表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/50

進められるところまで

 結局、その日アンディは宿へと戻っては来なかった。

 ルカは何か問題が起こったのかと気が気でなかったが、昼前にようやく草臥れた様子のアンディが姿を見せた。


「心配しましたよ。

 昨日言われた時間も過ぎちゃってるし」

「ごめんごめん。

 色々やってたら思った以上に時間が経っててさ。

 そのまま例の依頼主に挨拶してきたから心配いらないよ」


 改めてアンディの姿を確認すると、体のあちらこちらが汚れている。

 その中には血と思われる赤黒いものもあった。


「血が出てるじゃないですか!

 早く医者に診てもらわないと!」

「ん?

 ああ、これは僕のじゃないよ。

 特に怪我はないから大丈夫」

「返り血っていうには量が多い気がするんですけど……」

「あはは、まあね。

 結構大事になっちゃったんだよ。

 君は宿で待機してて正解だったね」


 これまでルカに対して、村長やランツは良くも悪くも危険込みで頼み事をしてきた。

 それとは対照的に、アンディは厄介事から遠ざけるような振る舞いをしている。

 気遣いはありがたいが、少し前からやる気を出しているルカにとってはもやっとしてしまう。


「まあ、苦労の甲斐あって手を回してた相手はわかった。

 すぐにできることはないから対処は後回しになるけど。

 村に帰ったら村長経由でどうにかしてもらおう」

「それで、嫌がらせしてきてたのは誰だったんですか?」

「それは……いや、君は知らないほうがいいよ。

 好奇心でこういった騒動に首を突っ込むと後悔しかねない」


 こういうところだ。

 暗に足手纏いと言われている気がする。

 いや、彼からすると足手纏いなのは疑いようのない事実なのだが。


「とりあえず、今回の交渉は現時点で進められるところまでで終了かな。

 後数日くらいで終わると思う。

 ルカ、悪いんだけどベックを探してその辺伝えてもらえるかな。

 帰りの準備を始めてくれって」

「あ、はい。

 わかりました」

「悪いね。

 この歳になると徹夜が堪えてくるからさ。

 ちょっと休ませてもらうよ」



 アンディからの伝言を預かり、ルカは聞いていた五つの商会を近い場所から周っていく。

 そして三つ目の商会でベックを発見することができた。


「わかった、わざわざ報告ありがとう。

 こっちも用意しておくよ」

「お願いします。

 商談の方は上手くいってますか?」

「うん、手応えは悪くないね。

 持ってきたものも魔術師ギルドに提供する方向で話が進んでるよ」

「魔術師ギルドに?」


 今回ルクシャーナに持ち込んだものは、魔素が浸透している木材や鉱石だった。

 てっきり燃料を必要とするところや鍛冶屋にでも売るのかと思っていたが。


「魔術の練習に使えるんじゃないかって。

 入門用の教材とかでさ」


 そういえば魔術を使えない人間でもちょっとした影響を与えられるという話を聞いていた。


「ベックさん、その木材とかってお高いんですか?」

「え?

 ……ここだけの話だよ」


 そういって、ベックは周囲を見回し声を潜める。


「木材ならアランダ付近だと比較的簡単に手に入るから捨て値なんだけど、他所には高く売るんだ。

 こういった素材は時間が経つと魔素が抜けてすぐ効力がなくなるから売れ行きが悪いんだけど。

 ここなら魔素濃度が高くて長持ちしそうだし、今回の感触が良ければ安定した需要が見込めるかもね」

「なるほど……

 ありがとうございます、内緒にしときます。

 じゃあ僕はこれで」


 良い話を聞いた。

 村なら魔術の練習に使えそうな素材が手軽に手に入る。

 それも魔術師ギルドが導入を検討するようなものが。

 どう使うのか知ることが出来ればベストだが、現段階では知ることは難しそうだ。

 だが、ルカの魔術練習として試すのはありだろう。

 アンディとの会話で魔術に関して気勢を削がれかけていたが、やはり自分にできることを増やしたい。

 将来的に何か別のものが見つかるかもしれないが、今は魔術くらいしかない。

 できることを試して、その後師事できる人が来てくれるのであればお願いしよう。


 そうしてその後、アンディは魔術師ギルドとの交渉を継続。

 ルカも付き添いとして魔術師用の図書館に通ったり、街の観光をしたり。

 その数日間、ルクシャーナを騒がせている魔獣騒ぎに遭遇することもなく。

 交渉に区切りが着いたところでベックと合流、アランダへと帰還する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