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アランダ村_4

「遅くなって悪いな。

 この爺さんがこの村の村長だ」

「まだジジイって歳じゃねえよバカタレ」


 軽い漫談から始まり、村長が改まって姿勢を正す。


「お前さんらが移住を検討してくれてるって二人かね。

 紹介に預かった通り、儂がここで村長やらしてもらってるモンだ。

 名前は訳あって伏せてて、そのまま村長で通ってる」


 そう言って笑いかける。

 その身振りや言動から仄かに滲み出る胡散臭さに身構えつつも、二人は会釈する。


「ああ、話は聞いてるから自己紹介はいらんよ。

 ミリィもご苦労だったな、仕事に戻ってくれ」

「ではこれで失礼します。

 お二人も、また機会があれば」


 営業モードに移行したミリィが、一礼してカウンターに戻っていく。


「丁度良いし紹介しとくか。

 おい、ナーシュ。

 ……ナーシュ!」


 村長があらぬ方向に呼びかける。

 その先には、ギルドに入ってから身動きなくテーブルに突っ伏している影。

 フード付きの黒マントを被ったその人物は、一向に動く気配がない。

 村長がランツを見て、顎でしゃくる。

 ランツが頭を掻きつつナーシュと呼ばれた人物に近寄り、フードを脱がせる。

 銀の長髪が零れ落ちたが、本人は微動だにしない。


「死んでねえだろうな」


 耳をつねると、ようやく反応があった。


「……痛っ!

 何……うわっランツ」


 ランツの顔を見るなり、跳ねるように起き上がり、フードを被り直しつつ距離を取る。


「いきなり近寄るなと言ってるだろう……」

「お前こそ、いくら俺の心が鋼鉄製とはいえその反応は傷つくからやめろっつってんだろ」


 溜息混じりで村長たちの方を指差すランツ。

 それである程度状況を把握したのか、村長たちの方に歩いてくる。


「こいつがナーシュ。

 こんなナリでもランツと同様、この村の用心棒みたいな立ち位置で動いてもらってる」


 そう村長が紹介したのは、黒ずくめの小柄な少女。

 フードから覗くのは銀髪と病的なまでに白い肌。


「ああ、その二人が連れてくると言ってた孤児かい」


 興味なさげに左の紫の瞳を向けてくる。

 右目は眼帯で覆われていた。


「んなわけねえだろ寝坊助が」

「ランツが帰ってきたならもう大丈夫だろう、私は休ませてもらうよ」

「お、おい」


 言うや否や、「今まで散々寝てただろ」という小言を完全に無視してナーシュは冒険者ギルドを出て行ってしまった。


「……すごい美少女でしたけど、マイペースな人でしたね

 さっきのやり取り、ランツさんアレルギーか何かなんですか?」

「そんなわけないでしょ……」


 ロザリーの突拍子のない感想に、思わず突っ込むルカ。


「あの人、用心棒って言いました?

 僕と同じくらいの歳に見えたんですが、あれでランツと同じくらい強いんですか?」


 先ほどの少女は、どう見ても十代半ばにしか見えなかった。

 ランツと同じ立ち位置と言われても信じられない。

 戦闘面以外での役割があるということだろうか。


「正確なとこは知らねえが、ああ見えて歳は食ってるみたいだ。

 自分でも悲しくなるが、相性とか考えずにベストコンディション前提で考えると、あいつの方が俺よりよっぽど強い」


 面白くなさそうな顔でルカの問いに答えるランツ。

 そういえばミリィも村には同年代が居ないと言っていたな、と思い返す。

 歳といい見た目といい実力といい、見聞きした限りでは人間離れしているとしか思えない。

 話に聞くエルフや吸血鬼といった類の存在なのではないかと疑うが、耳も牙も尖っていなかった。


「村長、あいつ随分消耗してるみたいだが、俺が出てる間に何かあったのか?」


 ランツは怪訝な顔で村長を見る。


「三日前、猪型の魔獣が出てきてな。

 あいつ一人で対応してもらった」

「おいおいそこそこ大物じゃねえか。

 他の連中は何してたんだよ、イビーも居ただろ」


 聞かない単語が出てきたが、流れからするとイビーというのも用心棒の一人か。


「お前らを迎えに行くベックの護衛を受けてくれる奴がいなかったんで、あいつに頼んだ。

 そのまましばらく内側をふらつくってよ」

「……色々とタイミング悪くねえか?」

「まあその話は置いといて、だ」


 そう言って手を叩き、不穏な方向に進もうとしていた話題を戻す村長。


「あのナーシュってのはほぼ常にこの村にいるから、何かあったら最悪あいつを頼ってくれってことが言いたかったんだ。

 続きは儂の部屋で話させてもらおうかね」


 上を指差し、一行を促す。


「そんじゃ、後は村長に任せていいか?」

「何だ、お前は来ないのか」

「失踪事件について、まだエルディナさんに報告出来てないんでな。

 根に持たれると面倒くせえから早めに終わらせときたい」

「わかったわかった、任された」


 頷いて出口に向かうランツ。

 その背に向かってロザリーとルカが礼を言い、振り向かず手を振るだけで応える。


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