第2―11話 誘拐と
「ユーリっ!!」
気絶させられたユーリを見てアランは狼狽した。慌ててそちらに駆け出す。しかし、
「くそ!まちやがれ!!」
ユーリを囲んでいた騎士はユーリを担ぐと逃げるように退いていく。アランもそれを必死に追うが自分を囲んでいた騎士に邪魔された。
助けを求めてレンを見るが、レンも同じように足止めされていた。
「ちくしょう!どけっ!」
アランは全力で勝負を決めにいくが2対5では思うようにいかない。加えて先程倒した奴らより強かった。
暫く攻防が続いたが勝負はつかず、ユーリを担いだ3人が見えなくなった。
「くそが!」
アランは毒づいて攻め立てる。しかし、覆面たちはもう充分だと判断したのか牽制の魔法を放ちながら距離をとり、隙をつき退こうとする。
「ちくしょう!」
アランは追いかけるが相手も巧みに魔法を撃ち込んで牽制しながら退いていく。5人から連続で放たれる魔法の前に次第に距離はひらいていった。そして待機させていたのか馬にまたがり走り去ってしまった。
「もう追うのは無理だ...アラン」
レンはアランの肩を掴みとめた。
「諦めるのか?!俺は一人でも行くぞ!」
レンの腕を払ってアランが叫ぶ。そしてまた走り出そうとするアランをレンが腕を掴みとめる。
「まて!悔しいがもう追いつけない。一人でどうこうできる相手じゃなかっただろう。ここでお前を死なせる訳にはいかないんだ」
必死にとめるレン。その表情には悲壮感がうかがえた。しかし、そこにアランの拳が振るわれた。
「ぐっ」
アランの拳はレンの頬を見事にとらえてレンを引き剥がした。
「何でだ!ユーリが拐われたんだぞ!何でこんなことに...」
アランは泣いていた。そうとう悔しかったのか全身が力んで震えている。
「いっ、僕だってどうにかしたい!その気持ちは同じだよ。でもあの5人に勝てなかった。ユーリを囲んでいた奴らを含めて最低8人はいるんだ。まずはドーラさん達に報せて対策をとる方がいいだろう。なっ?」
アランの涙を見たのは初めてだったためレンは少し狼狽えた。しかしすぐにうち震えるアランの肩を抱きレンは説得しはじめた。
「....」
アランは何も答えない。
「なあアラン。拐って行ったんだから少なくとも生きてはいるはずだ。殺すのならあの場でそのまま殺されていただろう。どうにかするにも戦力がほしい。一度戻ろう。」
レンは辛抱強く説得していく。言葉を尽くしおわり、無言を貫くアランをじっと見て待つレン。
「....わかった」
暫くして渋々アランは了承し引き返しはじめたのだった。
☆☆☆☆
「ん、くっ」
僕は頭部の傷みと共に目覚めた。
(なんだ?どこだ??)
頭の回転が鈍い。朦朧としながら起き上がろうとした。しかしうまく体が動かない。ガタガタと地面が揺れる。移動してるのだろうか。
(小部屋のようだけど、どうしてだ?)
感覚がはっきりしないまま自分の体を見る。
足には鉄枷が嵌め込まれている。腹筋を使って起きあがる。腕がうまく使えない。なぜ?と思って背中を見ると後ろ手で鉄枷がつけられている。
(どうなってるんだ?)
訳もわからず頭がうまく回らないまま僕は朦朧としながらまた気を失った...
☆☆☆☆
「本当に良かったんですかい?」
覆面をつける騎士が馬上から隣を走る壮年の男に問いかけた。
「ああ、遠目で見ていたがあいつは使える。あいつ一人で充分おつりがくるさ」
表情はわからないが声からは機嫌の良さがうかがえた。
「まあ確かに。報告にあった通りの治癒魔法でしたね。あんときは度肝を抜かれましたし」
覆面の男も同意して頷く。
「しかし、ラークを裏切った事のは不味かったのでは?」
もう一人の覆面が不安そうに問いかける。
「ふん、勝とうが負けようがラークはおしまいさ。このまま帝国に戻ってあいつで一稼ぎした方がいいだろうな、高く売れるぜ、くくく」
覆面は馬鹿にするように笑いいい放ち最後は下品に笑った。
「そうですね、急ぎましょう」その言葉と共に男たちは馬のスピードをあげた。
一台の馬車と乗馬をする10人前後の集団はそのまま勢いにのり走り去って行った。
☆☆☆☆
”ジュッ”
という音と共に腕に激痛が走り目覚めた。何かの焼ける臭いがした。
「あぁっ、ぐっ!」
腕を庇うように動くつもりが鉄枷で思うように動けずに座らされていたであろう木箱とともに僕は倒れた。
「おう、目が覚めたか?」
無精髭を生やした壮年の男が声をかけてきた。
「なにを?!」
倒れたまま動けずに見上げるように男を見る。焼きごてのような物をもち下品ににやけている。
激しい傷みが消えない左腕を見ると焼き痕がつけられて火傷になっている。何かのマークみたいに形どられている。
「少しの間痛いだろう。まあ気にせず少し寝てろ。」
そう言うと男は僕を殴りつけた。
「ぐっ、う」
枷をつけられた僕に防げるわけもなく殴られる。そのまままた気を失った.....
.....どれくらいたったのかもわからない。気がついてはいるが動けないからどうにもならない。
(どうなるんだ?どこに向かっている??)
すでに意識はハッキリとしているし、身体にも力が入るには入る。ただ空腹だった。あれから何も口にしてない。
ガタガタと揺れる地面は部屋ではなく馬車の中だとわかった。
(僕はどうなるんだろう....)
枷をどうにかしようとするが無理だった。足掻けば足掻くほど体力を奪われる。その事を理解してからは呆けたように天井を見ているばかりだった。
(みんなどうしてるかな....ユト姉さん、ドーラ姉さん...うぅっ)
暫く流していなかった涙を流し丸くなるようにして僕は眠りについた......




