第4話 修行してみるつもり
「よし!今日から修行をするぞ!」
午前のノルマを終えて、僕はドーラ姉さんに買ってもらった木剣を手に張り切って庭に出る。
「よっと、えいっ、とりゃ」
両手で必死に剣をふるうが、結構重くて思うようにいかない。うーん、どうしたら....そうだ!
「確かこんな感じだったな」
昨日のドーラ姉さんの動きを思いだし、避けながら切りつける動きを真似て・・・こけた。
「いてててっ」ぐすっ、うぅ。ちょっと痛いし。
「あはは、何やってるの、ユーリちゃん」
「あ、ファノ!笑うなよ。強くなるための修行をしてるんだ。邪魔しないで」
笑い声のする方を見ると女の子がお腹を抱えて笑い転げていた。ムカつくし!くそっ!
ファノは近所にすんでるひとつ上のお姉さんだ。
「あははは、ごめんごめん。..くくっ...お母さんがお菓子作ったから呼びにきたんだけどね」笑いを堪えながら教えてくれた。
「え!ほんと!?」
笑われてムカついていたが、一瞬でそんなことは忘れた僕。
「あれ?修行はどうなったのよ?」ファノが呆れている。
「後でちゃんとやるよ」
慌てて僕は叫んだ。僕は強くなる!でもあとまわしだね。
「ふふ、てきとーねぇ。ほんとにおこちゃまなんだから」
ファノはバカにするように僕を見ながら頭を撫でてきた。
「そんなにかわらないじゃんよ」
僕はむきになって反論したけど、身長はファノの方が大きい。くそっ
ファノの家は宿屋で食事も摂れる。そしてたまに試作品ができると食べさせてくれるのだ。おばさんのお菓子は絶品だ。今日はなにかな?ご機嫌で宿に向かうのだった。
そんなこんなで、おばさんとファノとお菓子とミルクに舌鼓をうつ。今日のは柔らかくて甘いチーズに何かの小さな実が入っているものだった。どうやって作ったんだろう?そんなことを思っていると、
「ユーリちゃん、その剣どうしたの?」ファノが僕の木剣を見て聞いてきた。おばさんも興味があるのか僕の方を見ていた。
「ふんとへ〜、どーわねひはんひ−」食べながら説明する僕。
「ふふふ、ちゃんと食べてからでいいのよ」
おばさんに笑われた。
「きたないなぁ、もう」
ファノが怒り、半目で睨んできた。
ごめんなさい・・・ごっくん。満足だ。
「おばさん!すごくおいしかった!ごちそうさま」ほんとに大満足だよ!作り方教えてもらおう!
「ふふ、お粗末さまでした」おばさんも嬉しそうに笑った。
「それでユーリちゃん、どこで木剣なんて手に入れてきたの?」
一段落して、ファノがまた聞いてきた。そんなに気になるのかな?
「あ、うん。ドーラ姉さんに買ってもらったんだよ!いいでしょ?」
僕は自慢するようにファノに見せつけた。
「ふーん、傭兵かハンターにでもなるの?」
思ってたより反応が薄かった。僕はイジケテしまうぞ?
「うーん、わかんない。でもかっこいいでしょ?」と僕は剣を構えてポーズをとる。決まった!
「ぷぷっ、さっき転んでなかった?」思い出したのかファノがまた笑いだした。
「う、うるさいな!今日からなんだからしかたないでしょ。すぐにうまくなるよ!!」見てろよ!!ちくしょお
「あっそ、まあ気長に待つことにするわ」
ファノは馬鹿にしたように笑った。ちくしょう、見返してやる!ファノのバカ!
「頑張ってね、ユーリちゃん」
おばさんはそう言って頭を撫でてくれた。
おばさんは優しいなぁ、ありがとう。
おばさんに慰められて機嫌がよくなりファノと一緒に遊んだ。まあおままごとに付き合わされただけだけどさ。
「おかえり、あれ?ユーリ、あなた剣はどうしたの?」
「あ」
ファノん家にわすれた。急いで取りに行くために玄関から飛び出す。
「あ」 仁王立ちしたお姉さまが・・・
「あんた、いい度胸してんじゃないか!自分でせがんで買ってもらったもんを、昨日の今日で忘れるとわねぇ」
「な、なんでドーラ姉さんが」
「そこで今ファノちゃんに会ってね。さて、どうしてやろーかね」ドーラ姉さんの額にはむかっ!とした時にでるあれが....
やばいぞ!なんとか言い訳を・・・
「ファノが貸してくれってい」
「嘘つくんじゃねえ!」
一瞬で遮られてしまい、あえなく轟沈さ。
その後は恐ろしくて思い出したくない。
物は大事にしようと固く決意し、そして、
あれ?そういや素振り10回もしてないぞ・・・と寝る前に気づくのだった。