第10節 外なる世界への好奇心
レオンは前世と前の人生の記憶を持つ大人の知性を持っていました。幼児の体を纏うものの、単なる子供のような無邪気な発想はありませんでした。レオンには冷静な判断力と理性的な思考がありました。
しかし一方で、レオンは両親への思いやりの気持ちも忘れずにいました。勝手に外へ出歩くようなことは控えていました。子を思う両親の配慮に従い、しつけには素直に従っていたのです。
「生まれ変わった我が子を、何者かに傷つけられるわけにはいかん」
「フォルネード家の跡取りとして、しっかりと教育せねばならぬ」
両親のそんな言葉が頭に残り、レオンは外出を控える理由を理解していました。大人の知性を持つ分、両親の気持ちが分かったためです。
しかし内心では、外の世界への好奇心に かられていました。自室の窓からは遠くに森が見え、時折小動物たちがひょっこり姿を見せていました。そんな自然の光景に、レオンは心躍らせずにはいられませんでした。
そして何より気になったのが、窓の外を歩き回る少女の姿でした。レオンが覗き見るたび、彼女は庭園で元気に走り回っていました。可憐な姿に、レオンは惹かれずにはいられませんでした。
(あの少女は一体何者なのだろう?人間の子供とは見えない)
レオンの知的な眼差しでも、その少女の種族が判別できませんでした。しかし、その姿を見るたびにわくわくした気持ちになり、外の世界への好奇心に火がつきました。
(あの子は自由に遊べているようだ。俺もあんな風に外を走り回りたい)
レオンは室内で本を読んだり瞑想したりして、知的な面での成長に力を注いでいました。しかし、生まれた時から大人の知性を持っていたレオンには、幼児らしい無邪気な遊びが体験できていませんでした。自由を奪われた孤独を感じていたのです。
(ひと頃あの子のように無邪気に振る舞える日が来るのだろうか?)
運命的な人物との出会いを前に、レオンの内側では沸き起こる外の世界への憧れがありました。窓の外の少女の姿に憧れを抱き、自由への願望が募っていったのです。




