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誰と妊活してるんだ?――裏切りの果ては  作者: てとてと


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第7話① 墓

シーン割が短いので今回は3話投稿します

 問い詰めた日は、今でも鮮明に覚えている。


 机を叩いた音。

 倒れた湯呑みから広がった茶の染み。


 愛花が崩れ落ちた瞬間、俺は何かを失った。

 見上げた先の照明はひたすらに眩しい。


 あれ以上問い詰めることもできずに、部屋を出た。

 愛花の姿を見たかったし、見たくなかった。

 逃げ出したと言ってもいい。


 酒を買ってホテルに駆け込んだ。

 あれはどんな部屋だったか?


 飲んでも飲んでも酔わなかった。

 涙がグラスに何度も零れ落ちた。


 吐き出したい気持ちは、グラスからまた帰ってくる。

 多分、名前を呼んでいたと思う。


 目が痛くなって、ようやく寝ようと思った。

 しかし、クッションの効いたマットレスに強い違和感を覚えて眠れない。

 起き上がるたびに、喉が乾く。

 水を飲んでも、酒を入れても、乾きが残って潤う気配すらなかった。


 ……どうにでもなれ。


 気が付けば朝日が差し込んでいた。

 頭が痛い。

 酔いたかったのに酔えず、二日酔いだけが頭を襲っていた。


 弁護士に連絡を入れる。

 最後は……もうどうでもいい。


 決めていた通りに全て任せよう。

 冷たく思われてもかまわない。

 こうやって気力が無くなったときのために弁護士がいる。


 ずっと、記憶がループするんだ。

 出会い。

 笑顔。

 涙。

 青ざめた顔。


 裏切られたのに、それでもまだ愛していた。

 ずっと……、すぐに切り替えることなんかできない。


 何度も思い出が繰り返されて抜け出せない。

 迷い込んだ森のようだった。


 指輪が捨てられない。

 クローゼットの奥、小物入れの中に入れた。

 指からは外せても、切って捨てられなかった。


 ◆ ◆ ◆


 離婚が成立してからは、仕事に没頭した。

 ひたすらプロジェクトの改善点を洗い出し、ブラッシュアップしてレベルアップさせた。

 忙しいことが苦にならない。

 帰宅はいつも深夜。


 オンオフの落差が激しく、部下からは鬼気迫ると言われつつも、燃え尽きた灰のようだとも言われていた。

 それはそうだろう。

 このプロジェクトの陰には愛花がいた。


 一人になったときに、不意に目頭が熱くなる。

 思い出したのではない。

 ただ本当にくるのだ。

 精神病でもいい、立ち止まりたくない。

 まだ愛してるなんて認めたくなかった。


 おかげさまでプロジェクトは無事成功した。

 プロジェクトは軌道に乗って、独立した課になった。

 昇進もしたが嬉しくはなかった。


 ああ、そうだよ。

 クローゼットの奥のものは切り離せないんだ。


 このプロジェクトは愛花との……。

 だから、俺はずっと墓を守っている。



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