうして、英雄になんか成ってしまったのよ……」
涙を流し、嗚咽混じりに喋るサラの姿にフロイルは何も声を掛ける事が出来なかった。そして、さよならと言って店の奥に引っ込んで行くサラの後ろ姿を見えなくなるまで見送った後に、フロイルは弾かれた様に店を飛び出し進路上の人を弾き飛ばす勢いで街の外まで走り続けた。
……流れる涙を拭いもせずに。
――その後、息が切れるどころか脚の筋肉が限界を迎えるまで走りに走って、脚がもつれて転んだフロイルはそのまま地面から起き上がらずに泣き続けた。
既に涙など枯れ切って充血した眼。同じく鼻水が枯れ切って真っ赤な鼻。食いしばった歯から溢れる嗚咽。爪の隙間に土が入るのも構わずに地面を抉る両手。
全身で悲哀を体現した男は、それでも近づいて来る気配と足音を感じ取り、疲労で震える脚で何とか立ち上がる。
そこで今が夜であり、自分が森の中に居た事にすら漸く気づいたフロイルであったが、そんな事は小さい事だと気にせずに近づいて来るモノの方を睨む。程なくして茂みを掻き分け現れたのは、大人の腰程の身長しかない緑色の肌を持った醜悪な生き物――ゴブリン。
数にして十にも満たない集団を前にして、フロイルは濁った瞳で静かに背中のバスタードソードを両手で引き抜いて構える。ゴブリン達がその迫力と狂気に逃げ腰になるが、それよりも速くフロイルはバスタードソードを大上段に振り上げて襲いかかる。八つ当たりに絶好の相手を見つけたフロイルが、自重も自制もする筈がない。
オーバーキルも辞さない勢いで振るわれたバスタードソードは、哀れなゴブリンに――躱された。
「……へ?――ぐはっ?!」
振り下ろした姿勢のまま呆けたフロイルの、無防備な背中に他のゴブリンが木の棒で攻撃してくる。鎧を着ているとは言え意識していなかった所を狙われたので、そこそこ痛い。
この野郎とばかりに振り向き様に横薙ぎの一閃を振るえば――またも躱される。
「な、なんだよ? どういう事だこれはっ?!!」
フロイルが信じられぬとばかりに叫ぶ。ゴブリン達の動きに付いてではない。自分の動きが余りにも下手糞な事に付いてである。
予備動作が大き過ぎる上に、振るわれた斬撃はヒョロヒョロ。剣に振り回されふらつく身体。悲恋のショックで走った疲労の分を抜きにしても、これは可笑しいを通り越して異常だった。『龍』を殺した時の様な軽やかな動きなど見る影もなく、言い様にゴブリン達に弄ばれていた。ゴブリン達もフロイルが大した事のない相手とわかったのか、醜悪な顔を歪めフロイルを囲みながらいたぶり続ける。
「ぶふっ?! ぐっ?! げほっ?! づあっ?!――わああああぁーーーーっ!!!!」
しかし疑問の解消に費やす余裕など無い。腕・脚・脇腹・背中・顔と至る所を叩かれ、防ぐので精一杯。このままでは殺られると悟ったフロイルは盾を投げて包囲に隙間を作り、そこへ強引に突っ込んで逃走を図る。
疲労困憊で限界な脚を無理矢理でも動かし、追ってくるゴブリン達から無様に逃げるフロイル。
――そして冒頭へと至る。
次から次へと自分に降りかかった事に心が軋みを上げ、虚ろな瞳のまま夢遊病患者の如くフラフラ歩くフロイルは――
「――ぶっ?!」
――目前のモノに気づかずに顔を打ち付けた。
幸い歩くスピード自体が遅かったので、打ち付けた痛みは大した事なかった。それでも痛む鼻を抑えて、その衝撃で真っ当に働く様になった頭で目の前のモノを見据えれば……見覚えのある、黒塗りの大きな両開きの扉。
「……あ、ああ……」
二歩三歩と後ずさって全体を見れば、見覚えのある屋敷。辺りを見渡せばこれまた見覚えのある庭園。
それがわかったフロイルは――
「――ああああアアアアアーーーーッ!!!!」
――雄叫びを上げて、感情の赴くままに右足を扉に振り上げ――
「――痛えぇぇぇぇぇーーーーっ!!!!」
……叩きつけた右足を抱えて、片足でピョンピョンと飛び跳ねたのであった。当然、扉はびくともしていない。
