第8話 襲撃
ドン!ドン!ドン!激しく扉が叩かれる音で目が覚める。
「ドーラ!おい!ドーラ!」ドーラが慌てて扉を開くとルトンさんがいた。
「何かあったんです?ルトンさん」
普段の穏和な表情ではない、焦りが窺える。
「グラの群が来てる!警備も何人かやられた!すぐにこい!」ルトンさんはそう告げるとそのまま村の入口の方へ走って行った。
ドーラ姉さんも準備にとりかかり、
「ユトたちは家からでるな!」そう言って家を飛び出して行った。
「う、うん。気をつけて」
僕とユト姉さんは呆然としながら見送った。
日も落ちて、村が寝静まり始めた頃だった。さっきまで静かだったのに外は慌ただしくなっていった。
「だ、だいじょぶかな?」僕は不安になりユト姉さんにひっついた。
外からはグラの遠吠えらしきものが聞こえてくる。
「大丈夫よ、どっちにしても私たちは待つことにしかできないわ」
どれくらいたっただろう。喧騒もやみ、ドーラ姉さんが、戻ってきて
「もう大丈夫、先に寝てな」といってまた出ていった。よかった、とユト姉さんと二人でほっと息をつく。
とりあえずユト姉さんにつれられ寝室で一緒に寝る。。。
でもなかなか興奮がさめず、寝つけない。ユト姉さんは寝たみたい。
ガチャン!と扉の明け閉めの音がした。ドーラ姉さんが帰って来たみたいだ。僕は布団から出て居間に行く。
「おかえりなさい。怪我は?」姉さんの腕に血が付いているのを見て慌てる僕。
「ん、ただいま。少しやられたけど問題ないさ。待ってたのか?」大丈夫、と安心させるようにドーラ姉さんは笑った。
「うん、寝れなくて.....」
「そうか....大丈夫だ。」そう言って抱きしめられる。すごく安心する。
「おっと、血がついてたな。水をあびてくるよ。」そう言って姉さんは出ていった。少し外に出て見ると、何かの焼ける臭いや血の臭いの何とも言えない嫌な臭いがして、全身に鳥肌がたつ。
「何してんだい?ほら、もう寝るよ」外で呆けていた僕を見つけて姉さんは抱っこしてベットまで運んでくるた。
ドーラ姉さんに抱きしめられながら寝て、なんとか寝つけた。
次の日も朝早くドーラ姉さんは出ていった。調査隊を森に送るための作戦会議があるらしい。
僕はお勉強にも鍛練にも身が入らず、ぼぉっとしていた。
「ユーリちゃん!いるー?」
玄関に行ってみると、ファノとリーンがいた。
「どうしたの?」
「えと、ルルちゃんがお花畑に来て欲しいって」リーンが小さな声で言った。
「そうなの?なんだろう?」また蹴られるのかな?やだなぁ...
3人でお花畑に行ってみると、
「やっときたわね。」
相変わらず尊大なルルさま。
「それで、どうしたのさ、ルル?」ほっぺをガードしながら聞く僕。
「リーンから聞いたのだけど昨日グラの群が来たんですってね?」あれ?いつもと違って真面目な感じだよね?
「う、うん。それがどうかしたの?」
「ええ、このところ森の奥でガルが大量発生しているの。その中にはガルールもいるわ。私たちのいる泉の辺りも荒らされて来てるのよ」ちょっと憤慨気味のルルさま。でも、
「ガルールって何?」よくわからずに僕が聞く。
「ガルの突然変異みたいなやつね。大きさが倍以上の厄介な魔獣よ。そいつに統率されて暴れ回っているから他の魔獣が追い出されて、この村まで降りてきたんじゃないかと私は考えているの」一応知らせてあげたほうが良いかと思って、とルルさま。
「そうなの?じゃあ、ドーラ姉さん達に知らせた方がいいよね」ファノとリーンを見る。
「そうね、調査しに行くって言ってたし。行きましょ!」ファノが頷く。
「ルルちゃん、ありがとう」よしよしってルルの頭を撫でるリーン。ルルもまんざらじゃないみたい。可愛いとこあるんだな、と僕。
そして僕らは急いでギルドに向かった。
☆☆☆☆
ギルド入ると、人がいなかった。受付のお姉さんしかいない。
「あら、リーンちゃん?どうしたの?」
「あ、はい、あの・・・・」
始めて入る僕は、キョロキョロしていた。何となくわくわくする場所だ。ギルド長はリーンの父親なので、お姉さんとリーンは知り合いらしく。リーンがたどたどしくも説明している。
「え、妖精ですか?」や「ガルールが?!」などとお姉さんが驚いている。
一通り説明がおわると、お姉さんが奥の部屋に走って言った。
「ふぅ」と、リーンが疲れている。
「お疲れさん、信じてくれたみたいね」
などと話していると、奥の部屋からお姉さんと、リーンのお父さんが出てきた。
「先程の話だが、事実なんだね?」
リーンのお父さんが僕らはをじっと見る。
「うん」「はい」「ほ、本当だよ!お父さん」
正直恐かった。ギルド長は元傭兵で、実力もかなりもものらしい。その人に睨まれて僕は震えそうになった。
「うむ、嘘ではないようだな。もう少し詳しい情報が欲しい。その妖精に会わせて貰いたいのだが」
「よ、よんできます」僕は逃げ出すように走り出す。
「お呼びかしら?」
え?っと声がした方を見ようとして、、、こけた。
「ぷっ、ドジねぇ。」
ルルに笑われた。ムカついて飛びかかるが捕まえられない。
「くっそ〜」
「はいはい、ユーリちゃんそこまで!そんな事してる場合じゃないでしょ?」ファノが呆れながら止める。
「この妖精が先程の話の?」お姉さんが聞いてくる。
「そうよ。ルルって言うの。よろしく。」
「そうか、すまないが森の中の状況や魔物の位置など確認したい。ついて来てくれ」
そう言って、ギルド長がルルを連れて行く。
そして、僕らは危ないからと追い出されてしまった。なんだかなぁ、と3人でトボトボ帰るのだった。