煙に包まれて
人間は残酷だ。俺は生きている間に何度も何度も人間に絶望した。
弱い者を虐め、苦しめる。
異端者を批判し、拒絶する。
群れる事で強がるこの種族に失望を覚える。
俺はそんな世界が、人間が、嫌いでこの世界を去る事を決意した。
学校で俺は多くの人に虐められた。
元々虐められていた奴を助けようと思って行動したら今度は俺が標的になったのさ。
誰も助けてくれなかった。
クラスメイトの連中も、虐められていた奴も、誰も。
何度も話し合いをしようと心がけたけれど、誰一人として俺の話を聞いてはくれなかった。
両親も、虐めた奴らも、教師さえも、誰も俺の話に耳を貸してくれる奴はいなかった。
俺がもっと強かったら――もしくは俺がその日をやり直しが出来る力があったら、何か未来が変わっていたのかも知れない。
後悔と憎しみを奥歯で嚙みつぶすように力を入れて、俺はマッチに火を灯した。
練炭自殺。
俺は部屋を密室にして徐々に溢れてくる煙に身を包む。
白い煙は死神の手のように見えた。
死神の手はやがて俺の首元まで伸びてきてギュッと握りしめる。
息が出来ない苦しさで俺はもがく。
けれど数分前に呑んだ睡眠薬が苦しさを僅かに調和してくれたようで、思ったよりも苦しくない。
次第に意識が薄れていく。
不思議と走馬灯と呼ばれる物は見えなかった。
疲れがピークに達した状態でベッドに倒れこむような心地よさすら覚える。
やがて俺の意識は体から離れていく。
まるで糸の途切れた操り人形のように俺の体はストンっと動かなくなったのだ。
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