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魔王ライナス様と僕の友情日記  作者: EKAWARI
ライナス様と僕編(神歴988年~1072年)
6/15

魔王の体質(神歴992年秋)

ばんははろ、EKAWARIです。

今回の話は、神歴992年の11月頃の話です。

なのでこの話での主人公は、人間でいうと大体精神年齢と肉体年齢は16歳~17歳くらいですね。実年齢は22歳ですけど。

そんなわけでどうぞ。




 それは、秋も盛りを過ぎたある日のこと。魔王城で一晩中飲み明かしたある朝、ライナス様は隣でいつものように鏡を見ながら、はぁーっと落胆のため息をついていた。

「あー……くそー」

 未練がましい響きで唸るように言葉を吐きながら、隣で髭をそる僕をちらりと見てくる。

「なんですか、気持ち悪い」

 そんな素直な感想を漏らす僕に対し、ライナス様はじと目で睨みつつ喧しくも大音声で叫んだ。

「なんでオマエには髭が生えるのに、俺には生えねえんだよ!」

 俺だって男なのに! と更に喚く見た目は美女、中身はしっかり男な魔王様。

 どうやら男らしいことに幻想を抱いているらしいライナス様は、髭とか筋肉とか、でかい図体とか、コワモテとかに憧れているらしい。見事に本人に備わっていないものばかりである。僕にしてみりゃあそんなもんに憧れるなんてアンタどこのガキンチョですかって話でナンセンス極まりませんが、まあ、この人の頭んなかはガキンチョと大差ないので、優しい僕はそこはスルーしてあげます。ぶっちゃけ、無いもの強請りしてるだけじゃねーのとは思うけど。

 なので、あくまでもキツイものではなく、呆れ混じりに淡々と僕は憧れの現実について指摘してあげました。

「生えねえほうがいいじゃねえですか。処理の面倒がなくて。のびてもうぜえだけですよ」

「髭が生えているほうが男らしいじゃねえか。あーくそ、今からでも生えねえかな。こう立派な口ひげとかいいよなあ」

 男のロマンだとばかりに続けられる声に、僕は冷笑じみた表情を浮かべながら、毒舌を吐きだす。

「は、アンタの顔じゃあ、生えたとしても違和感バリバリでミスマッチすぎるってんですよ。気色悪いからやめるんですね。公害です」

「そこまで言うか?」

「絶対似合いません」

 きっぱりと言い切ってやった。全く、この人自分の外見がどんなんなのか、客観的に受け止めてないんですかね。女と見紛うような顔に立派な髭とか気色悪いだけじゃないですか。チグハグすぎて違和感パねえですよ。ああ、ヤベエ鳥肌立ってきた。うん、変なもんは想像するもんじゃないですね。

 なので、別の方向に話をずらすことにしました。

「ていうか、アンタそんなに男らしいことにこだわってんのなら、その長髪やめたらどうですか。まあ、短く切っても男らしくみえるかっちゃあ微妙ですが、長髪よりゃマシでしょう」

 その僕の言葉を受けたライナス様は一瞬気まずげに視線をさ迷わせて、それから、拗ねるような声で続けました。

「切って意味があんならとっくにやってるっての」

「はぁ?」

 むすっとした顔でそう返すライナス様。

 切って意味があるとかないとかわけがわかりません、どういうことでしょうか。そんな風に内心目を丸くしている僕に気づいたのでしょう、ライナス様は気が進まないような顔を浮かべつつも、律儀に説明を開始しました。

「魔王ってのは、母親の胎内にいるときから既にどんな「姿」になるのか最初っから決まってるんだよ。だからよ」

 いいながら、ライナス様は自分の髪を一房掴んで、ざっくばらんにナイフで切り裂きました。それを見た瞬間、僕の胸に到来した思いはなんて勿体無いのかという衝動です。自分で短髪になること進言しといてあれですが、こんだけ綺麗な髪してりゃあ、それが損なわれるのは勿体無くもなったりするもんなんですよ。

 だけど、吃驚。1分と立たないうちに、切られた髪は元の長さまで伸びきり、すぐに元通りになりました。って、どこのマジックだよ、え、ファ○ク、マジでか!?

「な? 意味ねえんだよ」

 元通りになった自分の髪をしっかりと掴みながら、あっけらかんと僕に向かってそう口にするライナス様。それを見た僕は、がっしりとライナス様の手を逃さじと掴み、ずいと近寄りながら、低い声で一言。

「……アンタ、すげえ特技もってるんじゃねえですか」

「……おぅ?」

 そう言った。

 ギラリと瞳を光らせつつ言う僕を前に、ライナス様は若干引き気味だが、僕は構わず続ける。

「切っても切っても伸びるってことは、切り放題ってことですね?」

 確認の意味を込めていう。その僕に対し、ライナス様は頬を引きつらせながら、たじたじに二、三歩後ずさりつつ、この人にしてはえらく小声でぼそぼそと答えた。

「いや、そりゃあそうだが、なんだ、おい、オマエ顔こええぞ」

 その返答にがっしり、僕は両手でライナス様の手をしっかり掴んで、強い口調で言った。

「売りましょう」

「はぁ!?」

「アンタの髪の毛を売るんです! こんな見事なまじりっけ無い銀髪はそうはねえですからね。絶対高く売れますよ。枝毛一つないとかもポイントとしては高いです。いやはや、いくらで売れるんでしょうね! 間違いなく高値で取引されますよ。しかもその上おまけに、アンタは切っても切っても髪がすぐに伸びてくるときている。こりゃあ売るしかないでしょう。ええ、そうですとも。根元からばっさり切りまくれば大量の髪ゲット! それをカツラにして売ればぼろもうけすること間違いなし! なんておいしい商売なんだ。さあ、やりましょう、さあ、さあ、さあ!」

「って、やるか、ボケー!!!」

 そうして壮麗な朝の城に、似つかわしくない男の叫び声が二つ木霊した。

 今日も魔王の城は平和です。




 了




 おまけ四コマ

挿絵(By みてみん)

というわけで「魔王の体質」でした。

珍しく主人公のほうがライナス様を振り回していますね。まあ、こんなこともあるということで。

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