第26話 春
雪が溶けて春が来る。この時期は、獣たちにとっては繁殖期になる。この時期にしか生まれないと言う訳ではないが、この時期が一番多いらしい。
それに合わせるように進化したのかはわからないが、魔獣たちにとっても繁殖期となっていた。
それにより、ハンターや傭兵は、この時期には討伐依頼が殺到する。冬に稼げないので、皆こぞって参加する。
春になり10才になったユーリも然り、討伐真っ只中であった。
「姉さん、そっちに2匹」
ユーリは、ブフ2匹とガルを2匹を相手にしながら叫ぶ。
「あいよ!」
と返事をしながらもドーラはすでに、ガルール2匹を相手にしている。その周りにはすでに10匹くらいの屍がある。
ユーリは鎖鎌を投げつける。それは的確にブフを捉え絶命させる。それを確認し鎌を引き抜き引き戻す。その隙をつき残りの3匹が連携しながら攻撃してくる。鎌の逆の鎖には6角柱の鉄の塊がついている。それを使い応戦する。1匹目をかわしながら鉄塊をぶつけて怯ませる。そうしている間にも2匹目が噛みつこうと突っ込んできた。ユーリはそれに手を向け、直前で魔力を解放して爆発させて葬る。そして目前にきていた3匹目の攻撃を何とかかわし、鎌を回しながら投げつける、つもりだったが、後ろから衝撃を受けて前のめりに突き飛ばされる。
「がぁ!」
「ばかっ!さっさと起きろ!」ドーラの叫び声で、はっ!と立ち上がる。2匹の追撃は目前で、慌てて横に転がり距離をとる。
が、それほどの距離をとれるわけがない。ユーリは手をつきながら起き上がり、自分と2匹の間を線で繋ぎ、魔力を送り、爆発させる。まだとっさではうまく使いきれないが、吹き飛ばすくらいはできた。そして鎌を使い何とか2匹を葬る。
「はあ、まだまだね、これくらいの集団相手に鎌は有利なはずだけど力自体が足りないね」ドーラはすでに他の魔獣を倒し終えて、観戦していたようだ。
「うん。早く大きくなりたいんだけど、はあ」
「そればかりはどうしようもないな、諦めろ」
そう言って、回収し始めたのでユーリもそれにならう。
そして、そのままギルドへ。
「ナンナさん、これお願いします。」証明部位と換金部位を渡す。
「お疲れさま!えーと、22匹分ですか。やはり...」ナンナさんが難しい顔をしている。
「どうかしたんですか?」と僕。
「ええ、なんだか例年より魔獣の数もそうなんだけど、変異種の数も多いみたいなんですよね」おかげで私まで忙しくって、とため息をつく。
「ははは、そうなんですね。」と一応笑っておいた。
「ええ、でも一応気をつけて下さいね。」
「うん」
今日はもう依頼を終える事にして、ルミニスを呼び出す。
「お疲れさま、ユーリ」
とルミニスが出現する。
「うん、じゃあ行こうか」
そう言って、向かったのはファノの宿。
「親父さん!採ってきたよ」と、僕は採取かごを置く。
「お、ユーリ。おつかれさん」親父さんがこちらに来て中身を見ていく。討伐のついでに森でとってきたものだ。
「おお、だけのこ、ごこみ、ふぎのとう、ふんふんなかなかだ」色々と手に取りながら親父さんが頷いていた。
「ありがとな!よし.....ユーリ、これを焼いてみな」
親父さんは、だけのこを洗って4等分にして渡してきた。
「うん」
そう言って焼き台に持っていき焼く。
「うわぁ」
すごく良い香りがしてくる。
「良いにおいだろ。.....うん、そろそろいいな」
焼きながら串でかたさを確認して納得したのか、焼き台からおろし、一口大に切っていく。
「ほれ、食ってみろ」
皿において僕を促す。あちっ、あちっとつまんで食べる。
「おいしいよ!!!」ふわっと良い香りが口に拡がり、しゃきしゃきした歯応えも心地良い。味も申し分ない。
「そうだろう、そうだろう」と、満足そうに頷き、だけのこは取れたてが一番うまい!時間がたつとどんどん硬くなってしまって香りも薄くなるんだ。と教えてくれた。
「そうなんだ、硬くなったら食べれないの?」気になったので聞いてみた。
「いや、茹でると柔らかくなるから、食べられる。時間がたったやつは灰汁がすごいけどな。あと、香りも薄くなる」
と教えてくれた。
「へえ、すごいな!有り難う、親父さん」
その後も、夕飯の準備を手伝いながら、色々教えてもらった。
お手伝いの手間賃で貰った、ボタルイカという海産物を手に帰宅。ボタルイカも春先に出回る者らしい。他の村から仕入れたものらしく、貴重品らしい。
「ただいま!ユト姉さん、これファノの親父さんにもらったんだけど、ちょっと台所使ってもいいかな?」
「おかえり、ユーリ。いいけど気をつけてね」
早速、親父さんに教わった通りに、ごこみをさっと茹でて、ザルに上げて水気を抜く。そして、薄い鍋にバターを入れて加熱。バターが溶けきる前にボタルイカを入れて炒める。ボタルイカに日が通る少し前に、茹でておいたごこみを鍋に入れて、ボタルイカと絡めて、塩と、ベルさんから買った胡椒を軽くふって絡める。
「できた。」
そして、姉さんが作っていた料理と並べる。
「良いにおいね、さあ、食べましょう」
そう言って食べ始める。
「じゃあ、ユーリのを.......うまい!」ドーラ姉さんだ。
「どれどれ.....ほんと!おいしい!」ユト姉さんも驚いている。
「ほんと?よかった。」ユーリも食べる。バターの良いにおいとボタルイカの香ばしい薫りがすごく合う。ごこみも少し苦味があるが、相性がいいみたい。
「さすが、貴重品のことはあるなぁ」
「貴重品なんだ、確かに見たことないけど」とユト姉さん。
「はぁ、酒とあうなぁ」とうっとりしてしまったドーラ姉さん。
親父さんがいうには、ニシキという国の醤油というものがあればもっとうまいらしい。仕入れるにはかなりのお金がかかるらしく宿にも置いてないらしい。
いつか旅にでたら行って食べてみたいなぁ、なんて思うユーリだった。




