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盗賊退治の裏で

 先日教会を訪れた時刻と同じ頃。

 装備を整えたランツは、教会でマヌエルとロザリーに軽く事情を話した後、森の中に入っていった。

 ルカもまた、弓とショートソードを携えて、木陰から教会の様子を伺う。

 教会周辺に動きは見られない。


 そのまま小一時間様子を見たが、目立った動きは見られなかった。

 教会の周りに人の気配が感じられないことを確認すると、ルカは事前の指示通り、姿を現して内部の様子を探ることにする。


「ごめんくださーい」


 初めて訪れた時と同様に、ルカは誰もいない教会内に声を掛けた。

 訪れる時間帯が悪いのか、三度訪れた間に一人も礼拝者を見ていない。

 心の持ちようか、夕日色に染まったステンドグラスが不吉に見えてしまう。


 しばらく待った後、バタバタと音がして、奥のドアが開く。

 ルカは思わず身構える。


「すみませんお待たせしました……あっ、ルカさん」


 相変わらず慌ただしく、ロザリーが応対に現れた。


「ランツさんから後でいらっしゃるとは聞いていたんですが、すぐお出迎えできなくてすみません」


 苦笑しながら迎えてくれる。

 見た目上は怪しい部分はないように見えるが、心臓の鼓動が早まってしまう。

 ロザリーに気付かれぬよう、ルカは緊張を抑え込むように深呼吸する。


「お忙しいところ度々すみません。

 ランツのサポートとして来ているのですが、よければこちらで少し待機させてもらってもいいでしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ!

 まだしばらくは扉も閉めないので、椅子にでも座ってお待ちください」


 少し苦しい理由になってしまったが、特に指摘もなく、教会内に留まれそうだ。

 作業があるからと、ロザリーは一礼してバタバタと奥に引っ込んでいく。

 本当に落ち着きのないシスターだ。


 さて、とルカは考える。

 ロザリーの存在は確認できた。

 何をしているのかはわからないが、先ほどの様子を見るに怪しい挙動をしている可能性は低いと判断する。

 ならば次は神父マヌエルについて確認したいところだ。

 また、教会内にいるのであれば、まだ見ぬ使用人も。

 どうやって取り次ぎを頼むか、あるいは忍び込むかと考えていると、再三奥から騒がしい音が聞こえてくる。


「ルカさん、我々はもうすぐ夕食なんですけど、あなたもご一緒にどうかとマヌエルが。

 質素なものしか出せませんが、よろしければ如何ですか?」


 ──毒。

 真っ先にその考えがルカの頭を過った。

 考えすぎかとも思うが、用心するに越したことはない。

 しかし、相手の行動を確認できるチャンスでもある。

 とりあえずは顔を合わせての食事になるかの確認だ。


「いいんですか?

 皆さん一緒のテーブルで食事するようであれば、部外者がいると気を使わせてしまうんじゃ」

「いえいえ!

 ただ、子供たちもいるので少々見苦しいところをお見せすることになるかもしれませんが……」


 神父や使用人が出てくるかは不明だが、顔を合わせての食事になるらしい。


「ではご迷惑でなければお言葉に甘えさせてください」


 ならば受けようと、ルカはあれこれと頭を回しながら、ご相伴に預かることにする。

 最悪、全員の姿を確認したら食事に口を付ける前に用事を思い出してお暇しよう。

 相手が白か黒かの判断はできないが、自分の命が一番大事だ。


「はい、本当に大したものはご用意できませんが。

 もう少々お待ちくださいね」


 そういって小走りで走っていくロザリーの背を見つつ、好意で用意してもらう食事を無下にしてしまう可能性に、ルカは罪悪感を覚えた。




 程なく夕食の場に呼ばれた。

 テーブルにはマヌエル、ロザリー、子供たち三人、そしてルカが並んでいた。

 他に人のいる気配を感じないので、使用人は出払っていると思われる。

 テーブルの上には粥が入った鍋、豆と芋のスープが入った鍋、チーズの塊があり、その場で取り分けられた。

 配膳動作に怪しいところはない。

 飲み水も一つの水差しから注がれている。

 他の人間が先に口にするところさえ確認できれば、毒の心配はないと考えてよさそうだ。


 そして食前の祈りを終え、各々が料理を口にする。

 ルカはマヌエルとロザリーの二人に意識を集中し、それぞれの料理を口にするのを確認してから、自分も同じ料理を口にする。

 子供たちはルカの存在を気にも留めず、騒がしく会話している。


「すみません、子供たちには静かに食べるよういつも言っているんですが」


 そういってロザリーは食べ散らかす子供たちの世話にかかる。

 和やかな雰囲気で微笑ましく見えるが、ルカは緊張を維持する。


「お口に合いますか?」


 マヌエルがルカに会話を振る。


「はい、私も田舎の出身なので素朴な味で助かります。

 この町に来てから、特産品なのか香辛料や油がマシマシの料理ばかり口にしていたので」


 警戒しながらも、本心を答える。

 消化に良さそうなメニューが、刺激の強い食事が続いていた胃にありがたい。


「それは良かった、この町で作られているものですので」

「でも何だか変わった風味を感じますね。

 多少は香辛料を使っているんですか?」


 言いながら料理を作ったであろうロザリーを見ると、空ろな目をしてテーブルに寄りかかっている。

 子供たちの会話もいつのまにか途切れていて。

 ルカの視界が徐々に歪み──意識が暗転した。


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