ネタバラシ
短い話です。
ジュドーの語る人魔戦争の結末に、会場にいた者達は言葉を失った。
200年前、人魔統一を果たし永遠の平和を実現した英雄達が、薄汚い簒奪者に過ぎなかったという話は衝撃的な事実である。
五大国の者達からすればこれまでの権勢を揺るがしかねない話である。
信じられない、信じたくない、そんな思いで彼等は一様にジューダに視線を向ける。
英雄からの否定の言葉を皆、待っていた。
だが、そのジューダは顔色を悪くし否定の言葉を発することなく蹲っている。
その姿に英雄と称された面影は無く、唯の矮小な老人にしか見えなかった。
「どーした? 顔色が悪いぜ、クソジジイ」
心底侮蔑したという感情を言葉に乗せるジュドー。
その姿は今までの第一王子のそれとはまったく違っていた。
「はっはっはっ、マジでウケるわ。過去を暴露されてどんな気持ちだ? んん?」
楽しそうに煽る、何処か小物臭いその姿は演技か素か、誰も分からない。
「……だ」
「あン?」
蚊の鳴くような声で呟くジューダに反応するジュドー。
「貴様は何故、あの時の事を知っている?! 貴様は一体何者だ!!」
ジュドーの煽りで怒りに火が付いたのか、ジューダは大声で問い詰める。
その言葉がジュドーの語った200年前の真実を裏付けている事に気が付かない。
「ああ、そりゃ当事者だからな」
あっけらかんとした口調でジュドーが答える。
200年前ではジュドーはまだ生まれてもいない。
会場中の人魔がこいつは何を言ってるんだと疑問に思う。
「あー、つまりだな、オレは生まれ変わりって奴なンだよ」
とんでもない事をサラッと伝えるジュドー。
「そう、俺は200年前、この世界に召喚された勇者レオの生まれ変わりなンだよ!!」
勇者レオ、異世界より突如現れ、魔王と共に世界を混乱の渦に巻き込んだとされる悪の元凶。
勇者と魔王の残虐で凄惨な争いが、『人魔戦争』を起こしてとされていた。
だが、その真実の姿は当時の人の王達とジューダによって強制的にこの世界に呼び出され、魔王との戦いの果てにこの世界に住む者達の身勝手な考えによって犠牲になった哀れな存在。
よりのよってその生まれ変わりが、この国の第一王子だったのだ。
その事実に会場は騒然となる。
「まったくよぉ、オレの元いた世界じゃあ、異世界召喚と異世界転生なンてのは、物語では最もポピュラーな題材だったがよぉ、まさか両方体験するなンてなぁ? 前世はそんな徳を積ンだ人生じゃあ無かったンだがなぁ……」
嘆息しながらそう語るジュドー、もとい勇者レオの生まれ変わり。
「まッ、ネタバラしはこれくらいで……、オイ、クソ野郎」
真っ直ぐジューダを睨み付けるレオ。
「今日、この日にオレがこンな事をした理由……オマエの腐った頭でも理解は出来ただろう?」
嗜虐に満ちた凶悪な笑顔でジュドー王子こと、レオは語る。
「あの時の復讐だ。タップリと味わえよ?」
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