第2節 リリスとの特訓の日々
リリスとの絆が深まるにつれ、レオンはリリスと共に能力と魔力の制御の特訓に打ち込んでいった。村の外れ、人里離れた奥深い森の中に、二人だけの秘密の場所があった。
頑丈な大樹に囲まれた小さな円陣の中は、魔法修行に最適な聖域だった。リリスとレオンはここで、燃えるような熱意を持って日々を過ごしていった。
「レオン、今日はこの呪文を試してみるわ!」
リリスは小柄な体から、大きく手を広げると、口から règu'àxの詠唱が次々と響き渡った。淡い紫の魔力が指先から滲み出し、大気を震わせていく。
「くっ...まだまだダメだ!この魔力のコントロールが難しい!」
リリスの詠唱は乱れ、狙いは的から外れてしまった。しかし、レオンはすぐさま助言を飛ばした。
「リリス、もっとゆっくり。自分のモノにする感覚を大切にしないとダメだよ。慌てるからいけないんだ」
レオンは前世の記憶から魔法の原理を熟知しており、リリスの癖や間違いをズバリ的確に指摘することができた。魔力のコントロールのコツを丁寧に教え込んでいった。
「そうか...レオンの言う通りだわ!」
リリスは一呼吸おいて、再びゆっくりと詠唱を始める。魔力を静かにまとい、そして獲物を射るが如く的に向かって放った。
「ぺしゃっ!」
的が的確に射抜かれた。リリスは喜びに輝いた瞳でレオンを見つめた。レオンも嬉しそうに微笑み返した。
こうした営みが日々続けられた。最初はリリスの魔力コントロールが下手過ぎて危なげない場面も少なくなかった。しかし、レオンの適切な指導と二人の情熱が実を結び、遂にリリスは大きく飛躍を遂げた。遥か彼方の射程外の的さえも精密に魔力で捉えられるようになっていった。
「やったー!レオンのおかげで、ようやく魔力をコントロールできるようになった!」
一方レオンの成長振りも目を見張るものがあった。特訓の合間を縫って、レオンは書物に没頭し、前世の知識や記憶をひたすら身につけていった。魔法の法則から歴史、科学原理に至るまで、あらゆる知識を貪り求めた。
村人たちからは"奇跡の子"と評されるほどの越人的な学識を、レオンは手に入れていった。体力や身体能力の成長も並外れたものがあり、トレーニングを重ねる度に飛躍的に上達していった。
両親も最初は心配していたが、レオンの飽くなき探究心と向上心に感服するばかりだった。10歳にもなると、レオンは村に誇る逸材へと成長を遂げていた。
リリスとの二人三脚の特訓が実を結び、お互いを高め合いながら、レオンはこの世界で生きるための大きな力を得ていったのだった。




