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戦士の誇り、オーガの長ジパング

手をパンっと叩いたエリィが俺たちに提案した。


「エルフはここから数時間くらいの場所に住む精霊の一種よ。彼らは様々な精霊魔法を使って、枯れた生命を蘇らせることができる種族なの。もし協力してもらえたら、もしかしたら解決できるんじゃないかな」


「ほう、よく見りゃ女か。おい、そこのお前。話し相手はその女にしろ」


「は?」


オーガが、俺に興味を失ったように視線を外す。次のターゲットはエリィらしい。

ライがすぐに前へ出て、守るように彼女の前に立つ。


だが、オーガからは殺意は感じられなかった。


「大丈夫だよ、ライ。オーガは野蛮な種族だけど、女子供には手を出さない――意外と紳士な種族なの。たぶん」


「紳士ねぇ」


「まあ、正確に言えば“殺意のない女子供”だけどな。最初に糸で俺を殺そうとした奴は対象外だ」


「それはお前が悪い」


俺は口を挟む。

「一つ聞いていいか、オーガ」


「なんだ」

背中を向けたまま、不機嫌そうな声が返る。


「お前は俺に殺意を向けた。もしこの場に俺じゃなく、エリィだけが来てたら――殺すことはなかったのか?」


「もちろんだ。怪しけりゃ拘束はするが、俺たちは紳士だ。話くらいは聞いてやってたさ」


「そうか」


思っていたより理性はあるらしい。無差別に襲うわけではなく、“敵意を持つ者”だけが標的らしい。

それを知れただけでも、大きな収穫だった。


「話を戻そう。女、エルフとは友好関係なのか?」

「いえ、全く」


「ハハハハハ! だろうな。確かにエルフの協力があれば問題は解決する。だが友好関係でもないお前たちが、どうやって協力を得る?」


「それはそうですけど……けど、なんとかします。――そこのノアス君が!」


「おい!」


あまりの潔さに思わずツッコミを入れてしまう。


「では聞こう。男ゴブリン。どうやってエルフの協力を得る? 奴らは今、ミノタウロスに縄張りを荒らされ、身動きが取れない。エルフは強力な精霊魔法を使えるが、戦いを好まない愚かな種族だ。ミノタウロスごときを倒す力はあっても、戦い方を知らん。そんな連中が、お前らの頼みを聞くと思うか?」


「それだ!」


「……は?」


「俺たちがそのミノタウロスを対処する!」


オーガの瞳が一瞬だけ驚きに揺れ、すぐに鼻で笑った。


「正気か?」

「超、正気だ」


痛いのは嫌だが、タイムリープがある。最悪、何度でも挑戦すればいい。

ライに勝った俺なら、怖れる理由はない。


「ミノタウロスは厄介だが、ノアス君なら大丈夫です。信じてください」


エリィが真剣な目で言う。

だが、オーガはまだ首を縦に振らない。


「そうか……だが俺たちは協力をするとは言っていないぞ」

「なぜですか!」


笑いを含ませた声で、オーガ――ジパングが骨の剣を構えた。


「女からの信頼もあり、ヒドラを仲間にしたのも本当らしい。だが、口だけでは信じられん。ここで俺を倒してみろ。それが一番手っ取り早い。もしお前が負ければ人間に勝つ見込みは無いと判断し、話は無しだ。だが俺に勝てれば――お前たちを鍛え、戦争にも加勢しよう。

……ただし、戦況が不利と見れば俺たちは引く。それでいいか?」


「いいぜ。あんたたちの協力があれば助かる」


「俺はオーガの長、ジパング。戦士たち、決闘を見届けろ! 俺が負けたら、ゴブリンに協力する!」


骨の剣をぶんぶんと振り回し、地を踏み鳴らす。

周囲の空気が一瞬にして張りつめた。


――オーガの能力、何かあるな。

ライに怯まなかった理由。切断に耐性があるのか、それとも……?


まずは様子見だ。


俺は一気に距離を詰め、鉄の剣を構える。

剣と剣がぶつかり、火花が散る。


重い。

手が痺れるほどの衝撃。栄養不足とは思えない力。


一度距離を取る。ジパングは追ってこない。

中距離・遠距離の攻撃は無い。なら、接近戦型か。


「なら――一気に行く!」


俺は叫びと同時に煙を放出。視界が白に染まる。


「なんだ、それは……!」


煙の中で気配を消し、背後を取る。

一閃。さらにもう一閃。

背中、アキレス腱、腕を斬り落とした。


確かな手応え。煙が晴れると、バラバラになったジパングの体。

――だが、血が出ていない。


「おかしい……」


その違和感に気づいた瞬間。


「ノアス、何やってる!!」


ライの叫びと同時に、脇腹に激痛。

見ると、ジパングの剣が俺の体を貫いていた。


「ど、どういうことだ……」


耳元で、さっきの生首が不気味に囁く。

「おいおい、今のゴブリンは俺たちの能力を知らねぇのか?」


「なっ……生きてる!?」


咄嗟に剣を振り、ジパングの頭を吹き飛ばす。だが――


「ハハハハハ、これはどういうことだろうな」


空中を舞った頭部が笑う。地に散った肉体がうごめき、音を立てて再生していく。


「俺たちオーガは、体をバラバラにしても生きられる種族だ」


――なるほど、そういうことか。

だからライに怯まなかったのか。切断無効。最悪の相性。


「くそっ……!」


口から血を吐きながら、傷を押さえる。致命傷ではない。だが長くは持たない。

それでも、ここで倒れるわけにはいかない。


「まだ、終わってねぇぞ……」


血に濡れた剣を握り、俺はもう一度立ち上がった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

今回はオーガの長・ジパングとの戦闘回でした。

不死身ともいえるオーガの力を前に、ノアスはどう立ち向かうのか――。

次回、「決闘の果て」へ続きます。


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