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勇者レオの復讐

ざまぁパートです。

流血描写があります。

 オレはかつての愛刀・ヤマトを手にしていた。

やっぱ馴染むなコレ。

因みに刀身はちゃんと清めの法術でお祓いした。


 オレは壇上から降り、ゆっくりと歩きながらある人物の前に立つ。

アマーリエ・コレル公爵令嬢、一応ジュドー王子の婚約者だった人物だ。

彼女はこの国の公爵の娘だが、その血筋を辿るとあのカス王、バルトに行き着く。

そう、オレを召喚した国の王でよりにもよって愛刀・ヤマトでオレを殺害したカス野郎だ。


「ヒッ……」


 恐怖で青褪めた顔でオレを見るアマーリエ嬢。

そこには公爵令嬢として、次代の王妃としての凛とした姿は無く、唯の怯えた小娘であった。


「わ……私を、殺す……のですか?」


 恐怖に顔を歪め、瞳に涙を浮かべるアマーリエ嬢。


「勿論だよ。アンタには個人的な恨みは無いンだが、恨むならご先祖様を恨ンでくれや。オレ達を裏切って殺した、あの最低なカス野郎のバルト王をなッッッ!!!!」


 そう言ってオレはヤマトを一閃させる。

刃は令嬢の首筋に喰い込み、一瞬で骨ごと断裂する。

そして、コトリと首が転がり落ちた。

切断部から夥しい血を拭き上げ、絶命と同時に拘束が解かれた身体は膝から崩れ落ち、柔らかなカーペットに倒れ込む。

元から赤いカーペットは令嬢の血を吸い上げ、更に深紅に染め上がった。


 その光景に、場内は阿鼻叫喚となった。

拘束された奴等は皆、狂ったように泣き叫ぶ。

彼方此方から命乞いの声も上がったが、そんなのがガン無視だ。


 動けなくても会話は出来る程度に調整された封縛術だが、こうも喧しいのならいっそ声などでないようにするべきだったかな?

そう思いながらオレは歩いて、先程首を刎ねた令嬢の父親、コレル公爵の前に立つ。


「キサマ……よくも……よくもッッッ!!!!」


 流石公爵サマだな、他の泣き喚く有象無象と違い、200年前からの生き残りだけに肝が据わってらっしゃる。

因みのコイツの妻、公爵夫人がバルトのカス野郎の子孫に当たる。

よくある政略結婚だが、仲睦まじい夫婦と評判であった。

夫人は純魔族である公爵の子を産んでからは産後の肥立ちが悪い? って奴なのか数年前にポックリ逝ったそうだ。

それ故に娘を溺愛しており、オレがアマーリエを邪険にしてからは何かと小言を言ってたっけな。


「おのれ……許さぬ! キサマだけは絶対に許さぬッッッ!!!!」


 激しい憎しみを燃やしながらオレを睨みつけるが、これから死ぬ奴が吠えていても何も響かないな。


「ハッ、ンじゃあオレが生きている内に転生してくれや。返り討ちにしてやるがなッ!」


 そう言って刀を振るい、公爵の四股を分断する。


「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」


 喧しい声を上げる公爵。

五月蠅いから足で喉を踏み潰す。

その後急所を外れた所に刀を刺して持ち上げ、アマーリエの首の前に放置する。

潰れた喉で何か叫ぼうとしていたが、そんなのは無視だ無視。

 

