第6話 いたずら
僕は今日の勉強と訓練に飽きてしまい、村の中を歩いていた。
なにかないかなぁ?
「おい、ユーリ」
ん?誰かに呼ばれて周りを見る。誰もいない。いたずらかな?
「こっちだ!マヌケ」
良く見ると畑の作物の中に頭と振られてる手が見えた。小さい女の子だ。
「フロン?」
近づいてみるとそこには、黒く日焼けした健康的すぎる男の子がいた。ユーリより上の7才だ。いたずらっ子っぽい、くりっとした目が特徴だ。
「やっぱりフロンか。お手伝い?」僕は畑に入って声をかけた。
「ばーか、手伝いなんてもんじゃないっての。家は農家だから子供でも仕事があんだよ」と言って農機具?みたいなものを見せてくれた。
「そうなんだ、たいへんだね」
すごいな。もうお仕事してるんだ。真っ黒だし。
「ちょうどいいや、これ食べてみな」そう言ってフロンは近くに生えた葉っぱを千切った。
そして差し出されたのは、葉っぱだけど見たことがない。とりあえず食べてみる。
にやっとフロンが笑った気がする。
「ん?んあっ?!ぺっぺっ」口に痛みが走り、慌てて吐き出す僕。
「ぷっ、あっはっはっは!おもしれー顔してんなぁ」慌てる僕を見てフロンはお腹を抱えて笑い転げた。
辛い、辛すぎるよ!
この葉っぱはガラシの葉といって香辛料にするものらしい。
「ほらよ、お茶でも飲んで落ち着けよ」一頻り笑い満足したのか、フロンはお茶を持ってきてくれた。
「ひ、ひどいよフロン!」うぅ、涙が、涙がぁ!
「そんなもんも知らないユーリがわりぃんだよ」ふふん、とフロンはそっぽをむいた。
「もう!フロンのばか」ぽかぽかなぐる僕。
「いてっいてっ悪かったからなぐるなよ。お詫びに取れたてのカンミをやるよ」
「ほんと?やったー」
カンミは甘くて美味しい!大好物だ。
「おこちゃまは扱い安くていいねぇ」呆れながらもフロンはカンミを採ってきてくれた。
「うるさいなぁ。それよりガラシの葉何枚かもらっていい?」良いこと思い付いちゃった!
「ん?いいけど、何すんだよ?」フロンはいぶかしんでいるみたい。
「秘密」教えないよーだ!
「ま、いいけどな。んじゃ仕事にもどるわ」
そう言って農機具?を手に奥に戻っていった。
「ん、じゃね」
そして帰宅後。。。
「姉さん、手伝うよ、このサラダ盛り付けるね。」
「あら、ありがとう」
にやっと笑った僕は、ガラシの葉を小さくちぎりユト姉さんのサラダの方に混ぜる。
「さて、戴きましょう」
姉さんが食べ始める。サラダに手をつける。
「ん?どうしたの?人の顔じっと見て」
しまった。怪しまれる。あわてて食べ始める。そして・・・
「ん?やっなにこれ?!」姉さんがあわてて水を飲む。
「あはははは、成功だ!」
って笑っているとシュッと頬っぺたに何かがかする。何かと思って周りをみると・・姉さんが水の魔法で氷を造り手の上に浮かべている。
「ユーリ、あなた何したのかな?」
笑顔が怖い。やりすぎたみたいだ。ど、どうしよう?!
「まっ待って!ちょっとしたイタズラだよ!」
逃げるしかない!!
あわてて逃げ出す。脇目もふらず家を飛び出した。
「待ちなさい!」
走る、走る、ひたすら走る。
「はぁ、はぁ、逃げきったか」
村の外れの花畑の近くまで来ていた。とりあえず花の上に大の字になって寝転ぶ。
「えいっ」
「痛っ?!」
何か声が聞こえと思ったら頭に痛みが走る。なに?
「えいっ!このっ!」
「いたっ!いたいよ!」
髪を引っ張られているみたいだ。
頭の上を見ると、僕の頭より少し小さい羽根つきの小人?がいた。
「まっ、まってよ!今起き上がるから」
とりあえず起き上がる。小人は飛びながら僕の顔の前に来る。
「ちょっと!あなたのせいで綺麗に咲いていたお花が潰れちゃったじゃない!」
とても怒っているらしい。すごく睨んでるよっ、どうしよう?!
「ご、ごめんなさい。えと、きみは?」
「ふん!野蛮な人間に名乗る名前なんてないわよ」プイッと腕を組みながらそっぽをむく小人さん。
「う、ごめんなさい。もうしないから」
「ほんとーでしょうね?」小人が凄む。
「ほ、本当だよ。」
僕は何度も頭を下げて謝った。
「ふん、今回だけは許してあげるわ。私は花の妖精よ。」どうよ?みたいに胸をはる小人改め妖精さん。
「妖精?!ほんとに?始めて見たよ。可愛いね」
僕が誉めまくっていたら妖精さんが慌てた。
「あ、当たり前じゃない!」顔が紅いみたい。かわいいなぁ!
「ねぇ、触ってもいい?」そう言って手を延ばすと逃げられた。
「な、なにすんのよ!とにかく二度としないでよね!」
と言い残しての妖精さんは飛んでいってしまった。
「行っちゃった。またね〜」
ふらふらした後、帰宅。
「やっと帰って来たわね、まったく」
呆れながらも家に入れてくれる姉さん。そして夕食になり・・・
「ユ、ユト姉さん、これは?」
「ん?なに?」
笑顔だ。しかも最高の。僕の前にはパンとガラシの葉のサラダ。。。
ごめんなさい、もうしません。反省ばかりの1日だった。