第16話 不穏?
「それにしても、レイドの子供は皆お前さんみたいに強いのか?」村へ帰る途中、リーダーのシドさんが聞いてくる。犬の獣人?で双剣というよりは長剣の二刀流使いだ。
「い、いえ。僕は傭兵ですから、同年代では戦い慣れてる方だとは思いますが。」と僕。
「そりゃそうか。お前みたいなのばっかりだったらどうしようかと思ったぜ。」
「鎖鎌?狩りに使うものなのはわかるが、あんな使い方があるのだな。」無表情でこちらを見ているのはラドネスさん、肌が浅黒くて耳が尖っている。
「はい、まだまだ使いなれていませんが、僕は魔法がいまいちなので、これでカバーしているんです。ところでその耳は?」
「ん?ああ、私はダークエルフだ。あった事がなかったか」
「ダークエルフ?初めて会いました。レイドでは人間と獣人、あとへんてこな花の妖精はいますがダークエルフという種族も初めてです」
「そうか、まあ人里に降りて来ている者は少いからな」
ラドネスさん曰く、ダークエルフは深い森の中に集落を作り住んでいて、他の種族を嫌悪している者も多いらしい。しかし、ある地方では浅黒い肌と赤い目が不気味だと言って迫害を受ける事もあるらしく、排他的なのも解らなくもない、何て言っていた。
「そうなんですね、でも僕はラドネスさんは綺麗だと思いますけど」
「そ、そうか、ありがとう」ラドネスさんは驚いたように目を見開き僕を見つめて、ふっと笑顔になる。今まで無表情だったラドネスさんの笑顔はやっぱり綺麗でドキドキしてしまった。
「おっ赤くなってやがる。大人びてやがるとおもったが、ませガキだったか」シドさんがからかいだすと、
「ホントだ!真っ赤だね。おませさんだ〜」ノインもからかい始める。
「そ、そんなんじゃないよ!もう!ひどいよ!」
そんな感じでからかわれながらも村に着き、シドたちは商人風の依頼主と別れギルドに向かう。僕もハリエの針を換金するため一緒にいく。
「ナンナさん、これお願いします」
換金してもらいながらグラードもどきについて聞いてみる。
「またですか。このところ新種というか突然変異種の報告が増えて来てますね。今のところ原因は不明ですし、数自体も少なく被害はあまりないのですが、どうにかしたいですね。どうぞ」そう言って報酬を差し出す。
「そうなんですね、何かあったらまた報告します。」報酬を受け取りギルドを出る。とシドさん達が待っていたようだ。
「どっか食事できるとこはないか?できれば宿も」そう聞いてきたのでファノの家の宿を紹介する。
「いらっしゃいませ。あれ?なんだユーリちゃんか。どうしたの?」
「うん、今日知り合った傭兵の人たちなんだけど、宿を探してたから。後食事も。」
「え?お客さん?これは失礼しました。四名様ですね、お部屋はどのようにしますか?」ファノが急に猫をかぶりだす。ぷっと僕が笑うと睨まれる。
「畏まりました。ご案内しますね。はい!ユーリ」と言って僕に鍵を渡す。
「え?」
「ほら!さっさといく!お客さんが待ってるじゃないの!」お尻を叩かれる。
な、なんで?と思いながら、部屋へ案内する僕。
「嫁さんか?尻にしかれてんな」なんてシドに弄られる。
「やめて下さいよ!あんな暴力女はごめんです」とりあえず反論しておく。
「こちらとそちらです」
「ありがとよ」
案内を終えて受付にもどる。
「ファノ!何で僕が手伝わなきゃいけないんだよ!」強気で抗議する僕。
「いいじゃない!この前お母さんのお菓子あげたでしょ?それより...」
パキッパキッとファノが指を鳴らして近づいてくる。
「な、なに?」ビビりながら後退する僕。
「誰が暴力女なのよー!!」そう叫びながらどでかい氷塊を僕に投げつける。
吹き飛ばされる僕。壁にぶつかり倒れる。
降りてきたシドの「やっぱりこの村のガキは侮れねぇな」なんて声が聞こえて僕は気を失ったのだった。