第11話 9才
あの襲撃の日から5年。僕は9才になった。あの日から鍛練をサボる事は無くなり、あの日の決意を忘れる事なく過ごしてきた。
9才の誕生日とともに傭兵見習いとしてドーラ姉さんに師事する事になった。
ギルドに登録して初めて知ったが、傭兵にはランクがあり、上からS、A、B、C、D、Eとなる。
「ユーリ!ぼおっとするな!」
おっと、今は討伐の最中だ。僕は目の前に意識を集中した。
「よっ」
相手はガルールだ。その大きさは僕の数倍の巨体。突進してくるガルールにむけ矢を放つ。突進をくらえば容易く踏み殺されるか吹き飛ばされて意識を失うかもしれない。
矢は狙い通りガルールの目に突き刺さりガルールがよろけて突進の勢いが弱まる。素早く横に周り剣に炎を纏わせて切りかかる。首を落としきる程の威力は出せないが、途中まで切りつけ、さらに魔力を送り爆発させる。首がえぐれてのたうち回るガルールに止めを差す。
「ふぅ」
緊張から安堵にかわり体の力が抜けた。
「よくやった!単体ならばもう心配いらないな」ドーラ姉さんが笑いながら近づいてきる。姉さんは今18才。体も出来てきて今は双剣を使った素早い剣技で同僚にも恐れられているみたいだ。
「うん、不意を突かれなければね。でもこの魔法剣のお陰だよ。僕の力だけじゃ大してダメージを与えられないし。」
僕は苦笑いだ。魔法のコントロールは正直まだかなり下手くそだ。それをキールさんに相談したところ、短所よりも長所を先ずは伸ばせとこの魔法剣を教わった。
しかし...魔力を瞬間的に放出させる事においては誰よりもすごいらしい。それがさっきの爆発する剣だ。キールさんでもできなかった。結果的に教わった通りにできなかったのだが、
「教えたものと違うが、まあいい。それを使いこなしてみろ」と呆れながら鍛練に付き合ってくれた。
「さて、戻るか」「うん」
一仕事終えてギルドに戻り報告する僕。
「あら?ガルールの牙かな?」
受付のお姉さん?(そろそろ30らしい)が驚いている。ちなみに名前はナンナさんだ。
「む?今、何か失礼なこと考えませんでしたか?」ナンナが何故か睨んできた。
「い、いえ。それはガルの群とは別に単独でいたので腕試しだと姉に言われて倒しました。」僕は慌てて話題を戻して誤魔化した。
「はあ、一応単独での討伐はCランクからDのくらいになるのですが.....」
じっと僕を見てくるナンナさん。ヤバい!
「はい、まあ何度か姉と戦った事があったので、何とか。初見では無理かもです、すみません」怒られると思った僕は慌てて弁明して謝った。
「はぁ。まあ、いいでしょう。ですが無理はしないでくださいね、はい」
呆れたのか溜め息をつきながらもナンナは許してくれたようだ。
「どうも」報酬を受け取りギルドを出る。
さて、姉さんは、いた。
「姉さん、おわったよ。」入口近くで誰かと話していた姉さんを見つけ声をかける。
「ん、今日はもう終わりだ。帰るか?」
「うん」
姉さんと話していた人に挨拶をして僕らはうちに向かった。
「「ただいま」」
「お帰りなさい。」ユト姉さんが出迎える。今は15才になる。僕の見立てでは村一番の美人になりつつある。アラン兄が密かに想いを寄せているがそれは秘密だ。
「少し怪我してるわね」
そう言って手をかざす。白い光に包まれ怪我を癒す。僕が大怪我した日からナンナさんに無理矢理教わり偶々才能があり、それ以来僕らの専属医師だ。
「ありがとう。はい、これ」ガルの肉と途中で摘んだ香草を渡す。
「ありがとう。直ぐに準備するわね」
ユト姉さんの美味しい料理を食べて、ドーラ姉さんと鍛練をしたり、依頼をこなして笑顔で過ごす。僕の大切な日常だ。