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勇者レオの冒険

2話目です。

よろしくお願いします。

おっす、オレの名前は佐藤礼央(サトウレオ)

県立の高校に通う極普通の一般人だ。

そんなオレだが、ある日異世界に勇者として召喚された。

いや、何を言ってるんだ? とか言われそうだが、マジの話だ。

召喚されたオレが一番驚いている。

まさか漫画やアニメみたいな事が現実に起きるなんて夢にも思わなかった。

学校から帰る時に、なんか変な光が足元から出て来て、気が付いたらなんか神殿みたいな所にいるんだから。

周りには豪華な服を着た偉そうなおっさんやら爺さんがいるんだぜ? ビックリだわ。

そしてそいつらに俺はこの世界を救う勇者として召喚されたという事を聞いた。


 一通り話を聞いた俺は有頂天になった。

俺は結構こういう話が好きで、漫画やアニメを見ては異世界転生や勇者召喚に憧れたものだ。

その憧れのシチュエーションが現実になったんだ、そりゃいい気になるってもんだよ。

お約束のチートもあり、3日も修行すればこの国一番の剣士や魔法使いともやり合えるようになった。

チートで最強無双の勇者とか最高だろ?

俺は意気揚々と、この世界の敵である魔族を退治するべく旅立った。

ちなみに一人旅だった。


 美少女の剣士や魔法使い、神官といった仲間が何故いないのか?

ハーレムパーティーを期待していた俺はそのことにガッカリしたが、単純に俺の足を引っ張るような未熟者は付けられないとの事だった。

まぁ、冷静に考えれば美少女かつ最強クラスの実力者なんている訳がないな。

実力者の剣士や魔法使いはおっさんばかりだし、国の防衛からは外せない。

その結果ソロプレイになる事になった。

ファンタジーのクセに妙に現実的だ。

仕方がないから旅の中での出会いに期待する事にした。


 この時の俺は気付いていなかった。

この異世界は剣と魔法が存在する『現実』であるという事に。


 一人旅をする事になった俺は道中で魔物を適当に狩りつつ先に進んでいった。

チート勇者として自信からか、魔物を殺すことに何の抵抗も無かった。

ホームシックに掛かることもなく、快適に旅を続ける俺。

ちなみに魔物は、人類の敵対種族である魔族とはまた別系統の敵対種族らしい。


 村や町を襲う魔物を俺Tueeee!!! で蹂躙し、人々にチヤホヤされて悦に浸る俺。

順調に旅を続けて遂に、魔族と人類が争う境界の地へとやって来た。

魔族は魔物と違い、人類に似た姿であり、会話による意思疎通も可能だが全くと言って良い程話が通じないんだとか。

だが、頭勇者な俺は物語によくある様に、魔族側の美少女を惚れ込ませてハレームを作り、人類と魔族を結ぶ懸け橋になるだとか、実に自分に都合の良い妄想を抱いていた。


 結論から言うと、そんな妄想は粉々に砕かれた。

魔族はクソだ。


 彼奴等は人類を徹底的に見下し、まさに下等生物、塵芥としか見ていないクソ共だ。

最初に出会った時、博愛主義者宜しく、和平と平和の道を説いたオレを魔族は鼻で嗤った。

それはまだ良い、いきなり仲良くしようなんて言われても、「はい、そうですね」なんて返すバカはまぁ、いない。

結局戦闘になったが、普通に圧倒した。

魔族達は「馬鹿な……人間如きクズに我々が……」とか宣っていたが、勝敗も決したしオレは仏の如き心の広さで争いを辞め、手を取り合おうと提言した。

そんなオレへの返答は反吐と罵詈雑言だった。

流石にムカついたので、止めを刺した。

最後まで奴等が吐いていたのは、オレへの憎悪と人類への侮蔑だった。

この辺で頭が勇者なオレも、魔族との和平はムリゲーな気がしてきた。


 そんな中である村へと辿り着いた俺は、そこを徘徊する魔物を倒したことで、村中の人から英雄としてチヤホヤされていた。

元の世界での俺はぶっちゃけ普通で特に何かに秀でていなかった。

そんな俺が異世界では最強勇者で周りから尊敬の眼で見られる、これだけでも異世界に来た甲斐があったてもんだ。

村の子供達は、俺をキラキラとした目で見る。

その目がこそばゆくて、誇らしい気持ちを持たせてくれた。


 村に滞在して数日後、魔物を狩り子供達から尊敬の眼差しを受けて良い気分だった俺に、村長から話があった。

どうも村の近くの山に、魔族の部隊が駐留しているらしいとの事だ。

奴等は残虐非道で、既にいくつかの村が襲われ壊滅しているらしい。

その話を聞いた俺は、極悪非道な魔族は許すまじと、早速その魔族の部隊が駐留する場所へと向かった。

世を乱す悪の魔族達を倒して、世界に平和をもたらす最強の勇者として戦いを挑んだ俺は、負けた。


 魔族の戦士達は強かった。

ちょっと前に俺が倒した魔族などとは比べ物にならない。

しかし個々の力だけなら確実に俺の方が上だった。

だが、オレ1人に対して奴らは複数。

数の暴力の前にオレは敗れた。


「そんなバカな……」


 戦いに敗れ地に伏したオレを魔族達は嘲笑う。

ゲームや漫画では敵が何人いた所で無双出来るものだが、オレは数に押し切られて負けた。

恥辱と恐怖の中でオレはようやく悟った。

この世界はオレが思っていたような、チート勇者がゴリ押しで物事全てを解決出来るような甘い世界ではない事に。

半死半生の傷を負わされ、死の恐怖にこれ以上ない程取り乱し、泣き喚くオレは最早かつて自分が思い描いていた様な勇者では無くなっていた。

そんなオレをゴミを見るような目で蔑み、見下す魔族達。

絶望的な状況で終わりを待つだけとなったオレだったが、これは地獄の始まりに過ぎなかった。


 俺は生かされた。

尤も、手足は砕かれ顔も身体もボコボコにされた酷い状態でだが。

そして頑丈な檻に入れられたオレは、ある見世物を拝まされる。

オレが世話になってる村人の虐殺ショーだ。


 女子供、老人を分け隔てなく殺していくクソ共。

目を輝かせてオレを見上げていた少年を、ちょっと目を合わせただけで頬を真っ赤に染めたあの娘を、気風の良いおばさんを、好々爺な爺さんを。

皆、オレの目の前で残虐な方法で殺された。

助けを呼ぶ声にオレは何も出来ず、芋虫の様に這い蹲っていた。

全ての村人を殺し尽くしたクソ共は、最後の締めとしてオレに止めを刺そうとする。

その時のオレの心は死の恐怖でも何も出来なかった絶望感でもなく、クソ共に対する憎しみで満たされていた。

絶対にコイツ等を殺す、根絶やしにしてやると叫ぶ。

クソ共はそんなオレを嗤っていた。


 クソ共がオレを殺すその瞬間、全力で喉笛を嚙み千切ってやると最後の力を振り絞ろうとしていたその時、奇跡が起こった。

クソ共の動きが止まった。

そしてその瞬間に、突風が吹き荒れる。

気付いた時はクソ共はバラバラになっていた。

その光景に困惑するオレに、誰かが声を掛けた。


「大丈夫ですか? 今治療いたしますね」


 それが後に魔王を討伐する勇者とその仲間達の最初の出会いだった。

ありがとうございました。

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