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アランダ村_5

 村長に招かれ、ルカとロザリーは二階にある一室に通された。

 実務に必要なものは一通り揃ってはいそうだが、装飾品皆無で質素な部屋だった。


「散らかってて悪いな、そっちに座ってくれ」


 ローテーブル上に散乱していた手紙を片付けつつ、片側のソファへと誘導する。

 ロザリーは既に気を抜いている様子だが、ルカはここに至り改めて緊張していた。


 見知った顔の仲介がなくなり、初対面に近い相手との面談。

 事情があるのか名を告げず、屋内にも関わらず丸サングラスを外さない胡散臭い風貌の男。

 ランツの紹介とはいえ、身構えてしまう。

 不幸なことに、ルカもロザリーも文字は簡単な文章くらいしか読めない。

 細かいことが書かれた怪しい契約書にサインを求められたらどうするか、と余計な心配を募らせる。


「堅っ苦しいな、楽にしてくれって」


 苦笑いしながら反対側のソファに勢いよく座る村長。

 それを見て、失礼しますと二人も徐にソファに腰を下ろす。


「ミリィが質問受けてたって聞いたが、どこまで聞いてる?」

「えっと、この村周辺の地形と危険性についてです」

「あとミリィさんの事も」


 返答を聞いた後、村長は迷ったように間を空けた後、ソファに背を預けた。


「始めに断っとくな。

 お前さんたちについてランツが知ってるだろうことは全部聞いてる」


 ランツから予め村長に事情を話す旨を伝えられていたが、それでもロザリーの顔には緊張が走った。


「じゃあ……面倒な方から話すか。

 ロザリー」


 そういってロザリーの方を向く。

 不意の名指しに一瞬びくつくロザリー。


「噂の回復術についてだ。

 今までそれを隠してきたみたいだが、お前さんは今後どうしたい?」

「どう、とは?」

「後ろ盾を得て堂々と振舞うって選択肢もある。

 例えば聖環教とかな。

 あそこは年中象徴みたいなもんを求めてて、お前さんの力はそこに落ち着けるレベルのもんだと見た。

 パフォーマンスで力の行使を強要されたりと多少の不自由はあるかもしれんが、地位や名誉は──」

「すみません、それは、無理です」


 ロザリーが俯き、途切れ途切れの言葉で村長の意見を遮った。

 見れば心なしか顔が青ざめ、呼吸が荒くなっている。

 自身が大衆に知られること、もしくはその力を人に見られることがトラウマになっているのかもしれない。


「そうか、不快な提案して悪かったな」


 村長がゆっくりした口調で謝罪する。


「当初の予定通り、良ければこの村で暮らしてくれ。

 回復術は忘れることにする」

「ご配慮、ありがとうございます、すみません……

 何とかしたいとは、思っているんですが……」

「なあに、この村にゃお前さんみたいなのも何人かいる。

 さっきのナーシュも似たようなもんだ」


 ロザリーは俯いたまま頷く。


「ま、この村に住む以上は色々と手伝ってもらうがね。

 落ち着いたら何かやりたいことでも考えといてくれ、極力希望に沿うようにするさ。

 何も無きゃ教会の手伝いとかになるか。

 じゃあ次はルカ。

 お前さんはまあ深刻な話じゃないな」


 先程とは打って変わった気軽な口調でルカに話しかける。

 その視線が首元の認識票に止まった。


「お前さんが魔術を使えることも必要なら黙っとく。

 新米冒険者とは聞いてたが、Eランクか。

 ナバリスに行くにしても、Eランクは数が溢れててまともな依頼を受けるのは難しいだろな」


 ルカは冒険者を続けていくとは一言も言っていないが、冒険者以外に何をするとも考えついていないので黙っていた。


「聞いてるかもしれんが、うちのギルドはちょいと特殊でな」

「特殊、ですか」

「普通に依頼も受け付けてるが、今は境界外を探索する冒険者の相互扶助組織みたいになっちまってる。

 あと正式なギルドじゃないんでいくつか権限が足りないが、逆に好き勝手できる部分もある」

「あ、そういえば村長さんがフランチャイズオーナーとは聞きました」

「お前さんが良けりゃ、ギルドの依頼扱いにして村の仕事を手伝ってもらおう。

 そんで活動実績を積んで、Dランクに昇級できる状態になったらナバリスに行って昇級試験を受けると良い。

 ここは昇級させる権限がなくてな」


 ルカにとっては村の仕事を手伝って実績点を稼げる、一石二鳥の話のように聞こえた。

 また、村長のお節介のようにも。

 だが油断は禁物、初心に返り落とし穴がないか確認すべきことは確認しておく。


「ありがたい話に聞こえますけど、職権乱用じゃないですか?

 追加の手数料が掛かったりとかは……」

「心配すんな、職権乱用はその通りかもしれんがピンハネはしないさ。

 ちゃんと相場の報酬は出す。

 中にはちょいとキツイ仕事もあるだろうが、無茶はさせんよ」


 ルカの心配は笑い飛ばされる。

 職権乱用は否定しないのかと思いつつもそれならばということで、ルカはその提案を承諾した。


「今日はもういい時間だし、細かい話はまた明日にするとして、とりあえず村の概要だけ説明させてくれ。

 村周辺の地形はミリィに聞いたならわかっただろうが、東側が危険なわけだ。

 そっちには冒険者向けの宿やら、即応できる連中の家やらが集まってる」


 東が境界に面しているので、当然襲撃が最も多い。

 有事の際に動ける人材を配置するのが妥当だろう。


「で、南側が拓けてて比較的安全なんで、そこに外来客用の宿や教会、その他の店や設備なんかがある。

 日用品なんかもこんな僻地だから割高だが、住人には割引が適用されるから申告忘れないようにな。

 店番には後で俺から伝えとく。

 一応言っとくと、住人以外にも、色々と協力してくれる冒険者にも割引するようにしてる」


 ありがたいことに、既に村の一員として迎え入れてもらえるようだ。


「北から西にかけては普通に村の人間が住んでる。

 が、お試し期間てことでお前さんらは当面宿で過ごしてもらった方が都合がいい。

 ロザリーは南、ルカは東な。

 小さい村だから迷わんだろ」


 本日の宿が指示される。


「しばらく代金は俺にツケとけって伝えてくれ。

 で、荷物置いたら戻ってこい。

 急な話で人は集められんが、下でささやかながら歓迎会といこう」


 そこまで聞き、二人は少しだけ肩の力を抜いた。

 新しい生活の始まりに、改めて期待と不安を感じていた。


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