「娘は痛みを感じさせずに斬ってやった。それはオレからの慈悲だと思え。だが、テメェはそこで娘の生首とご対面しながら死ね」


 そうオレは吐き捨てる。

因みにコイツは200年前にオレを封じた100人の術師の内の1人で、後にオレ達の遺体を踏み絵に使ったクソゲス野郎だ。

そんなクソゲス野郎でも最愛の娘と一緒に死ねるんだから、我ながら慈悲深いぜまったく。


 さて、時間には限りがあるし、チャッチャとやる事をやらんとな。


「ンじゃあ皆、よろしく頼むぜ~?」


 そう言うと、封縛術に掛かっていない来賓……サトォーレ王国のカイル王や重鎮達、丸ごと入れ替わったオレの部下達が動けないクソカス共を次々に血祭りにあげていく。

オレは血風の舞う城内を悠々と歩き、クソ共の総大将の前に立つ。


「よーう、あの時とはまるで逆の状況になったな」


 目の前のクソ野郎、ジューダとジュリアスを見下ろしながら挨拶する。


「キ……キサマ、よくもこんな事をッッッ!!!!」


 ジューダは藻掻きながらオレに怨嗟の言葉を投げつけるが、そんな様で喚いている姿は滑稽なものにしか見えない。


「こンな事も何も、テメェがやらかした事を考えれば、当然の帰結だろぉう?」


 ジューダを見下ろしながら。オレは至極当然の事を言ってやった。


「ああ……何故……こんな……200年に及ぶ平和な世の中が……どうして」


 ジュリアスの方は抵抗する気力も無いのか、項垂れてブツクサ言ってる。

禄にあの戦争を体験していないせいかメンタルがクソザコだな、コイツ。


「平和ねぇ~? 我が世の春を謳歌してたのはテメェ等五大国だけだろ? 一応、この国のオウジサマやってたンだ。裏の裏までちゃンとオレはわかってンだぜ?」


 自分達だけが良い思いをして、そのツケを全部他の国に押し付けてるんだ、オレが何かしなくても何時か必ず大規模な反乱は起きていただろうな。


「まぁ、いいや。それはそうと、200年前のクソ魔族共には劣るとはいえ、現在最高峰の術師であるお前達が、動きを完全に封じられ解除の目途さえ立っていない理由、知りたいかい?」


 そう言うオレの隣にはフレイアが立っていた。


「ご紹介しよう。フレイア・ヴァナン男爵令嬢だ」


「今世ではそう名乗っていますが、私もまたレオ同様この時代に転生した者です。フェルト・カレルレン。この名前、覚えはありますか?」


 社交辞令などせずに単刀直入で名乗るフレイアこと、フェルト。


「「なっっっ??!!」」


 おおう、流石親子。

ハモリはばっちりだな。


「まあ、アレだな。お前ら如きではどうしようもない相手だった訳だ」

 

 クソ共の顔が更に絶望に染まる。

嘗ての勇者とそれに肩を並べた神官の2人が相手だ。

戦力差は歴然。

どう足掻いても絶望なシチュエーションにコイツらは折れた。


「マジで根性無いな。こンなのに前世でしてやられた自分が情けねーわ」


 心の底からそう思う。

フレイアもそう思ったらしく、やれやれな雰囲気を醸し出していた。


「ま、いいか。おーい、カイル王ー。」


 オレはカイル王を呼び出す。

呼び出されたカイル王は、手に持った剣や礼装にベッタリと返り血を付けていたが、表情は晴れやかである。


「お呼びですか? レオ殿」


「ああ、忙しい所悪いね。とりあえず、ほら折角だからコイツ等に挨拶でもと思ってな」


「ご配慮、痛み入ります」


 オレに対して慇懃に礼をとったあと、カイル王は冷たい目でクソ親子に目を向ける。


「お久しぶりですなあ、お二方。このような格好で失礼する」


 慇懃無礼にカス共に語り掛けるカイル王。


「我々はこの日を待ち望んでおりました。200年前、卑劣な手口で勇者を殺害し、教団の者達を迫害し、初代王に拭い難い屈辱と悲しみ背負わせた貴様達に復讐する、今日この日をッ!!」


 凄まじいまでの怒りと殺気を込めてカイル王はそう叫ぶ。

200年に渡って蓄積してきた怒り、恨み、憎しみ、殺意が溢れ出してるな。

血塗れのイケオジの憤怒の形相……クッソ格好良いな!


「直接アンタ等を踏みつけていたのは、ジュリアスの方だからな、思う存分本懐を遂げてくれや」


 そう言うオレに頷いたカイル王は部下達と一緒にジュリアスを囲い込む。

何やら悍ましい悲鳴が聞こえるが、楽しそうで何よりだ。


 ジュリアスはカイル王達に任せて、オレはジューダの前に立つ。


「よう、待たせたな。こっから復讐タイムが始まるんだが、その前にスペシャルゲストに来てもらった」


 最早口もきけない位憔悴しているジューダに、是非とも会わせたい人物がいるのでご紹介する。

そう、ドルマンのおっさんだ。

齢250を超える人類最年長のおっさんである。


「聖戦士ドルマンだ。テメェもあの当時、名前は聞いたことあるだろう?」


 ジューダの目が驚愕に開かれる。

まぁ、人間があれから200年経っても生きているなんて信じられんだろうな。

そして聖戦士ドルマンは当時において、『鬼謀のドルマン』として魔族共から警戒されていた人物だからな。

個人でも教団トップクラスの戦闘力を持ち、何よりその指揮能力と作戦能力が凄まじく、オレ達勇者チームに比肩する戦果を叩き出した英傑なんだぜ?

