第13話 姉御と僕
「うん、中々いい感じね」ファノが子供の頭を撫でる。
「もう少し優しく出してみて。そう!それ位を維持して練習するといいよ」リーンが優しく丁寧に教えている。その肩にはルルがいる。
今日は子供たちの勉強会の日だ。
ファノは10、リーンは12才になった。ファノは宿屋の看板娘として相変わらず元気に過ごしている。今だに僕を弄って遊んでいる。
リーンはルルとの交流のお蔭か随分と人見知りが緩和された。まあ厳つい顔の人は未だに苦手だが。村一番の美少女だと専らの評判だ。
二人はやはり魔法の才能があり、今では教師役となっている。
パリンッ!
「ちょっと!ユーリちゃん、何やってんのよ?!」ファノがきた。
「えっ?いや、練習だけど。」
そう、僕はいまだ生徒なのである。ファノが何故怒っているのかというと、氷柱を出そうとしたら歪な氷塊がでて、それがはぜたのだ。
「危ないでしょ?ちゃんとコントロールしなさいよ。ていうか、出来ないことをやるんじゃない!」殴られた。
「いつまでたっても下手くそね」ルルが鼻で笑いバカにする。
「ファノちゃんもルルちゃんも酷いよ。ユーリだって頑張ってるんだから」
「リ〜ン〜」泣きながら抱きつく。よしよしってされる。
「ちょっと、リーンから離れなさいよ!」ルルが蹴ってくる。
「痛いよ!もう!」
相変わらず暴力的だ。
「ユーリ兄は本当情けないなぁ」
「ほんとね、魔法も下手だし」
「お兄ちゃんいじめられてるの?可哀想...」
年下の子供にも馬鹿にされてしまった。最後は憐れんでるし・・・ホロリと涙をながし項垂れてる僕。
いいんだ、どうせ僕なんて、と傷心とともに帰る。
「おーい、ユーリ」
「あ、フロン」
「相変わらずしけた面してんな。またいじられたのかよ」
「う、うるさいなぁ!どうせ僕は情けない男だよ」不貞腐れる僕。
「誰もそんな事は言ってねえだろ。ほらよ!とれたてだぜ。」そう言って野菜を数種類くれる。
「え?いいの?」
「ああ、お前には世話になったからな。だから元気出せよな!」
「うん、ありがとう」
フロンはあの時以来、すごく優しくなった。相変わらず真っ黒な肌でいつも元気に仕事をしている。
フロンとリーンが居なければ僕はもっとやさぐれていたかもしれない。ホロリと涙を流し感謝するのだった。