時間にすれば一分弱。痺れは残れど痛みは引いたので、今度はちゃんと扉を開く。
開いた先には見覚えのある玄関ホール。かつては見とれた絢爛さも、今は何も感じない。辺りを見回しその姿を探しつつフロイルは大声を張り上げる。
「出て来い!! 双子どもっ!! 何処だっ!! 出て来やが「「な〜〜に〜〜?」」――どぅわあぁぁぁぁーーーーっ?!!」
いきなり眼前に現れた逆さまな二つの顔。音も気配も無く頭上から現れた双子に、フロイルが驚きのあまり派手に仰け反って尻餅をつく。
天井のシャンデリアから垂らされた紐を伝い、蜘蛛の如く逆さまに降りてきた黒白の双子は、器用にクルンと回転して床に降りる。
「白いの白いの。また来たよ」
「黒いの黒いの。また来てる」
「「以前に来た人、また来たよ」」
揃って小首を傾げた双子が、以前と変わらぬままに揃って話す。フロイルは暫し呆然とするも、驚きのショックは抜けていたので、すぐさま食ってかかる。
「どういう事だ?!!」
「「何が〜?」」
「俺は『龍』をも殺せる力を手に入れた筈だろっ?!! なのに何でゴブリン相手にこの様なんだよっ?!!」
自分のボロボロな身体を見せつける様に大きく両腕を開いて咆えるフロイル。しかし、双子は冷静に、端的に、完結に、何て事無く一言。
「「だってソレが代価だよ?」」
「…………は?」
思わぬ言葉に凍るフロイル。だが双子の言葉は止まらない。
「ちゃんと言ったよ〜?」
「ちゃんと告げたよ〜?」
「「『見合った代価を要求するよ』って」」
「……………………あ」
双子の言葉に、過去この屋敷で交わされた会話をフロイルは思い出す。確かに双子は言っていたその事実を。
「だけどお兄さん聞いていかなかった」
「だけどお兄さん知っていかなかった」
「「一人でさっさと行っちゃった〜」」
「だけどお兄さん願い叶えた」
「だけどお兄さん望み叶えた」
「「だから代価も貰った〜」」
「…………何をだ」
双子に恐る恐る尋ねるフロイル。声も体も震え出すが、それでも聞かねばならないと訪ねたフロイルに対して、双子はアッサリ告げる。
「「『龍殺し』以外の全部」」
「……………………何だって?」
「お兄さんが掴める筈だった未来」
「お兄さんが手に入れられる筈だった可能性」
「「それ全部」」
「後は、『龍』以外の生き物を殺せる力量」
「『龍』以外の生き物を殺せる技巧」
「「それも全部」」
「……………………」
「だからお兄さんは、騎士にも貴族にもギルドの高ランクにも誰かの夫にも成れな〜い」
「だからお兄さんは、ゴブリンにもスライムにも『龍』以外の生き物には勝てな〜い」
「『龍』を倒す事しか出来無〜い」
「『龍』を殺す事しか出来無〜い」
「「お兄さんは『龍殺し』。『龍』を殺す者――ただそれだけの存在」」
「……………………俺が掴めた未来って……?」
「「ん〜? あれ」」
双子が指さしたのは大きな鏡――姿見。そこに近づいたフロイルが見たものは、写った己の姿ではなく――見知らぬ自分の姿であった。
今の自分よりも幾分か歳を取った、自分で言うのも何だが落ち着いた熟練の雰囲気を持った自分が、同じように幾分か歳を取ったサラと他に二人の女性と共に仲睦まじく笑い合っている光景。どう見ても幸せな光景。
「……………………これは?」
「お兄さんの一番確立の高い未来」
「お兄さんの一番確立の大きい可能性」
「「今はもう失った将来〜」」
「…………………………巫山戯るなぁーーーーっ!!!!」
長い時間をかけて、漸くその意味を咀嚼し切ったフロイルが、激高して双子に掴みかかるが――
「――がはぁっ?!!」
「「だから〜、お兄さんは『龍』しか殺せない。僕たちだって殺せな〜い」」
――拙い動きであるのに簡単に足を引っ掛けられて転ぶ。すぐさま起き上がったフロイルは同じ事を繰り返すが……結果は変わらない。良い様にあしらわれるだけ。
そうして自分が本当にそういうモノになってしまった事実を、否応無く実感してしまったフロイルは――その場で盛大に土下座する。