決戦時においては、戦う力をほぼ失っていたから、本部の守りに徹していたが、もしあの決戦で指揮を執っていたら、流れが変わったかもしれない位の猛者だ。


「ようやく会えたな、簒奪者ジューダよ。俺がドルマンだ」


 全盛期もかくやと言える、強烈な覇気でジューダの前に立つドルマン。

上位魔族とのガチの殺し合いを制してきた男だ。

所詮は中位魔族に過ぎないジューダとはハッキリ言って格が違う。


「あ……あ……」


 恐怖で真面に喋ることが出来ず、ブルブルと震えているだけのジューダ。


「んじゃ、おっさん。最初の一撃は任せるぜ!」


「応!」


 流石に全盛期よりは格段に落ちるが、並の魔族なら一撃で重傷を負うような強力なパンチをドルマンはジューダの顔面に打ち放った。


 拳はジューダの鼻っ柱を粉砕し、眼球が飛び出るほどの威力で捻じ込まれた。


「ガォベラッッ!!」


 グシャリと音を立て顔面を破壊されたジューダは、変な声を上げて吹き飛ぶ。

宙に舞った身体はそれを縛っている鎖のような法術によって空中に固定される。


「ア……ガがが」


 強烈な一撃に、意識が完全に飛んだジューダ。

フレイアがクイッと指を下げた時、ジューダを固定していた鎖がたわみ、そのまま自由落下で顔面から落ちた。


「ゲバアッッ!!」


 地に叩きつけられ、またも変な声を上げるジューダ。

そんなジューダの顔面にシューーーーッッッ!!!!


「ゴブァッッ!!」


 衝撃でゴロゴロ転がりながら吹っ飛ぶ。

本気で蹴ると脳漿ブチ撒いて死ぬからな、この微細なコントロールを見よ。 


「オがギ……アあ……」


 ピクピクと痙攣しているジューダを尻目に、周りの光景に目を向ける。

クソ共の粛清も終盤となったようだ。

ジュリアスもくたばっているようで、カイル王達もスッキリした感じになっている。

まだまだこれからが始まりではあるが、今がある意味で一番のクライマックスだからな。

身体をグッと伸ばして仕上げに入るか。


「オイ、起きろよクソ野郎」

 

 ジューダを蹴飛ばし、覚醒させる。

目を覚ましたジューダの眼前に地獄絵図が広がっているだろう。


「あ……ああ……」


 目の前に広がる夥しい死体の数々。

皆、コイツにとっては長い付き合いのあるクソ共だ。

息子の死体も転がっている。


「どーだい? 良い眺めだろう? コレがテメェの目指した理想の結末だ」


 そう語りかけたが、ジューダは茫然自失となってへたり込んでいる。

もう喚く気力も無いようだ。

人によっては哀れな姿に見えるだろうが、オレにとっては因果応報、自業自得だ。

憐みの感情など湧かない。

ただ、コイツには言ってやりたい事があるのでさっさと言っちまうか。


「どうしてこうなったンだろうな? 本来なら今日がテメェの人生の中での絶頂期になるハズだったのに……最低最悪のドン底になっちまったな?」

 

 オレの言う事に何の反応も無いが、構わず語る。


「オレ達を騙し、嘲笑った報いがコレだ」


 嘲りをタップリ含んで言ってやる。


「だが、やり方によってはテメェの理想の世界が出来たハズなンだぜ?」


 そして今度は憐憫を込めた声で語り掛ける。


「召喚当時のオレは確かにバカなガキだったが、人と魔族でも話し合えばお互いを理解して、共存の道があったと本気で思っていたンだぜ?」


 その言葉にハッっとしたようになるジューダ。


「最初から真実を話して、魔王打倒の為に真っ当な戦いをするよう心掛ければ、オレは人と魔族の為に喜んでヒーローになってたさ」


「弱小魔族も上位魔族共の被害者である事を伝えれば、教団だって頭から否定はしない。むしろ被害者同士で気が合ったかもしれねぇ。なぁ?」


 オレの問いかけにフレイアとドルマンが同意する。

尤も200年前ならともかく、今の2人はそんな事を微塵も思っていないが。

これは単に俺が同意するよう求めたからそうしたに過ぎない。

だが、ジューダには効果てきめんだったようだ。


「そ……そんナ……」


 ガックリと項垂れるジューダ。


「テメェ等の失敗は正にそこにあった」


「オレを上手く使い、教団とも連携を取って魔王を打倒するべきだった」


「その後は寿命的にまずオレ達は先にくたばってる。ドルマンのおっさんだって今はこンなだが、それだってテメェ等に復讐するために無理をした結果だ」


 ドルマンがゆっくりと頷いた。


「100年単位の時間を使って徐々に魔族を世界に浸透させていけば、テメェは人魔の王としてこの世界に君臨できたンだよ。」


「仮にオレとフェルトが転生した所で、その世界を普通に受け入れていたさ」


 フェルト……今はフレイアだが、彼女は否定も肯定もしない。


「本当にバカな事をしたなぁ? オイ」


 今の状況に対しての絶望と、そもそも200年前から過ちを犯していた事実に、ジューダは打ちひしがれた。

正にざまぁって感じだ。

とりあえずオレの気は済んだ。

他の2人にも目配せしたが、どうやらあちらもスッキリしたらしい。

今後の事を考えるとやる事は沢山あるし、ここらで締めるか。


「じゃーな。稀代の愚王サマ。オマエは此処で終わりだ」

ありがとうございました。

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また、感想や誤字脱字報告もして頂けると嬉しいです。

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