第5話 お勉強ねくすと
「ユーリ、そろそろ行くわよ」
「はーい」
ユト姉さんと一緒に家を出る。今日は村長の家で勉強会だ。自由参加ではあるけど、僕は毎回参加していた。
だって、お出かけだよ!行かないわけないよねぇ!
「「こんにちは〜」」姉さんと元気よく挨拶をして村長の家に入っていく。中には2人の男女がいた。
「やあ、きたね」
「こ、こんにちは」
村長の家に入るとレンとリーンの兄妹がいた。レンは12才で優しくて頭もいい、そして顔もいい、完璧だよね。リーンは7才、人見知りで、いつもおどおどしてる。二人は村長の孫で、たいてい一緒にいるみたい。
「こんにちは」 「おっす」
皆で雑談しているとファノとアランが来た。今日は少ないみたいだドーラ姉さんも仕事がないときは来てくれるんだけど今日は依頼があるみたい。
「さて、そろそろはじめるかの。リーンとファノ、あとユーリの3人はいつも通り魔法の訓練の続きじゃ。今日はルトンが来ておるから表に出て準備をしなさい」そう言って指示をするのは村長さんだ。50才くらいだけど、鍛え上げた体はまだ健在だ。魔法もうまいし。
「はーい」
僕は二人をつれて(連れられて?)早速庭に出て行く。
この世界の魔法は火、水、風、土など基本属性があり、それらは初級くらいなら誰もが使えると言われているが、その他の治癒や補助、光や闇などは特殊属性とされ才能がないと使えないらしい。
「皆、こんにちは」
庭に出るとルトンさんがいた。ルトンさんはルムスさんの弟で19才。ドーラ姉さんともよく傭兵として組んでいる人だ。ルムスさんみたいな強面じゃない優しい顔だからか子供に好かれてるんだ。
「よし、はじめるよ。まずは水からだね」
みんなそれぞれ水球をつくる。僕だけ歪だけど。
「おっ、前より安定してきたね。それが綺麗にできるようになったら、火について教えるよ。」ルトンさんが誉めてくれた。
「うん、がんばる」
とはいえ、リーンとファノは火と風の練習まで進んでいる。おいてけぼりで悔しいんだよ!
この勉強会での魔法の練習は、基本的に生活に役立つ程度のものであり、攻撃に使うためではないんだ。だから威力よりもコントロールを重視して教えているみたい。
ファノは花の水やり用に使えるシャワーみたいな出し方をしている。リーンはさらに難しい火と水をうまく使い水の温度を変えたりしている。
(ちくしょう!)
僕は水が出せてふよふよ動かすくらいしかできない。でも皆もコツを掴むまでは時間がかかったらしいから、根気良くやるしかないみたい。
「うーん、できないなぁ」あれこれ試して見るけど変わらない。なにがいけないんだろ?
「ははは、リーンもファノのセンスがあるからね。普通はなかなかできないものだよ」
ルトンさんに慰められる。苦笑いをしてファノとリーンを見ていたから本当みたいだけど...
「でも悔しいよ」
その後もファノに笑われたりしたがら訓練したけどだめだった。笑いすぎだよ!もうっ!
カンッ!カンッ!
(おっ、はじまったみたいだ。)
「ルトンさん、見に行ってもいい?」
僕はワクワクしながらルトンさんを見上げた。
「ん?いいよ、でも近づいちゃだめだよ」
「わかったよ」
そう言って走り出す。
裏手の方の庭にいくと、アランとレンが木剣で模擬戦をしていた。
アランは獣人で人間よりも少し成長が早くてでかいから、2才上のレンと体格はそんなに変わらない。
性格がでているのか、早さを活かして攻め立てるアランと、受け流したり避けながらカウンター狙いで待つレン。一見アラン兄が圧してるように見える。けど、
「うりゃあ」
アランがフェイントを入れて上段から降り下ろた。それをレンが読んでいたみたいに受け止めて、二人の動きがとまる。
「よっ」
拮抗したのは少しの間で、急にレンが力を抜いてアランのバランスを崩し、脇を抜けながら腹部に切りつけた。
「勝負あり」村長がそう言って終わりをつげた。
「ちくしょー、また負けた。」
アランが地団駄を踏んで悔しがった。
「はは、まあ剣ではまだ負けないよ。」
レンが汗を拭きながら笑った。
「そうじゃな、アランは弓術や短刀での狩りにおいてはみなより才能があるのだからそう悔しがる事もなかろうて」
村長もそう言ってアランの力を誉めた。
「そうだよ、僕なんてまだ水の魔法もうまく使えないんだから」
僕は皆に近づいて抗議した。あれだけ出来ればすごいよ!羨ましいよ!
「あ、ユーリ見てたのか。つーか、お前と比べたってなぐさめにもならねぇし」アランはやれやれとため息をついた。
「なんでだよ!それより僕にも剣を教えてよ!」
しつれいだよ!ひどいよ!
「そういえば、来たとき木剣もってたね。よし、じゃあ型からやってみるかい?」レンさん優しい!さいこーだよ!
「やったよ!!」
そうして、皆に教えて貰いながら素振りをする。
「剣の重みに振り回されておるのぉ。どれ手の位置を変えてバランスとれるようにしてみなさい」村長は僕の素振りを見てすぐにそう言った。
言われたとおりにすると、確かに振りやすくなった。
「振り切ったあとはキチンと止めること。無理やり振り回しても怪我したり、させたりしてしまうから」レンさんも一緒になって素振りをしながら教えてくれる。
「はい!」僕は皆に見られながら頑張る。
「うむ、少しは様になったの」
楽しいな!独りでやったときは上手くできなかったけど、やっぱり村長はすごいや。
勉強会もおわり、ユト姉さんと帰宅。
「ほら、見て!手にまめができてるよ!」
僕は自慢気に手のひらをみせる。
「あら、頑張ったのね。えらいえらい」
姉さんに頭を撫でられていい気分だ。えへへ、もっと強くなるぞぉ!