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アランダ村_2

「私、ここ冒険者ギルドのアランダ支部で受付を担当しておりますミリィと申します。

 そしてあちらが暫定ギルド長のギアース」


 ミリィがお辞儀をし、紹介されたギアースも軽く会釈した。

 対する二人もまた、軽い自己紹介を返す。

 ギアースはカウンターの奥に引っ込んでいき、何か作業を始めた。

 随分と無口な男のようだ。


「あの、ミリィさん。

 別に僕たちにはそんな丁寧じゃなくて大丈夫ですよ」


 先ほどの対応を思うと、改まれるのもむず痒い。


「いえ、皆様に失礼があっては大変ですから」


 その視線はちらちらとギアースの方に向けられる。

 先ほどのやり取りから、彼女の言う大変さの片鱗が伺える。


「では、お茶をお持ちしますのであちらの席でお待ちください」


 ミリィが二人を壁際のテーブル席に誘導し、自身は小走りで酒場方面のカウンターに向かう。

 ルカとロザリーはそれぞれ席に着き、一息ついた。


「寒村を想像してたけど、想像以上に賑やかだね」

「ですね、建物も立派なものが多いですし。

 若い子もいるようで結構安心しました」


 二人で感想を交換する内に、ミリィが三人分のカップを持って席に着いた。


「はい、お茶。

 二人は何でこの村に来たの?」

「温度差が激しいなぁ……」

「さっき丁寧な対応じゃなくていいって」


 奥にいるギアースに聞こえない程度の声量で会話を続ける。

 営業モードは終了らしい。


「私はリミエヌルの町で事件に巻き込まれて住むところがなくなっちゃって。

 ランツさんに誘われてこの村に移住しようかと」

「重っ!」

「僕も旅してて、その事件の縁でこの村に誘われたんだ。

 こっちは移住については検討段階だけど」

「へぇー、ここには同じくらいの歳の子がいないから嬉しいかも」


 年の近さからか、既に打ち解けつつ友達感覚で話が進む。


「おっと、そういえば質問あれば言ってね。

 ランツにも言われてたし、職務怠慢扱いされちゃう」

「じゃあミリィさんがこの村に住んでる理由について教えてください」


 彼女のような人間がこんな辺境の村にいるのも事情がありそうだが、ロザリーは空気を読まずお返しとばかりに質問する。

 それに対し、ミリィは耳の裏を掻きながらどこか投げやりに答える。


「あたしは借金関係。

 一年くらい前にこの村に結構な被害が出たみたいでさ。

 その補充要員として働き始めたんだ」

「へえ~、そんなにお給金良いんですか?

 借金返していけそうな程繁盛してなさそうに見えるんですけど」

「あはは、そう見えるよねぇ」


 冒険者ギルドに入ってからそれなりに時間は経っているが、まだ他に立ち寄ってくる依頼人や冒険者は目にしていない。

 村の規模を考えるとこんなものなのだろうが。


「ギルドの詳しいことは後で村長から話があると思うから飛ばすね。

 あ、村長がここの支部のフランチャイズオーナーなの」

「えぇ……フランチャイズ……」

「それは置いといて。

 ここら辺ってちょっと前までは魔族が跋扈してたらしいのね。

 十年前にそいつらを退治して境界を拡張する形でこの村が作られたんだけど、それって他の国も含めて数十年振りの快挙だったんだって」


 現在、各国に面している境界はほぼ全て魔族、亜人といった敵性存在との諍いにより、維持することで手一杯の状況にある。

 そんな中で新星の如くアランダ村が開拓された。


「結果として丁度すぐ東の川までが人間の掌握下になって領地としての防衛面も楽になったと。

 それにここら辺は特に魔力も濃くて、珍しい資源とか遺跡も見つかってるんだって。

 だからメニーゼフの領主様もえらくお喜びで、功労者と村に対して色々と便宜を図ってくれてるっていう訳。

 あたしの給料とかも危険手当みたいなのがあるし、そもそも他にも兼業してるし」


 つまり、この村は領主の後ろ盾があると思っていいらしい。


「この村にはあたし以外にも訳ありや脛傷の人が結構いるみたいだけど、問題起こすようなのはいないと思うから大丈夫。

 多分ね」

「危険な場所でも村として続いてるので、そこは大丈夫なんでしょうけど」


 多分ね、という一言に引っ掛かりを覚えつつ、ロザリーの質問に対する回答がひと段落し、ルカが続く。


「この村の周辺について、危険度とかも交えて教えてくれるかな。

 境界周辺の事情についてあんまり詳しくなくて」

「オッケー。

 まずは北から西にかけて森が広がってるけど、そこは比較的安全。

 その北にスラディクシュ山脈があるからね。

 山って基本的に魔力が薄いんだって」

「あー、聞いたことあるかも」


 例外はあるが、山は魔力濃度が薄く、平地に比べて安全というのが通説である。


「その代わり、結構な数の盗賊が住み着いてるの。

 大体内側でやらかして逃げて来た連中かな。

 そいつらが境界の物資狙いで馬車を襲って来るから迷惑この上ないわ」

「僕らがここに来る時も襲われそうになったなぁ。

 ランツの顔見てすぐに逃げてったけど」

「あはは、この村の用心棒は連中にとったら悪夢みたいなもんだろうからね。

 出ていくときに比べると、来るときの方が頻度は少ないんだけど」


 ベックが馬車でリミエヌルに迎えに来た際は一人だったが、護衛は付いていたのだろうか。


「南側は平原で、こっちも盗賊にさえ気を付ければ大体安全。

 だからここのギルドに持ち込まれる依頼の大半は、村から出ていく時の護衛ってわけ。

 一応定期的にここでも盗賊潰しの依頼を出してるんだけど、一向に数が減らないんだよねぇ……」


 盗賊がいなければもうちょっと人も増えるのに、と愚痴りながらお茶を啜り一息つく。


「で、危険なのが東側。

 さっきも触れたけど、村のすぐ東を流れてるバンダ川が実質的な境界みたいなもので、川向こうが危険地帯。

 昔はこの辺に魔獣が多くて、果ては魔人すら出てきたから長年開拓困難とされてたけど、ここ十年の努力で周辺の奴は討伐出来たみたい。

 ただ少し奥に行けば魔獣は全然いるし、魔人も一年前に確認されたっていうから安心はできないけど。

 その辺は村長とか、更に歴史とかも知りたいならアンディっておっさんに聞いてみるといいよ」


 魔獣と魔人、二つを総称して魔族と呼ぶ。

 約三百年前、栄華を極めていた人間の文明が崩壊することになった原因だという。


「そいつらが最大の脅威で、次点が敵性亜人。

 ここら辺ではゴブリンくらいしか見ないからそんなに構える必要はないけど数が多いし、奥に進むと上位種にも遭遇するって聞くね」


 敵性亜人。

 現在の人類にとってはゴブリン、オーガ、オーク等が身近な存在であり、それぞれ独自の文化、文明を持っている。

 北西の方に面する境界では、オーガやオークの軍団と冷戦状態にある。


「あとは魔力濃度の関係か、普通の獣も大型化の傾向があって、普通の感覚で相手しようとすると痛い目見るから気を付けて。

 まあそんなとこかな」


 ルカは素直に頷いた。


「他に質問は?」

「それじゃあ──」


 質問を続けようとしたところ、二階から足音が降りて来た。


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