第15話 平原にて
「おりゃ!この!」
僕は今、村の近くの平原でハリエを相手に鎖鎌の鍛練をしている。ハリエは尻尾に針がついていて刺されば麻痺する。だが動きは遅く、今の僕でも難なくかわせる。
「いけ!くそ!」
狙いを定めて鎌を投げるが外れる。が鎌に魔力を送り爆発させる。ドカーン!それによりハリエがぶっ飛ぶ。
鎌を引き戻し群がってくるハリエに向け回転しながら鎌を投げつけて横凪ぎにする。が3匹目で勢いが無くなり止まってしまった。
「くそっ!僕の力じゃ一気に倒すのは無理か。・・・待てよ、あれなら」
そう言って同じように振り回す。鎖鎌に風の魔力を纏わせる。遠心力がまして今度はさっきよりうまく行く。
「うん。まだまだだな。でも改善の余地もまだあるし、もっと色々試してみよう。」
ハリエを倒し終わり休憩する。
「・・・そ。・・・・・・ちだ!・・・・け!」
どこからか罵声のような声がする。何処だろうと思い見回す。っ!馬車か!襲われているみたいだ。急いで向かう。
グラード?違うな、何だろう。見た目はグラードみたいだけど、グラは紺色の毛たが、あれは赤だ。それが5匹。傭兵らしき人が4人いる。二人が馬に乗りグラードもどきを撹乱している。残りは馬車と御者を守りながら弓で牽制している。
「強いな。僕なんていらないかも」 そう思いながらも急ぐ。そこで急にグラードもどきに動きがある。
「なっ!炎を吐いた?」魔獣が炎を吐くなんて初めて見た。撹乱していた二人の傭兵は何とかかわしていたが、好機とみたのか3匹のもどきが馬車へ向かう。護衛の二人が迎撃するがカバーしきれず1匹が馬に向かい襲いかかる。
「くそ!鎖鎌でも届かない!....一か八かだ!」
そう言ってユーリは地面に手をつく。そして馬とグラードもどきの間を目標に手から鎖がのびているのをイメージして、魔力をこれでもかと送る。
鎖のイメージの上を爆発が連続して起こりグラードもどきを吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ」なんとかなった。そのまま馬車の近くに走る。
「はぁ、て、手伝います」そう言って鎖鎌を構える。
「すまん、助かる。そいつをどうにかできるか?」吹き飛ばしたグラードもどきを差しリーダー格の傭兵が聞く。
「はい、何とかして見せます!」頷く僕。
「頼んだ。カイン、お前はこっちに加われ!ノイン、お前はそいつと馬車を守れ!」 「「はい」」
15才くらいの少年が大剣を抜き、馬車から離れていく。
「どうしましょう?」ノインと呼ばれたさっきの少年と似た少女が聞いてくる。
「あ、はい。えと、弓で牽制してくれれば助かるけど」
「わかりました。でもそんなに上手じゃないですよ?」ノインは不安げに言ってくる。
「はい、できればでいいですよ。馬車をお願いします。」そう言って駆け出す。
先ずは鎖鎌を振り回し牽制しながら、グラードもどきを馬車から遠ざける。
炎がやっかいだ。剣だけだったらかなり厳しかったかもしれない。
グラードもどきが炎を吐くがそれに向けて鎌を投げ、氷の魔力を叩きつけて相殺する。
「早いな!くっ!」スピードはあっちが上。どうする。牽制し距離をとるが反撃がくる。ユーリは鎌をなげ相手の前で爆発させる。グラードもどきが吹き飛び、追撃する。
「いけっ!」鎌が背に刺さる。それに合わせて爆炎を起こす。が吹き飛びはしたが効き目が薄いようだ。火に耐性があるのか?
必殺のあてが外れ、隙ができてしまう。そこへグラードもどきが襲う。かわせない?!防御体勢をとる。
シュッ!
後から何かが来てグラードもどきが仰け反る。よく見ると一本の矢がグラードもどきの目に突き刺さっていた。
「どこが上手じゃないんだ?」
そう呟き鎌を投げる。鎌は頭に刺さり、そこへ魔力を流して凍らせる。頭をやられたグラードもどきはそのまま横倒しになり動かなくなる。
「ふう。助かったよ」そう言って振り向くと、ノインがブイッて感じでピースしていた。どうやら残りも終わっていたようで、他の3人も戻ってくる所みたいだ。
「それにしてもアイツはなんだったんだ?見たことないし、炎は吐くし」
そんな事を考えていると皆戻って来たようだ。
「いや、助かったわ。ありがとな。」リーダー格の傭兵が頭をさげる。
「い、いえ。たまたま近くにいたので。」
「近くってことはレイドの人?」ノインが聞いてくる。
「あ、はい」
「そうか、じゃあ一緒にいくか?俺たちはレイドまでこの馬車の護衛で来てたんだが。」
「そうですね、もう戻ろうと思ってましたし」
「じゃあ、いこうぜ。」
僕は馬に乗せてもらい、村へ帰るのだった。