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白銀の女神と、転生会議

「目を覚ましなさい、少年。さあ、起きるのです」


誰かが俺を呼ぶ。とても温かい女の声だ。


眩しさに瞼が少し痙攣するけれど、俺はようやく瞼を上げることができた。


「ここは」


真っ白い世界。まるで繭の中に入ってしまったかのように白銀の世界が広がっている。


俺の目の前には何かがいる。人間の形をした何かだ。大人の人間ぐらいの大きさで、半分透明と表現するべきだろうか。モヤモヤした人型の何かが、俺に問いかけていることが分かった。


「起きたのですね、貴方は新しい世界で生きる権利を得ました。行使しますか?」


「えっと、どういうことですか。というかここはどこ?」


俺は首を左右に振るう。やはり人型の何か以外は真っ白に包まれた世界だ。


動揺と困惑が心の中を染めていく。


俺の問いかけに人型の何かは深いため息をついた。


「やっぱ面倒くせーな」


「え」


さっきまで上品な口調だった人型は、深いため息の後、まるで別人に変わってしまったかのように、凄くかったるそうな雑さが混ざった声音へと変化する。


「いちいちこの世界はなんだ、あんたは誰だ、新しい世界? もしかして転生! 何でいちいち説明を一からしないといけないんだよ。ったくだりー! お前たちの世界でそういうの流行っているじゃん。何も聞かずにオーケーオーケー言えよ。面倒くさいな。後ちなみに私のことは女神って呼べよ。理由は聞くな。女神な、女神。オーケー?」


「……オーケー」


女神の強烈かつ怒りに染まったマシンガンのような弾幕の言葉の数々に、俺は圧倒されてしまう。

頭の中で湧き水の如く湧き出ていた疑問は、シャボン玉が破裂していくようにどんどん消えていく。


「一つ、貴方は選ばれた為、新しい世界へ転生します。一つ、最弱の種族であるゴブリンとして世界滅亡……魔物が滅亡する世界を救う使命が与えられます。使命を行使するために三つの能力を授けます。


・自殺の死因となった煙死。貴方は煙の能力を扱えます。

・種族のボスの敵対心を砕くことができれば、その能力が使える仮面を手にする力を授けます。

・敗北もしくは時間制限を迎えた際に転生日の朝へと戻る能力を授けます。


以上三つの能力を駆使して、是非とも人類から魔物を救ってください」


さっきまでのマシンガントークは何処へ。

平常心を保って淡々と口にする女神は、その名前がピッタリの姿であった。


「えっと、質問いいですか」


「ッチ。なに」


教師に恐れる生徒のように、俺は恐る恐る手を挙げる。

女神は苦虫をかみ潰したかのような表情を浮かべた。今にも唾を吐き出しそうな程に怖い表情に、俺は思わず唾を飲み込む。


「多分、全部聞くと色々と気まずいので、一つ。転生した俺の敵は人間ということですか」


聞きたいことは山ほどある。

しかし女神の圧とプレッシャーに、正直俺は耐えられない。


自殺して目を覚ましたら白い世界。

目の前には女神と名乗るヤバい存在に転生の話、能力の話……淡々と説明されて理解できる訳がない。

それなのにまるで察しろと言わんばかりの態度。正直これはパワハラだろうと文句を言いたいが、ここはグッと堪える。


「私が作り上げた世界は、全ての種族が均等に生きられるように構築した物なの。

もちろん種族のピラミッドや奴隷など、各々で変化した点こそあるが、基本は全ての種族が生存できるようになっている。

しかし私が作り上げた古代兵器の一つである『破滅の置時計』が、人類の元へ渡ってしまったのさ。

破滅の置時計は一定の時間が溜まると、範囲内の持ち主である種族以外の生物を殺してしまう効果がある。それを行使されると、私の構築した世界に反することになる。君はそれを止めるために頑張るのだよ」


頑張るのだよ、と言われても……それってあんたの都合ですよね、と口を挟みたくなるが、俺はここでもグッと言葉を飲み込む。


「そもそも何でそんな反する兵器を作り出したんですか」


呑み込んだはずの言葉だったが、無意識に俺の口から零れ落ちてしまう。


やばい、と直後に俺は両手で口元を抑えた。

しかし時すでに遅し。

女神はムスッとフグのように頬を膨らませ、言うまでもなくご立腹だ。


「君は常に私を苛立たせるね。

破滅の置時計は、種族間のバランスやイレギュラーが発生した時の保険として私が作り上げたのさ。

まさかそれを人類に発見されるとは思っていなかった。ったく、どの世界も人類という生き物は傲慢で腹立たしい者だ」


それには激しく同意だ。

群れることでしか強がれない奴、弱者を虐めることで存在意義を感じる奴、話し合いもしない奴……そんな連中こそ人類だ。

そういう意味では、俺は人類ではないゴブリンに転生するのだから、多少報われたと言ってもいい。


「とりあえず分かりました。

けど俺はどこにでもいる普通の男です。

何なら人生を途中で投げ出した弱虫かもしれません。

そんな俺が人間を倒せるとは正直思いませんが」


「案ずるな。お前の魂が宿る体には、その世界の言語や戦闘知識などを詰めておく。

まあ最弱の種族であるため苦労はすると思うが、急に怖くて腰が抜けるようなことはない。安心せい」


少しずつ機嫌が直ってきたのか、饒舌になってきた女神に俺は安心する。

読んでいただきありがとうございます。良ければブックマークと評価お願いします(^^)/

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