第2―8話 救援と
「くっ、気を付けろ!」
ホークの声が響きわたる。周囲には騎士たちによる魔法が乱舞している。
「ちっ、魔法隊が混ざってるのか?それに見たことない奴らもいるな」
今までの襲撃と違い、ユーリたちは苦戦していた。慢心してとかではなく、ルムスたちが救援に向かいレイドを離れている事に加えて、相手の力がかなり上がっていたからだ。
魔法を主体で使う者や、今までの騎士の動きとは違う戦い方をする者が混ざっている。
「ぐぁ」 「くそっ!」
傭兵たちが一人の騎士が放つ攻撃をうけて纏めて飛ばされた。
その騎士は一回り大きな体で、通常の1.5倍のサイズの戟を手にしている。その戟が倒れた傭兵に振るわれる。
「ちくしょっ」
慌てて回避しようとするが間に合わない。戟の刃が迫り、傭兵が死を覚悟したその時、
キンっ
という音とともに戟が向きを代えて払われた。
「へっ!力比べなら負けねぇぜ!」そこには2本の長剣を手にする傭兵がいた。
「なっ!?」
会心の一撃を力任せてに払われた事に騎士は驚き動きを止めた。探るようにその傭兵を見て戟を構え直す。
「こいつは俺に譲れ!他を頼むわ」
シドは長剣2本を構えて騎士を牽制して倒れた傭兵や周りの傭兵に言った。
「あ、ああ、助かった。任せる!」
倒れていた傭兵は急いで立ち上がりその場を離れる。その他の傭兵も自分達では敵わないと踏み離れていく。
「へへ、楽しませてくれよ」シドは不敵に笑い騎士に向かう。戦場に相応しくない嬉々とした顔でシドは騎士に対峙した。
「はっ、死ね!」
それに反応する事もなく騎士はシドに向けて戟を横凪ぎに振るう。先程と違って、両手で戟をもっている。全力のようだ。
「ぐっ?!たまらんな」
シドは長剣2本で受け止めるが、止めるのが精一杯だった。遠心力と重量、それが加わるとかなりの威力だ。
少しの間拮抗した後騎士が戟をひいて素早く突きを放つ。
「うおっ」
ギリギリでかわしたが頬が切れて血が流れる。
(力じゃまけないが、リーチが違いすぎるな。そんでもって意外と早い。くそがっ)
騎士は突きを放ち続けてシドを追い込む。シドは何とか剣でいなしたりかわしたりしているが、騎士の優位は明らかだった。
シドが戟を弾き距離を詰めようと動いた。そこに脚を狙うような横凪ぎがくる。たまらずシドは上に飛んでかわす。しかしそれを読んでいたのか狙っていたのか、騎士は戟を返して空中のシドに叩き込む。急いで剣で防御するが吹き飛ばされる。
「があっ」
ゴロゴロと数メートル飛ばされるシド。すぐに立ち上がり体勢を整えようとするが、追うように戟がくる。
(くそっ!一か八か)
戟を力任せてに弾いて前に出るシド。それを見て邪魔だとばかりに横凪ぎがくる。
「ぐっ!」
シドがくぐもった声をあげる。
「なっ?!」
騎士が驚き慌てて戟を引くがすでに遅かった。シドは戟をかわす事はせずにひたすら進み、横凪ぎの戟を腕で受けとめていた。飛び込む事で刃の部分ではなく棒の部分が来るようにしてそのまま上腕にくらいながらも踏ん張って懐に飛び込んだ。
「へへっ」
苦痛に顔を歪めながらも長剣を振るい騎士の両手を切り落とした。
「ぎゃあ?!」
騎士は痛みにもがき激痛から逃れるようにのたうち回る。
「悪いな、俺の勝ちだわ」
そう言って長剣をもがく騎士に突き刺す。傭兵は血を流して絶命した。
「かあっ、俺もまだまだか」
剣を引き抜き独りごちる。腕の骨にヒビが入ったかもな、と考えていると、
「シド!」
ノインが近づき治癒魔法をかける。それにより腕に力が戻り傷みもひいた。
「危なかったね!死んじゃダメだよ!」
そう言って離れていった。まだまだ戦いは続いている。ラドネスもカインも健在だ。皆必死に戦っている。
「おし、次行くか!」
また不敵な笑みをたたえ強敵を求めてシドは駆け出した。
☆☆☆☆
「レン!引け!」
掛け声に応じてレンが飛び退く。同時に矢が飛来して騎士の眉間にささり絶命させる。
「よし!次だ!」
アランの視線は次の標的に向いている。そちらでは派手に火炎を打ち出す騎士の姿があった。
「はっ!」
レンが牽制のために氷柱を打ち出す。相手も気づいたのか火炎で相殺させた。
レンはアランの位置を確認して素早く移動しながら魔法を撃ち込む。相手も剥きなって応戦する。
「がっ?!」
騎士の胸から突然矢が突き出す。レンが囮となりアランが隙を突き矢でいる。この連係ですでに多くの魔法隊らしき騎士を討ち取っていた。
「よし!つっ、おっと」
次に行こうとしたアランの傍らを氷柱が襲う。
「よくも仲間をっ!!」
騎士が次々と魔法を放つ。どうやら魔法隊に目の敵にされたようだ。
(まあさすがに目立つわな)
レンに目を向けるとレンも標的にされたようだ。一人でやるしかない。
「へっ、弓だけじゃないって事を教えてやるさ」
そう言って弓を背に戻し、ナイフを両手に持つアラン。
そこに3方向から魔法が襲う。アランは腰を落とし素早く動きまわりかわしていく。後ろに目があるかのように見事にかわしていくアラン。そのしなやかさは獣人ならではの動きだった。
シュッ
そんな音とともにアランの腕が消える。
「ぎゃ?!」
アランに向けて手を翳していた一人が手を押さえて喚く。その手の平にはナイフが突き刺さっている。
「はんっ、ハンターなめんな!獣の早さをしらねぇのか?」
そう言いながらも魔法をかわすために動きまわって新たなナイフを投げる。
そのナイフは見事に相手の手に突き刺さる。そしてスピードに乗ったまま一人に肉薄してそのまま首をかき切る。
それでも動きをとめる事なく旋回してナイフをなげる。それはナイフの刺さった手の逆の手を翳しながら魔法を放つ騎士の手に刺さり戦闘不能にした。
(残り一人か)
残りの敵に対して直進するアラン。その顔は不敵に笑っている。それを見て騎士は憤ったのか、魔法を連発してきた。しかし、アランはそれを最小限の動きでかわして直進する。
「ばかな?!」
近距離で撃った炎弾さえもかわされ狼狽する騎士。その言葉を最後に首が宙を舞った。
「ふぅ、最後はなかなかスリルがあったな」
そう言ってナイフをしまい弓を手に戻した。
レンを見るとあちらも終わっていた。
「よし!次だ、行くぞ!」




