第4節 イリーナとの運命的な出会い
魔法修行を重ねる中で、レオンはついにエルフの姫イリーナと運命的な出会いを果たした。国家の慶事の場で偶然出くわしたイリーナの美しさに、レオンは一目惚れの想いを抱いた。金髪が輝き、大きな瞳と整った顔立ちは、まるで妖精のようだった。
腰まで伸びた艶やかな真っ直ぐの長髪が特徴的なイリーナは、洗練された美しい整った顔立ちをしていた。大きなエメラルドグリーンの瞳からはエルフならではの儚げな美しさが滲み出ており、細身ながらもしなやかな曲線の通った色白の肢体に、レオンは見とれてしまった。王家のエルフらしい高貴な立ち振る舞いと、仄かなほの笑みも相まって、まさに妖精から抜け出したかのような純粋な美しさだった。
しかしその美しさ故に、イリーナは人間から遠ざかろうとするプライドの高さも持ち合わせていた。レオンの視線に気づいたイリーナは、人間への偏見から眉根を寄せた。
「愚かな人間め。この私に失礼な視線を向けるとは、とんでもない無作法ではないか」
その口調は高飛車で、プライドの高さが滲み出ていた。レオンは戸惑いを隠せなかったが、それでもイリーナの脈打つような美しさに心を奪われていた。
その後の宴席でも、レオンはイリーナの姿に見とれていた。イリーナはエルフのダンスを優雅に披露し、その妖艶な仕草にレオンは恍惚とした。宴も終盤に差し掛かり、イリーナは舞台から下りた。レオンはイリーナに声をかけようと近付いたが、彼女の侍女に制止された。
「下々の者が姫に近付くことは許されぬ。身の程を知れ」
侍女の蔑視に満ちた言葉に、レオンは憤りを覚えた。しかしここでイリーナに迷惑をかけるわけにもいかず、レオンは詫びて引き下がらざるを得なかった。
翌日、イリーナは騒がしい王城を離れ、心を落ち着かせるために森を散策していた。王族とはいえ時に重圧を感じ、ひとりで自然に親しむ時間が欲しくなるのだ。レオンはたまたまその様子を目にし、イリーナの安全を案じて声をかけてみた。
「イリーナ様、ひとりで出歩くのは危険では?」
イリーナは軽く瞳を伏せ、ほんの僅かにだが頷いた。
「ふん、お前が気にするなど僥倖だ。だが、たまにはこうして自然に親しむのもよいのだ」
するとイリーナは森の奥へと足を進め出した。レオンは心配で後を追った。万が一何かあれば、イリーナを守らねばならないと考えたのだ。
やがてイリーナは森の奥の湖畔に立ち止まった。そこで美しい鳥が羽を伸ばし、舞い上がる姿にイリーナは見入っていた。レオンはそっとその隣に立ち、何も言わずにただ湖を眺めた。
二人はしばらく無言でそこに佇んでいた。不思議と気まずい空気もなく、ただ自然に親しむひと時を過ごしていた。やがてレオンがイリーナに視線を移すと、彼女の表情は穏やかで、柔らかい微笑みを浮かべていた。
「...こうしていると、心が落ち着く」
イリーナは静かにつぶやき、レオンを横目で見た。例の高飛車な態度は微塵も無く、心を開いた表情を見せていた。その姿に、レオンは愛おしさを募らせた。
レオンの心に宿った想いは揺るがなかった。イリーナの儚げで高潔な美しさに、レオンは一目惚れを覚えてしまっていた。その煌めく金髪と大きな瞳、上品な仕草と気品あふれる立ち振る舞いすべてが、レオンの心をがっちりと掴んでいった。
この出会いを機に、レオンはイリーナへの想いを育んでいこうと決意した。イリーナの気高い一面と内に秘めた優しさの両面を、これから徐々に知ることになるのだろう。プライドが高く偉ぶった素振りを見せるイリーナだが、きっとその心の内側に人間には分からない何かが潜んでいるに違いない。レオンはそう考え、イリーナに迫っていく勇気を持った。