ゴミ箱
『さー始まりましたゴミ箱シュート選手権全国大会!』
司会のハキハキした声が響く。
『今回は十回目ということで、ゲストとして第一回に日本一に輝いた田中太郎さんにお越しいただきました。田中さん、今回の大会、優勝候補であるマイケル・ブラウンについてどう思いますか?』
そんなことはいいから早く始めて欲しい、と思うが俺も一応大人だ。きちんと我慢して司会と第一回優勝者のおっさんの話を聞く。
『そうですね、』
「ぶほっ………くくっ……」
笑ってしまった。おっさんの声かわいいな………!なんでその声で立派なおっさんやってんだよ。
『彼はどこか力任せにしているところがありますからね。コントロールが重要になるコースになるとかなり不利になるんじゃないですかね』
『なるほど!それでは早速始めて行きましょう!』
なんて雑に進めて行くんだろう。しかし、つっこんでも仕方ない。
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この競技は簡単に言えばゴミ箱にティッシュを丸めたやつを投げ入れる、というものだ。が、これはいかに少ない回数で投げるか、いかに遠くから入れることができるか、これらを競うので、運も実力の内という言葉を実感できる。
『それではエントリーナンバー1、片山夏奈さん、どうぞ!』
司会の言葉と共に出てきたのは、線の細い少女。ただしブスだが。
「だあああああらっしゃああああああッ!!」
とんでもないほどの声量で叫びつつティッシュを投げ放った。
ズドンッッ!!!!
「……………な、」
言葉が出ない。
ザワザワと観客が騒ぐ。それもその筈、一発でゴミ箱にティッシュを入れただけではなく、なんと驚くことに、ゴミ箱がバラバラになっていた。
「まさか奴は………!」
『まさか百年に一人しか生まれないと言われているゴミ箱クラッシャーなのか……?』
おっさんが呟く。
なんだか出オチ感が半端ではないが、彼女はまだあと一球残っている。またもう一つゴミ箱がクラッシュでバスターされてしまうのか。
今度は特に叫ぶこともなく普通に投げた。しかし、ティッシュはゴミ箱に届かない。先程の威力はなんだったのか、と観客も、どこかしらけていた。
『え、えーと、田中さん、今のはどう思いますか?』
『初撃で流石に体力を使い切ったみたいですね。ゴミ箱クラッシャーのスキルは相当な体力がなければ一回目だけで終わってしまいますから、それでも二回目のティッシュを投げられるだけでも相当な使い手、さすがは片山流投擲技術といったところでしょうか。』
なるほど、そう言う事か。
もちろん俺はよくわかってないですよ?
『それではエントリーナンバー2、今大会の優勝候補、マイケル・ブラウンです!』
かなりガタイのいい男性が出てきた。
「YEAH!」
そう言いながら投げた。
しかし、その方向では入らないはずだ。一体どこに投げているのだろうか。
「!?」
俺は驚いた。
カクリ
「曲がった………………?」
忘れていた。今の今まで忘れていた。馬鹿だった。俺は馬鹿だった。
この競技に物理法則を求めてはいけない。
そんな常識を。
そのままゴミ箱へ。
『何と言うことだああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
司会が叫ぶ。
『まだ隠している技があったとは。さすが優勝候補だ…………』
おっさんも驚いているようだ。
マイケル・ブラウンは2発目もゴミ箱に入れていた。
それからも次々と選手たちがゴミ箱へシュートしていく。
『さあ、最後の選手となりました。名前は──』
俺の出番だ。
「よし、やるか」
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結果から言わせてもらうと、惨敗だった。
ティッシュはゴミ箱に入ることなく。
観客の冷たい視線は突き刺さり。
スコアは最下位。
でも、俺はまたこの競技をするだろうな。なんてったって、楽しいから。
別に勝つ気はない。楽しければいい。そう思うのだ。
まあ、なんだ、負け惜しみに聞こえないこともない。でも、勝つことにだけ集中しても本当にその競技を楽しんでやってる奴には負けると思うんだ。
最後に言いたい。
全部負け惜しみだよッ!!
読んでいただいてありがとうございます。
いやほんとお疲れ様です。




