第2話 マリーンとの出会い
意識を失ったリーナは、マリーンと出会った頃の夢を見ていた。
リーナが7歳の時、王都で織物商をしていた両親が馬車の事故で急死してしまった。
そしてその後、リーナは王都にある孤児院に引き取られた。
両親を亡くして悲しい状況ながらも、孤児院の院長だった優しいシスター・エリーや他の子供たちに支えられ、それなりに落ち着いた生活を送ることが出来ていた。
それが一変したのは、孤児院に引き取られて1年程たった頃、父の弟だというデイビッド・ケーレスがリーナを引き取ると申し出てからだった。
血縁の近い親戚から引き取るとの申し出があれば、断る理由もない。
リーナはシスター・エリーや仲間たちに祝福され孤児院を退所することになった。
デイビッドの家に着くと、妻のスカリーと娘のスージーを紹介された。
「リーナです。よろしくお願いします。」
リーナはおずおずとスカリーに頭を下げ、スージーに笑いかけ右手を差し出した。
同じ年の従妹がいると聞いていたので、仲良くできたらいいなと思っていたのだ。
スージーは人を見下したような意地の悪い笑顔を浮かべると、リーナの差し出した右手を払い落とした。
孤児院ではニコニコ笑い、いい人の様に見えたデイビッドも家に着くなり、すごい形相でリーナを怒鳴りつけてきた。
「おい。勘違いすんな。身寄りのないお前を引き取ってやったんだ。お前はうちの使用人なんだよ。しっかり働けよ。」
デイビッドに怒鳴られるリーナを見て、スージーがケラケラ笑い声をあげた。
この日がリーナの悪夢の始まりだった。
スージーのお下がりの服を着せられ、掃除・洗濯・食事の支度・・・、朝から晩まで働かされた。
家事がきちんとできていなかったり、スカリーやデイビッドの機嫌が悪いとぶたれたり蹴られたりした。
食事も残り物や、スージーがまずいと残したものなどが与えられた。
そんな生活が1年も経つ頃には、リーナは全く笑わない、やせ細った陰気な子供になってしまっていた。
ある日、夕方になってスージーがいつもの我儘を言い出した。
「ママー。緑のお野菜食べたくないから、今日の夜ご飯のサラダはトマトのサラダにして。」
「トマトは切らしてるわ。もうすぐお店も閉まる時間だし。」
スカリーの返事にスージーはニヤニヤ笑いながらリーナの方を見た。
「リーナに買いに行かせたらいいじゃない。」
そうしてリーナはもうじき暗くなる夕方からトマトを買いに行かされることになってしまった。
「夕食に使うんだから、トマトを買ったらとっとと帰って来るんだよ。」
案ずる言葉もなく追い出され、リーナは八百屋まで急いで走って行った。
トマトを5つ籠に入れ、帰り道も走っていると、辺りが暗くなっていたためか曲がり角で人にぶつかってしまった。
「あっ!」
小さいリーナの方がはじき飛ばされ、抱えていた籠は地面に落ちトマトが馬車道の方へ転がっていった。




