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行動原理

「まずランクだけど、僕自身はそんな大した人間じゃない。

 当時は気の合う仲間とチームを組んでいて、そのおこぼれに預かっていただけなんだ。

 戦闘面でも、アランダの腕自慢の中では最弱だしね」


 そう前置きされた。

 その謙遜を言葉のまま信じることはできないが。


「駆け出しから始めて、何気なくチームを組んで。

 途中で入れ替わりとかもあったけど、冒険者業は比較的順調だったと言えるかな。

 色んなところを廻って、ランクも上がっていった。

 旧文明の遺跡なんかを探索している内に魅力を感じるようになってさ。

 実入りも良かったしね」


 懐かしむように過去を語るアンディは実に楽しげだった。

 ルカも単純に先輩冒険者の話に興味があり、相槌を打つだけで先を促す。


「ただ、やっぱり旧文明についての調査は限界があってね。

 進展のない日が続いた。

 そこに、君の言った……ふふ、スゴイランク?への昇格の話が来たんだ」

「いや、ランクを直接言うと迷惑かなと思って……」

「わかってる、お気遣いありがとう。

 で、スゴイランクがどういう立場なのかは知ってるかい?」

「あ、はい。

 あんまり冒険者っぽくない活動が多くなるとか」


 村長からそんな話を聞いた記憶がある。


「そうだね。

 冒険は性に合ってたけど、代わりに色々な権限を貰える。

 それを利用して、色々なギルドや組織、物好きな貴族や商人と繋がりを持って……

 旧文明の機械や資料についての情報が集められると思っていた。

 もちろん、先方の依頼をこなして、ご機嫌を取りつつね。

 だから皆で納得して、昇格したんだけど」


 先ほど注文したエールが運ばれてきた。

 アンディは俯くようにその杯を見つめる。

 その顔からは、表情が消えていた。


「僕たちは、上流階級がどれだけ暗闘で満ちているか知らなかった。

 一方の依頼を受けて別方面から恨みを買って、そんなことを繰り返して。

 こっちの目的を果たせないまま……色々あって、チームは崩壊したよ」


 ルカはその行間から、彼のチームの末路を読み取り、押し黙る。

 彼がたった一人で境界の奥深くを探索する現状。


「……そんなこんなでドロップアウトして、現在に至るってわけ。

 君の状況とは違うけど、少し重なる部分もある気がしてさ。

 まあ一つの失敗談だと思ってくれ」


 小さく笑いながら、そう話を締めた。


「そんなことがあって、何でまだ調査を続けてるんですか?」


 危険は計り知れず、得られるものは少なく。

 ただ一人、境界の奥へと赴き遺跡を探索する。

 何がそこまで彼を駆り立てるのか。


「そうだねぇ。

 単純な興味と、意地になってる面もなくはない……

 ルカ、君は人間の強みって何だと思う?」

「は?」

「文明崩壊前もそうだけどさ。

 人間は昔、世界中に生息するくらい栄えていたわけで。

 三百年近く前に絶滅寸前まで追い込まれたけど、また生存圏を広げてる。

 それを成しえた強み。

 正解なんて僕にもわからないけど、君の考えを聞きたくて」


 ルカは話の急展開に面食らう。

 何故そんなことを聞くのだろうか。

 だが、少しの時間を掛けて考える。


「うーん、言葉による他人との意思疎通と連携。

 あとは道具とかを使えることですかね」

「なるほどね。

 じゃあその言葉や道具って、何で僕らが何気なく使えてるのかな」


 このコップとその中身も、と杯を傾ける。


「それは昔の人が発明したものをそのまま使ってるからでしょ」

「そう。

 あくまで僕の考えだけど。

 人間の強みって、知識や経験を言葉とか文字とかに置き換えてさ。

 他人と共有して、研鑽しながら積み上げていけることだと思ってる。

 過去の成功と失敗から学び、最適化していくっていうね。

 そう考えると、文明崩壊っていうのは人類にとって痛恨の極みだと感じるんだ。

 本来なら僕らまで引き継がれていたはずの積み上げが瓦解してしまったって」


 世界中に散らばっている旧文明の残骸。

 その製造方法と手段、そして運用。

 そこから得られる出力。

 それらが全て崩れ落ち、過去に思いを馳せるしかできないのだと。


「でも、その積み上げてきたもののせいで文明崩壊が起きたのかもしれないですよね?」

「その通り、僕もその可能性が高いと思ってる。

 だからこそだよ。

 何も知らずにここからまた技術、知識を積み上げていって、同じ轍を踏んでしまうかもしれない。

 それを避けるためにも、過去に何があったかを究明できれば。

 その積み上げの一つに繋がればいいなって」


 そこまで聞いて、ルカはアンディという男の行動原理を垣間見た気がした。

 彼を動かしているのは興味と使命感だろうか。

 少々危うさを感じるそれが、アルコールによる一時的なものであれば良いのだが。


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