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冒険者捜索_5

 幸いレジーナに怪我はなく、ランツの怪我も大事に至らない程度だった。

 怪我の応急処置を済ませて避難させた冒険者の元に戻ると、二人の冒険者は緊張の糸が切れたのか、気絶するように倒れ込む。

 ランツとレジーナの消耗も激しく、空も既に赤く染まり始めていたため、その場で一晩休むことになった。


 レジーナが冒険者の安全を確保する間、ランツとルカは仕留めた魔獣の解体に取り掛かる。

 死してなおその強靭さは健在で、四苦八苦しつつ革と牙、爪を採取する頃には日が落ちるところだった。

 それ以上は時間を掛けられないため、腹だけ捌いて中身を確認したが、人間の残滓は見当たらない。

 冒険者の遺体を喰らわなかったのか、既に消化排出されたのか。

 ともあれそこで作業を打ち切り、野営地へ引き返した。

 ルカは食料の足しに少量の肉でも切り取った方がいいのではと提案したが、ランツ曰く硬くて食えたものではないらしい。


 野営地に戻る頃には、冒険者二人も意識を取り戻していた。

 取り乱していた無精髭の男はソゾン、冷静だった頬傷の男はディシウスと名乗った。

 五人で焚き木を囲み、簡素な食事を摂る。


「さっきは見苦しいところを見せてすまなかった。

 本当に助かったよ」

「しょうがないわ、あんなのが追って来てたら大抵ああなるでしょ」


 頭を下げるソゾンにレジーナが手を振って軽く返す。

 その言葉に、ルカは心の中で激しく同意する。

 あんな化け物に長時間追跡されたら発狂しかねない。


「皆さんよくあれを倒せましたね。

 我々では……文字通り歯が立ちませんでした」


 ディシウスが絞り出すように話す。

 その手は小さく震えていた。


「流石にB以下の冒険者チームじゃあれは手に負えねえだろ。

 ここら辺じゃ滅多に見ないレベルの奴だ」

「やはりそうなのですね。

 私は魔獣狩りは初めてでしたが、今回の行動範囲で出てくる相手は我々で十分狩れると聞いていました」


 何故そんな魔獣がこんな浅い場所にいたのか疑問が湧くが、考えても詮無き事だろう。


「……夜が明けたらあんたらを連れて村に戻るってことでいいか?

 悪いがやられた連中の遺品まで探す余裕はねえ」


 何か言いたげなソゾンにディシウスが目配せし、ランツに向かって頷いた。

 思うところはあるだろうが、一刻も早く安全な場所へと辿り着きたいのだろうか。

 ルカはそんなやり取りの中に微かな違和感を覚えるが、追及はせず一旦頭の片隅に仕舞い込む。




 翌朝から引き返し、特にトラブルもなく二日後の夜に村へと到着。

 冒険者ギルドに届け出て、疲労と時間の都合上で詳細は明日報告することになりその日は解散。

 冒険者二人はそのまま宿へと直行したが、三人はそのまま酒場で軽い打ち上げをすることになった。


「どうしたよルカ、しばらく元気ねえけど」


 ランツの言う通り、捜索の帰り道以降ルカの口数は少ない。

 ソゾンとディシウスもめっきり黙り込んでしまったため、帰り道はお通夜状態だった。


「あんたに何か心無いこと言われて落ち込んでるんでしょ」

「目の前に鏡置き忘れたか?

 お前が言えたことじゃねえだろ」


 対するランツとレジーナはいつも通りだ。

 今回のような出来事も、よくある日常の一つなのだろう。

 数日振りのアルコールということで、二人のペースは早い。

 言い争い始める二人を横目に、深いため息を吐くルカ。

 そこに、一人の男が声を掛けてくる。


「おや、捜索の仕事で出たと聞きましたが随分早い帰りですね。

 折角なのでご一緒してもいいですか?」


 仕事上がりのジャックだった。

 今日は連れがおらず一人のようだ。


「おうジャックか、座れ座れ」

「うちに寄らなかったということは、大した怪我もないようで何より。

 で、何を騒いでたんです?」

「こいつが元気ないのよ」

「ふむ、どこか調子が悪いんですか?」


 ジャックがルカの身体を舐めるように確認する。


「いえ……

 自分の実力と判断力不足を実感して落ち込んでるだけですので……」

「そんなことですか、残念」


 何を期待していたのか、がっかりした様子だ。


「足引っ張るのなんて承知の上だったし、気にすることないわ」

「そういうとこだぞ」

「君達はもうちょっと言い回しに気を付けたほうが良いですね。

 で、何があったんです?」


 三人が口々に、ジャックに一連の流れを説明する。


「ほう、そんな蜥蜴が……

 是非解剖したいですね、その死骸は何処に?」

「話聞いてたの?

 放置してきたに決まってんでしょ、あんなデカブツ運んで来れるか」


 溜息を付いて肩を落とすジャック。

 その流れで、ルカは気になっていたことを口にする。


「あの魔獣、途中までまともにダメージ与えられてなかったけど、最後だけあっさり止めを刺せのは何で?」

「そりゃあれだ……ジャック、任せた」


 ランツが説明を試みたものの、すぐに諦めた。


「はいはい。

 ルカ君は魔獣の体構造についてはご存じでしょうか」

「あ、はい。

 それは軽く聞きました」


 体の大部分を魔力で構成しているという話だ。


「では少し被る部分もあるかもしれませんが。

 ランツの力は魔術に対して効果があります。

 そして魔獣の脳や内臓を除いて大部分が魔力で構成されてるとはいっても、魔術で作られているわけではありません。

 だからただ彼の力をぶつけてもあまり効果がない。

 逆に言えば安定した状態なので、死亡した後も一定以上の形を残します」


 魔術とは、現実に起こりうる現象の再現と操作だと何度か聞いた。

 魔獣の体は通常の状態だと、そういった現象に至る前の状態ということか。


「けれど魔獣が一定以上の出力で行動する際には体の魔力を消費して、魔術を行うような励起状態になります。

 そこにぶつけて初めて大きな効果が期待できるわけですね」

「なるほど……

 つまり魔獣が本気になるまで地道に戦って、本気を出させてから止めを刺しにいったってことですか」

「魔族にとって体内の魔力は生命活動と戦闘力に直結しますからね。

 可能な限り無駄遣いせず温存するようです」


 だからこそのランツとレジーナのあの戦い方。

 魔獣が様子見している段階で状況を整え、本気を出した後に一気に仕留める。

 逆に言えば、序盤は本気を出していない状態であの強さだったということになる。

 改めて、魔獣の恐ろしさを思い知る。


「でもそれってランツがいないと成り立たない戦術だよね」

「おうよ、俺がいなきゃ泥臭い長期戦必至だな。

 お前らもっと俺に感謝していいんだぜ」

「うざっ」

「別に魔獣と戦えるようになる必要もない、ルカ君も落ち込むことなんてないですよ。

 とりあえず今回は外の探索や彼らの戦い方を見ていい経験になったでしょう」


 確かに、ルカにとって今回の探索は色々な面で大きな経験となった。

 結果として、冒険者の実績としてもDランクへの昇格条件を満たすことになった。


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