第2話 勉強と狩り?
「さて、洗い物も終わったしお勉強しましょう」
ユト姉さんがやる気です。といっても僕に文字や計算を叩きこむためのお勉強なんだけど・・難しいことはまだわかんないし。
「うん!わかった」
僕は準備を整えて椅子にすわった。
午前中はいつもお勉強。まあ楽しいからいいんだけど。
どうやら僕は頭がいい方らしい。姉さんはいつも褒めてくれるし、村長のイザールさんも覚えるのが早いと驚いてたし。えへへ。
この世界には文字を書けない人や、計算のできない人も結構いるらしいけど、できないと色々と苦労するらしいからがんばる。できないと余計なお金がかかるみたいです。(贅沢は敵よ!)とユト姉さんが教えてくれた。
ユト姉さんはドーラ姉さんと一緒に村長さんに教えてもらったらしい。
2時間ほど書き取りなんかをしておわる。
その後、昼食を食べ終わった後、獣人のお兄さんことアラン(10才)が僕を呼びにきた。
「おじゃまするぜぇ。おっ、ユト、ユーリはいるか?」アラン兄は勝手に扉を開けて入ってきた。いつもの事だから僕は気にしなかった。
この村では犯罪なんて滅多におきないらしい。村自体が豊かで、皆不満なく生活してるからだとドーラ姉さんが以前教えてくれた。
「アラン、どうしたのよ?」僕とは反対にユト姉さんは何か言いたそうな顔をしていたが諦めたみたいだ。
「昨日、遊ぶ約束したから迎えにきたんだよ」
ユト姉さんににらまれて若干焦りながらアランが言った。
「アラン兄!ご飯もたべたし、いつでもいけるよ」
ふふふ、予定通りだよ。準備はすでに出来ているのさ。ふふん!
「おし!じゃあ行こうぜ」
アランも早くしろとばかりに出口に向かう。
僕たちは姉さんに止められないようにそそくさと飛び出した。捕まったらうるさいし、ごめんね、姉さん。
「いってきま〜す。」
「あっこら!アラン、危ないことさせないでよ?」ユト姉さんは慌てて追いかけてきたが、もう遅いよ!
「はは、んじゃな」
二人で走りさる。ユト姉さんはいつも心配しすぎなんだよ、もう。
「はぁ、もう大丈夫だね。今日はなにするの?」
ワクワクしながら僕は聞く。アランは色んな遊びを教えてくれるんだ。同い年の子は残念ながらいない。年が近い友達もいるけど女ばかりなんだ。だから僕はいつもアランに遊んでもらってる。
「今日は村の裏手の森でガフト虫とりにいくぞ」
ニヤリとアランは笑い森を指差した。
「え、森にいくの?大丈夫かな?」森の奥には魔獣がいるんだ。それを考えていた僕はぶるっと震えた。
「ああ、昨日親父と狩りに言った帰りにズイガの実を入り口近くに潰して置いといたんだ」大丈夫、入口だから、とアラン兄さん。
「う、うん。でもズイガの実が関係あるの?」
ズイガの実ってあの外に緑と黒の皮がある赤い実の事だよね?
「ああ、蜜に群がるからな、よしいくぜ!」そう言って拳を突きだし走り出すアラン兄。
「うん!いくぜ〜!!」僕も慌てて拳を突きだし走り出した。
暫く走って森の入り口に着く。まだ何回かしか来たことがない。わくわくしながら森を進む。
「おっ、あそこだ!」
アランはズイガの実を見つけて指差した。
「はぁ、はぁ、いるかな?」僕は走った後の呼吸を整えながらズイガの実に近づいていく。いるかな?いるかな?
近づいていくとズイガの実はぱっくりと割れていた。その中をゆっくり覗きこんでいく僕たち。そして、
「いたぞ!結構でかいな。しかも2匹。」
中を覗き見ると、ズイガの赤い果実の所にガフト虫がへばりついていた。
「すごいや!こんな風に捕まえるんだね!アラン兄」
こんな簡単にいくんだな、すごいや!
「ああ、狩りの遊び版みたいなもんだな。好物を罠にしたりな!俺も親父から色々教わってるからな他にもまた教えてやるよ」
アラン兄はニカッと笑ってガフト虫の掴みかたを教えてくれた。
「ほんとに?!やったね」
僕は教わった通りに、おそるおそるだったけど丁寧に籠に捕獲する。ウネウネと脚を動かしているが持ち方を教われば怖くない。
「よし!帰るか」
あんまり森に近づくと危ないからな、とアラン兄。
「うん」
僕はガフト虫を大事に抱えて満足顔だ。ふふふっ
「ん?あれは....」
僕が歩き出そうとしたら急にアラン兄が森を睨んだ。獣人の視力はかなりいいらしいから何かを見つけたのだろう。
「ど、どうしたの?」
魔獣?魔獣なの?ぶるりと震える僕。
「ああ、ピョンだな。」
ピョンって何?やっぱり魔獣?
「は、早く帰ろう」
アラン兄の服を掴む僕。
「まあ待て、着いてこい」そう言って歩き出すアラン兄。
「え?やめようよ」
「大丈夫だ。あれなら俺でも狩れる」
姿勢を低くして進んでいってしまう。
一人になりたくないし仕方ないので恐る恐る着いていく。
「よし、ユーリ。乗れ!」そう言って屈むアラン兄。多分おんぶだろうけどなんで?と思いながらおぶさる。
そのままアラン兄は飛び上がって木の枝に掴まり、そのまま登った。
(すごい力持ちだな)
ちょっと驚いたが木にしっかりつかまる。
「あれだ、見えるだろ。ちょっと行ってくるからしっかり木に掴まってろよ」
そう言ってアラン兄は飛び降りて言った。
アラン兄の先には僕と同じくらいの生き物。多分魔獣だろう。アラン兄の存在に気づいたのかピョンピョン飛びはねながらアラン兄に近づいていく。
アラン兄は機敏な動きでピョンが飛びかかるのを避けていた。しかし、追い付かれてしまった。
(あぶないよ!?)
僕は焦った。ピョンの体当たりがアラン兄にあたる!と思った瞬間アラン兄が飛び上がる。アラン兄の脚力はピョンより上だったらしく上手くよけた。
避けられたピョンはそのままの勢いでアラン兄の後ろに隠れていた木に激突した。
「おらっ」
木に頭をぶつけたピョンが踞ったところにアランがナイフを降り下ろしながら降りてきた。
「プキャ?!」
ナイフは見事にピョンの首に刺さりピョンは倒れた。
(すごい!)
アランはピョンを背負いながら戻ってきた。
僕は手伝って貰いながら木からおりた。
「すごいよ、アラン兄!」僕は興奮しながら叫ぶ。
「へへ、まあな」
鼻の下を掻きながらアラン兄が胸をはる。改めてアラン兄を尊敬した。その後もなかなか興奮が覚めなかった。
興奮が覚めない僕を見て森に行ったことがバレて、ユト姉さんに怒られたけど気にしないさ!
その後、虫闘させて盛り上がっていたら「かわいそうでしょ!」と叱られ、ポカッと殴られてちょっと泣いちゃったよ。
でも楽しかったよ。アラン兄ありがとう。