「だったら……だったら、返す! この剣も力も返すから、俺から取ったモノを俺に返してくれっ!!」
額を地面に擦り付け必死に懇願するフロイルであるが、対した双子はやっぱり冷静に、端的に、完結に、何て事無く一言。
「「無理〜」」
「何でだよ?!!」
「お兄さん、もう『龍』を倒しちゃった」
「お兄さん、もう『龍』を殺しちゃった」
「「お兄さん、もう『龍殺し』を成しちゃった〜。だから無理」」
「落ちた砂は戻らな〜い」
「溢れた水は汲めな〜い」
「「過ぎた刻は還らな〜い。だからもう返品は無理〜」」
「…………じゃ、じゃあ! 別の代価を支払うから、それで「「それも無理〜」」……え?」
「「お兄さん、もう払える代価が残ってないし、ここで叶えられる願いは一つだけ。だから無理〜」」
「……………………」
その言葉に、フロイルの全身に絶望が駆け巡る。身体から力が抜け項垂れ、瞳から輝きも消え譫言の様にブツブツと呟き始める。
「何で……俺はただ……サラとの……幸せな……」
「「なら何で。それを願わなかったの〜?」」
「?!!」
フロイルの呟きを聞いた双子が率直な疑問を尋ねる。その言葉に顔を上げるも、フロイルは答えられずに再び俯く事しか出来無い。
しかし双子は問い掛けを止めない。次々に言葉を重ねていく。
「何で彼女との未来を願わなかったの?」
「何で彼女との幸せを望まなかったの?」
「『龍』を殺す事が彼女の幸せなの?」
「『龍』を殺したら彼女は幸せになるの?」
「「『龍』を殺す事が、お兄さんと彼女の幸せにどう繋がるの〜?」」
「……………………う、うわああああぁーーーーっ!!!!」
無邪気で残酷な言葉に、遂に耐えられなくなったフロイルが逃げ出す様に走り去る。開けっ放しだった扉から外へと出て行き――そして消える。
後には、揃ってポカンとした顔の双子が残される。
「白いの白いの。何で本当に望んだのと違うもの願ったのかな?」
「黒いの黒いの。何で本当に望むもの願わなかったのかな?」
「「人間って、やっぱ変」」
やっぱり揃って小首を傾げる双子であるが、それも束の間。揃って振り返って――
「白いの白いの。ご飯の時間だ♪」
「黒いの黒いの。ご飯の時間だ♪」
「なに食べよ?」
「なに作ろ?」
「朝はお魚♪」
「昼はお肉♪」
「「じゃあ夜は両方〜♪」」
――そう言いながら屋敷の奥へと消えていった。
『――と言う様に、『龍殺し』である英雄フロイルには、未だ解明されていない謎が多く残されている。
『龍』を殺した数日前までは、ギルドではCランクであった事は記録にも残されている事から事実である。しかし『龍』を殺せる者がCランクと言うのは、どう考えても有り得ない。何故、己の力を偽っていたのかと言う疑問と共に、このタイミングで『龍』を殺し己の力を明かした事も謎である。
しかも、この後に英雄フロイルは消息を絶ち、その行方は今日に至るまでわかっていないので、謎を解く手がかりは皆無と言える。
消息を絶った理由は――その力を恐れた国もしくは有力者によって消された・『龍殺し』と言う武の頂点に至った事で人生の目標を達し隠居した・実は『龍』との戦いで致命傷を負っていて人知れず亡くなった――など諸説有るが、どれも有力とは言い難い。
なお、フロイルが消息を絶った同時期に、とある街の近くの森で一人の冒険者の遺体が発見され、それがフロイルではないかと言う者も居る……しかし、遺体の損傷が激しかったので、容姿の確認が当時は出来無かった事もそうであるが、その森にはゴブリン程度のモンスターしか生息していないので、『龍殺し』たるフロイルがそんなモンスターに遅れを取るとは考えられない。偶々、その遺体がフロイルの物と同じバスタードソードを持っていたからと言って、同一人物とするのは強引過ぎると言えよう。
むしろ――』
――とある学者の著書より抜粋――
「「ご愛読、有難うございました~♪」」