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お粗末な後始末

 ネクロシスリーフの捜索からナバリスへの帰還後。

 ランツはナバリスの街で勾留されていた。


 罪状は勿論サージェン領への不法侵入およびネクロシスリーフの所持……ではなく。

 冒険者ギルド職員への暴行罪。


 街へと帰るや否や、宿へと帰るルカと別れたランツは、その足で冒険者ギルドへと直行。

 名を伏せてダルシートを呼び出し、暴行を加えたところを他の職員や冒険者、計九人掛かりで取り押さえられた。

 勾留後、彼は衛兵に事情を説明。

 冒険者ギルドの依頼に関する証書を所持していたため、ネクロシスリーフの所持については問題視されなかった。

 ただし、ダルシートのサージェンと通じた背任については、背後関係を立証できず、保留扱いとなった。

 そのダルシートは、参考人として一旦身柄を確保されている。


 ルカは証拠を持ち帰る筈のバルザックたちを探し、冒険者ギルドと海の灯亭周辺を散策し続けること三日。

 ようやくサージェン領から帰還したバルザックを発見する。



「バルザックさん、アレクさん、今回は色々とお世話になりました」


 ランツ釈放のための協力を仰ぎ、あちらこちらへと報告や手続きを行い、一通りの作業が完了。

 問題なければ今日明日にでも釈放されるとの事だった。

 ルカは色々と動いてくれた二人に頭を下げる。


「いや、結果としてこちらも色々と情報を得られた」


 気にしないでくれ、と続けるバルザック。


「それにしても、帰って早々内通者を殴って留置所行きとは。

 彼の狂犬の二つ名は伊達ではないね」


 呆れ笑いをする、短い金髪の中性的な美青年。

 何処か気品を感じるその人物は、名をアレクといった。


「ほんと、ご迷惑お掛けします……」

「ああいや、君が気にすることではないよ」


 同行者の短絡的な行動に、気恥ずかしさが募る。


「サージェンの方はすぐに沙汰が下る筈だが、奴と繋がっていた連中の全容までは辿り着けないだろう。

 ランツが出て来るまでは、お前も気を付けて行動することだ」

「はい、ありがとうございました」


 ルカは改めて頭を下げ、二人と別れた。




 その翌日の夜、とある酒場。


「あー、酷え目に遭った」


 葡萄酒を呷りながら愚痴るランツ。


「裏切られたと見ると後先考えなくなるのは相変わらずだな」


 蒸留酒をちびちびと飲むバルザック。


 釈放されたランツが礼を言いにバルザックの元へ訪れ、その流れで飲みに出ることになった。

 南区にある、そこそこ大きな酒場に入店。

 店内は半数以上の席が埋まり、かなりの賑わいを見せている。

 多少込み入った話をしても、聞き耳を立てられる可能性は低い。

 二人は奥の壁側に位置するテーブルに陣取っていた。


「借りはおまけ付きで返さねえとな。

 クッソ頭に来る話だぜ。

 それらしい事言って調査に送り出した先がキルゾーンだなんてよ」


 空になった杯を軽くテーブルに叩きつける。

 柵の中の罠、衛兵による脅し、手練れの戦闘員による武力行使の三段構え。

 実に嫌らしい布陣だった。


「件の麻薬はあまり認知されないまま街で広まっていたが、それが一因か。

 嗅ぎ回っている冒険者に話を持ち掛けて、口を封じていたというわけだ。

 冒険者ギルド以外でも、似た手口が行われていたのかもな。

 それにしても」


 バルザックは感心するように頷いた後、ランツを見据える。


「あの夜は随分と梃子摺っていたようだな。

 確かに相手はあの場にそぐわない腕前だったとはいえ、弛んでるんじゃないか?」


 その視線から、ばつが悪そうに目を逸らす。


「あの手の奴が特に苦手なの、知ってんだろ。

 それより、そっちの成果はどうだったんだよ」


 露骨な話題逸らしに、バルザックからため息が漏れた。

 ランツの本領は魔族退治だ。

 これ以上追及するのも無粋か。


「領主本人は不在だったが、息が掛かってた連中は粗方灸を据えておいた。

 後は衛兵が動いてフェルモネ公まで話が行く筈だ」

「じゃあ機械の入手経路やらはお預けか。

 まあ上の方に伝えとけば、サージェンを絞って聞き出してくれんだろ」


 一先ず自分の役割は終わりだ、と伸びをする。


「それと関係するかはまだわからんが。

 奴らが精製していた麻薬が、ヨルムートに流れていたらしい。

 もしかすると、機械はそのルートから入ってきたものかも知れん」

「ヨルムートから?」


 ヨルムートは、ここヴェロンダルの南西に位置する、境界には面していない内側の国。

 国土の三割程度を厳しい砂漠が占めており、調査が進んでいない地域が多い。

 そういった地域から新たな遺跡が発見され、機械等が出土することがある。


「ヨルムートから秘密裏にハーシリムという連中がこの国に潜り込んでいる。

 今回の件も、そいつらが一枚噛んでる可能性がある」


 ハーシリム。

 以前、ランツがエルディナから受けた依頼で遭遇したことがある。

 エルディナの話も合わせると、相当な数が活動していそうだ。


「今回の村長への報告書にも書いたが、アランダの周りにも潜んでいる疑いがある」

「……それ本当か?

 何を根拠に?」


 思わず前のめりになる。


「根拠としては薄いから話半分に聞いてくれ。

 この国でハーシリムが動き出したという話が出たのはごく最近だ。

 そこから各地でちょっとした被害が増えている。

 アランダの件もそうだ。

 アランダへと向かった商人が帰って来ないという報告がやけに増えている。

 それに、連中に目を付けられそうな要素もいくつかあるしな」


 ランツは知らない話だが、さもありなん。

 アランダへと向かう人間が到着しなくても、アランダから出発する人間が目的地に辿り着かなくとも、村の人間が知る手段は少ない。


「それだけだとハーシリムとの関係性は疑わしいが、村として注意が必要な話なのは違いねえな。

 有用な情報、助かるぜ」

「ああ、アランダでそれを把握できていないなら、念のため早く帰って報告した方がいい」


 難しい話はそれまでで、二人は昔話に花を咲かせた。




 結局、ダルシートの発行した証書と違法植物調査の功績が称えられ、ランツとルカは昇格することとなった。

 冒険者ギルドで新たな認識票を受け取り、たまたま見つけたアランダへの馬車護衛依頼を受注。

 バルザックたちに挨拶をして、アランダへと帰ることとなった。


「帰るまでに村が滅んでなきゃいいけどな」

「あはは、そんなわけないでしょ。

 ……ないよね?」


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