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第1話 でぐちをもとめて。

 夢なら早く覚めて欲しいな。

 俺はそう思いながらペッタンペッタンと足を進めていた。

 人の足じゃないせいか、なんともぎこちない歩みである。


 やっぱり考えてもあまり良い結論にはいたらない。

なにより難しい事を考えようとするとなぜか頭痛がしはじめた。


 これは爬虫類特有の痛みなのかそれとも、

考えるだけ無駄という何かの制約なのだろうか。

 なんだか惨めな気分に陥った。


<歩きながら考えられれば、それに越したことがなかったのにな>


 ついには愚痴りはじめてしまった。


 しかたないので自分の記憶を思い出してみようと思った。


 確か俺は人間だったはず……だ。

 んで、なんらかの仕事もしてたはず………だ。

朝起きてパンを食べて、仕事に遅れないようにと

準備を整えて……んー仕事?

 仕事って何の仕事をしてたんだっけ。


 足を止めて俺はさらに困ってしまった。

これが夢ならいいのにと繰り返し思いつつも、

自分がどういった人間だったかもわすれてしまっているようだ。

いや思い出せないようになっている……。

と、いったほうが正しいのか?


 そもそもなんで爬虫類?

なんか他の生物でも良かったんじゃないかと思うくらいだ。

 例えば鳥。

大空を羽ばたいて空を自由に駆け回り、

好きなだけどこまでも飛んでいけそうなきがする。

 例えば獣。

大地を駆け回り、草原をひた走るのは

とても気持ちが良さそうな気がした。


 しかし今の自分は爬虫類。

 素早く走れそうにないし。

出来ることといえば壁に引っ付いたり、

うまく着地が出来そうなくらいである。


 色々と思い出してみようと躍起になってみたのだが、

考えれば考えるほど頭痛がしはじめたので

考えるのをやめて再度歩き始めた。


 それにしても真っ暗な道は続いた。

途中に何かの骨が落ちてたり、小さなネズミや蝙蝠の様な生き物が

ちらほらと見かけたのだけど、これといって怖いという感情は

一切無かった。爬虫類になって恐怖感がなくなっているのだろうか

まったくの謎だ。

 もしかしたら単純にそれらの生き物達が

自分より大きくは無いし、

敵意を感じなかったからかもしれない。

 のっしのっしと進むと逆に逃げられるくらいだ。

 ちょっと避けられてる感じもして

悲しいきもするのはなぜだろう。


 何時間歩いただろうか、

それはもう途方もないくらい歩いてた気がする。

 気がするってだけで、

もしかしたらそんなに時間がたっていないのかもしれない。

 真っ暗な空間をずーっと歩いていくのはそれくらい精神的に

辛いものがあった。

 それで気がついたのだが、

『疲れ』や『精神的ストレス』の様な気分は自覚できるようだ。

 こういった人間じみた部分も無くなっていたとすれば

俺は違う意味で憂鬱な気分になっていたかもしれない。

 やっぱり元は人間だったのだろうか。

人間性は大事だと思った。


 ペッタンペッタンと歩いて行って

やっとのことで光源を見つけた。

細長い洞窟の様な空間を突き進んでのうれしい結果だ。

 やっぱり真っ暗な空間よりも陽がある方が気分が良かった。

俺は無我夢中で足早に外の世界へと歩みだした。


 そして洞窟を抜けてまず初めに、

いまの俺に眉間があるのかわからないのだけれど、

あればきっとそこに、しわが寄っていただろう。

 そんな光景を目撃するのだった。

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