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踏み込んだ一線

 機先を制されたランツは、一旦深呼吸して考える。


 この衛兵たちについて、考えられる可能性は三つ。

 一つ、協力関係にあるはずの衛兵が裏切っている。

 二つ、言葉の通り、本当に通報を受けて無関係の衛兵が駆け付けた。

 三つ、偽物で、ここの見張りか何かが衛兵を騙っている。


 高確率で一つ目だとは思うが、念のため探りを入れる。


「あー、俺らは冒険者ギルドの依頼でここら辺を調査してるんだが……

 あんたら、何か聞いてねえ?」

「何故、冒険者ギルドからこんな私有地の中を調査するような依頼が発行されるというんだ?

 領主から出された依頼というわけでもあるまい」


 ごもっとも。

 真っ当な経緯で受けた依頼ではない。


「そう言われてもな……

 一応依頼に関する証書も持ってるんだが」

「仮にその話が本当だったとして。

 冒険者ギルドがどう動いていようと、こちらには関係ない。

 軽いとは言え、貴様らが罪を犯している事実は変わらん。

 無駄口を叩くな!」


 向こうの言い分からは、相手の立ち位置の判断が難しい。


「安心しろ、不法侵入くらいなら大した罪にはならん。

 ただし、周辺の被害やお前らの所持品を検めた結果次第ではあるがな」


 考え込んでいると、そんなことを言われた。

 ランツたちが所持している物を知った上での言葉か?

 ネクロシスリーフを持ち込んだ犯罪者にでもでっちあげるという腹積もりだろうか。


 ランツは再び、溜息とも取れる深呼吸をする。

 相手の人数が多い上に、後詰めが控えている可能性もある。

 気がかりなのは後ろのルカのことだ。

 何かあった際にフォローが難しい上、衛兵に手を出して前科を負わせるようなことになるのも忍びない。

 気は乗らないがここは一つ、出発前に用意した保険を使うことにした。


「そっちの言い分はわかった。

 だが、こっちの証書だけは確認してもらおうか」


 一枚の紙を取り出し、衛兵の方へと近付いていく。

 リーダーは警戒しつつも、無造作に突き出された証書を受け取り、明かりを照らして確認する。

 内容を読み終えた途端、驚愕の表情でリーダーは証書とランツを交互に見比べる。


「一応説明しとくと、ここら辺を捜査するのに限って、フェルモネ家の人間から権限を貰ってある。

 ここの領主の主みたいなもんなんだろ?」


 彼のいうフェルモネ家とは、ここヴェロンダルの東一帯を取り仕切る大貴族である。

 今回の調査にきな臭さを感じていたランツは、念のため村長から預かった紹介状を持って根回しを行っていた。


「借りを作るみたいで気が引けてたが、偶には他人の権力を振り回すのも悪くねえな。

 この際だ、何であんたらがここにいるのか、本当のことを喋ってもらおうか」

「その必要はねえ」


 突如割り込んだ、怒声に近い荒々しい声。

 衛兵たちの後ろの影から五人、屈強な男たちが大股で歩み出て来た。

 間違いなく、ここの警備に関係する連中だろう。


「ごちゃごちゃ言ってねえで、大人しく捕まるか殺されるか選びな」

「……こりゃまた、随分とあからさまなのが出て来たな。

 やっぱ他人の権力はダメだな」


 ランツは肩を竦めて軽口を叩く態度とは裏腹に、警戒を強めた。

 佇まいから、五人共に相応の力量を感じさせる。

 特に、先頭に位置する男からはひときわ危険な気配が感じられる。


「衛兵の皆さん方よ。

 こっちはこんな夜中に不審者にうろつかれて迷惑してんだ。

 手伝うからとっとと黙らせてくれよ。

 早く終わらせねえとあんたらも……色々と困るだろ?」


 苛立ちの混じった口調にたじろぐ衛兵たち。

 だが、先ほど見せた証書が効いているのか、決心がつかないようだ。


「ちょっと待った!」


 ランツの後方から、ルカの声が上がった。


「衛兵さん、そいつらの言うこと聞いて負けた日には、言い逃れは難しいですよ?

 その点、こっちに協力して証言とかしてくれれば、さっきみたいなコネで口利きできます。

 ねえ、ランツ?」

「あん?あ、ああ。

 まあ、それでもいいかもな……」


 そんな言い分を聞き、衛兵のリーダーは判断を迷っている様子だった。

 一方、男は一層怒気を強める。


「威勢がいいなクソ餓鬼……

 もう勝った気分か!?」


 勝てるかどうかは後の話。

 衛兵まで敵に回っては、勝ち目が薄くなるから動いただけだ。


「落ち着けよ。

 遅くまで働いてて疲れてるんじゃねえか?」


 今にも飛び掛かって来かねない先頭の男を、ランツが牽制する。


「赤狼の腰巾着の犬が……

 田舎で散歩でもしてりゃいいものを」

「俺のことをご存じとは光栄だが、随分と安い挑発だな。

 なるほど、閉店セール中ってわけか?

 もうすぐその臭そうな口も開けなくなるしな」


 挑発の応酬により、場に緊張が張り詰める。


「状況は大体わかったし、もういいか」


 そう言うと、ランツは徐に手を大きく振った。

 周囲の人間がその行動に戸惑っていると、衛兵と男たちの後ろから、更に二人の人影が現れる。

 一人は先日ランツと再会したバルザック。

 肩に巨大な片刃の戦斧を抱えている。

 もう一人は見たことのない人物。

 闇夜のせいで詳細は見えないが、槍を携えているようだ。


 その姿を確認し、男は焦りの色を見せた。


「て、てめえ……

 この件は二人だけで来いって話だろうが……!!」

「あれれ~?

 何とかってギルド職員が言ってたことを、何であんたが知ってんだ?

 こっちとしては言質が取れて助けるけどよ」


 フェルモネ家から権限を貰った以上、人員の制限を受ける謂れはない、とニヤつくランツ。

 その態度に男が激昂し、戦端が開かれた。


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